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過敏症マーチ:シックハウス症候群 → 化学物質過敏症 → 電磁波過敏症

◆「シックハウス症候群」から「化学物質過敏症」へ

新築住宅の建材から発する、ホルムアルデヒドを始めとする化学物質による健康被害は、「シックハウス症候群」と呼ばれています。

その後、同様の被害が学校やオフィスでも生じたため、
「シックスクール症候群」「シックビル症候群」と命名されました。

1980年代から増加したシックハウス症候群も、
建築基準法の規制により、2007年以降は減ってきました。

代わりに現れたのが、洗剤、柔軟剤、香料、農薬、防虫剤、インク、排気ガス、食品添加物などによる「化学物質過敏症」です。

「シックハウス症候群」と「化学物質過敏症」は、
独立した別の病気でしょうか。
シックハウス症候群の約7割が化学物質過敏症に移行していることより、
一連の病気と考えるのが妥当でしょう。

◆「化学物質過敏症」から「電磁波過敏症」へ

2011年ごろより、次なる過敏症、「電磁波過敏症」が登場しました。
「電磁波過敏症」とは、安全基準よりはるかに低い電磁波により、
化学物質過敏症に似た症状が出る健康障害のこと
です。

電磁波過敏症患者の調査によると、2人に1人が、
化学物質過敏症を経て電磁波過敏症を発症しています。
また、8割が化学物質過敏症と電磁波過敏症の両方を併せ持っています。

「シックハウス症候群」「化学物質過敏症」「電磁波過敏症」の3つを含めて「環境過敏症」と言われます。
これらは一連の疾患と考えられるのではないでしょうか。

環境過敏症の3大症状が次です。

①自律神経・体内時計・ホルモンの乱れ
②感情や認知の乱れ
③感覚の過敏、アレルギー症状

◆視床下部症候群

化学物質過敏症を「視床下部症候群」の1つとする考えがあります。
脳に視床下部という部分があり、免疫や内分泌(ホルモン)、自律神経の調節を行っています。

視床下部の障害により、免疫や内分泌、自律神経の異常を起こす病気を「視床下部症候群」と言います。
上記の環境過敏症の3大症状は、視床下部症候群のそれと一致します。

「慢性疲労症候群」「線維筋痛症」も、視床下部症候群の1つと言われており、化学物質過敏症患者で慢性疲労症候群や線維筋痛症を合併する人が、それぞれ1割ずつあります

◆過敏症マーチ

「アレルギーマーチ」という言葉があります。
アトピー体質の人に、アレルギーの病気が次から次へと発症することをアレレギーマーチ(アレルギーの行進)と言います。

食物アレルギー → アトピー性皮膚炎 → 気管支喘息 → アレルギー性鼻炎

この考えからすると、過敏症体質の人に、シックハウス症候群 → 化学物質過敏症 → 電磁波過敏症が次々と発症することは、「過敏症マーチ」と言えるのではないでしょうか。
慢性疲労症候群や線維筋痛症との合併も注意しなければなりません。

ことの発端である化学物質(合板、集成材、タバコの煙、化粧品、食品添加物、農薬、除草剤、防虫剤、殺虫剤、柔軟剤、芳香剤、有機溶剤、灯油など)は、できる限り避けましょう。

1)小倉秀郎:「化学物質過敏症を見落とさないために─各診療科へのお願い」,月刊保団連 1366:18-25, 2022
2)鈴木珠水, 馬醫世志子:「環境過敏症を知り, 新しい選択をしていくために」,難病と在宅ケア 26(12): 59-64, 2021.
3)黒岩義之ら:「環境過敏症 : 視床下部症候群 (環境ストレス過敏症 / 不耐症)としてとらえる」,自律神経 (suppl): 53-54, 2020.
4)渡井健太郎:その「重症」薬剤アレルギー・「重症」喘息・「重症」食物アレルギーは, 多種化学物質過敏症 (特発性環境不耐症) ではありませんか,難病と在宅ケア 26(10): 43-45, 2021.

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