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〔介護を学ぶ6〕汚れたものを洗ってくださる親の恩

◆お母さんは、初めてじゃないんだ

介護になった父の糞便を、いとわず始末する母。
その姿を見て惣子さんは、あることに気づきました。
母は、これが初めてでないことに。

 そうか お母さんは これが初めてじゃないんだ
 31年前 母は 私の糞尿の始末をしてくれていた
 27年前 母は 妹のおむつを洗っていたんだ

当時は今と違って、紙おむつはなく、布おむつの時代です。
何枚もの汚れたおむつを、桶に入れて川まで運び、
ゴシゴシと洗っていました。

凍てつく冬も、ゴム手袋はありません。
手にいっぱいヒビ切れを作りながら、
来る日も来る日も洗濯してくれていたのです。

◆古典に学ぶ介護 『仏説父母恩重経』

お釈迦さまの説かれた『父母恩重経』には、「親の大恩十種」といい、
親から受ける十種のご恩が教えられています。
その6番目が洗潅不浄せんかんふじょうの恩」です。

「洗潅」とは、洗うこと。
「不浄」とは、汚いもののことです。
子供の汚れ物を労苦いとわず洗濯し、
清潔な衣類を着せてくださるご恩です。

「母の愛情なくしては、養われなかった。
 この母でなければ、私は育たなかった」
ということです。

「子が乳母車を離れるまでは、便を触った手を、しっかり洗う余裕かない。
 そのために、爪の間に入った便を一緒に食べることにもなる」
ということです。

「子どもの大小便で、手や服が汚れても、平気で洗い流し、
 ニオイや汚れを嫌と思わない」
とのことです。

独身の時は、「汚いものを見るのもイヤ、まして触れるなんて・・・」と言っていた女性も、母親になると、なりふりかまわず子供を世話をします。

子どもの便といえど、汚くないはずがありません。
臭くないはずがありません。

「オムツが汚れていたら、この子がかわいそう」
「私がやらねば誰がするの」

この思い一つで、世話をしてくださったに違いありません。

◆私が恩返しする番

親から、海よりも深いご恩を受けてきたと、教えられています。
惣子さんは、母の姿を通し、受けし恩を感じたことでしょう。

その母も、歳を取り、いつしか身の回りのことができなくなるでしょう。

「その時は、今度は私の番だ。私が恩返しをしなければ」

惣子さんは、深く誓ったに違いありません。

参考文献
1)上田惣子:『マンガでわかる介護入門』,大和書房,2021

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