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猫おばさん

私の勤めるスーパーによくいらっしゃったその方は、たぶん80代くらい、小柄で茶髪。ややぽっちゃり。

スーパーの上の階のマンションに住んでいらっしゃいました。頭にいつも素敵なスカーフを巻いています。お化粧もきちんとされていて、少女のような可愛らしさのある方です。

よく買われるのは、ご自分の食料品と、たぶん旦那さんの御仏壇にお供えする仏花。そして、大量の猫のエサです。でも、猫を飼われているわけではありません。

スーパーのすぐ近くに緑道があるのですが、そこで、猫ちゃん2匹にエサをあげているのです。
我が家にも猫がいますが、うちの猫よりも緑道の猫ちゃん達は、はるかに良いごはんをたっぷりたべていました。そのせいか、2匹ともぽっちゃりとしています。

その方がお買い上げ頂いたものは、いつも配達にまわすため、私は、商品の梱包をさせてもらいます。ですから、どんなものを買っているのかがよくわかるのです。
猫ちゃん2匹とはいえ、どう考えても多いキャットフード。
お金に余裕があるのか、お友達とお買い物に来ては、何かしら買ってあげていました。

猫ちゃん達には名前もちゃんとついています。
マンションから緑道へ向かう道で、その方の後ろを猫ちゃんたちが嬉しそうについて歩く姿を見かけたこともあります。
スカーフを頭に巻いたおばあさんの後に2匹の猫がついて行く様は、童話の世界でした。

そんな猫おばさんですが、高齢のためか足が痛いと言って、お買い物中何度も、サービスカウンターの椅子でお休みされるようになりました。

ある日、猫おばさんから、「私、娘の所に引っ越すことにしたのよ。」と。伺うと、引っ越す場所は、随分と遠く、猫ちゃん達のご飯だけが気がかりだと言っていました。知り合いの方に、猫ちゃんのエサ代を渡して、面倒を見てくれるように頼んだそうです。 

猫おばさんが、居なくなって、私は、通勤途中にある緑道の猫ちゃんのエサ場をよくのぞくようになりました。しばらくは、エサがおいてありましたが、数ヶ月もすると、猫達もエサも見かけなくなりました。

どこか別にエサのもらえる場所を見つけたのだろうか。
今も、仲良く2匹でいるのだろうか。
猫おばさん、お元気かな。

緑道を通ると、猫おばさんと猫ちゃん達のことが頭に浮かびます。





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