ミケの炬燵戦争
これは私が2年生の頃、学科の講義で書いた練習作品です。割とよくできていて可愛いものを見つけたので公開します。
吾輩は猫である。名前はまだ無いが、まあ当然、とてもかわいい。寒い冬に歩いていたら、この家のドアが開いていて、中から暖気が漏れていたので入らせてもらった。そんなわけでここの家主との付き合いはもう4年になる。
さて、吾輩はときどき考える。家主はアイスが好きすぎやしないか。家主は毎日アイスを買ってくる。丸いの、三角の、白いの、青いの、何か一本買ってきて、冷凍庫に入れる。そして風呂上りに炬燵に入ってアイスを食べている。吾輩には人間は何がしたいのか全く分からぬ。
吾輩、寒いのは大の苦手である。寒いところの住人とは相容れぬ。冷凍庫の住人・アイスと炬燵の住人・猫、いざ尋常に勝負してみよう。炬燵の中で決心した。
家主が買ってきたのは赤いパッケージのアイスだった。いつも通り風呂から上がるとアイスを取り出し、炬燵机の上に置く。いつもはすぐにアイスの袋を開けるのに、今日はさすがに寒いのかお茶を取りに行った。やはり人間は温かいと冷たいを交互にやるのが好きらしい。吾輩はのそのそと炬燵布団から出て、アイスに対峙した。
決闘のゴングが鳴った。まずは袋をつついてみる。手ごたえがない。アイスの腹の部分を猫パンチ!お、なかなかいい手ごたえ。アイスはただ寝転んでいる。この勝負、もらった。ちょっと手が冷たいので、あんまり冷たくない部分を掴んで炬燵机から引きずり落とす。ぽとり。どうだ、温かいところでは生きていけなかろう。アイスの袋は最初より少し歪んでいた。
ここで家主が帰ってきた。「あれ?アイスは?ミケ、アイスどこにやったんだ」。家主は炬燵布団からアイスを拾い上げ、指で少しつまむと「こりゃだめだなあ」と言い、冷凍庫にアイスを入れた。
「ミケ、いくら炬燵が好きでも食べ物を炬燵に入れちゃだめだ。汚れるし、アイスなら溶けちゃうだろ」家主は吾輩を抱き上げながらそう言った。吾輩はアイスともう少し話がしたかったと思いながら、家主とともに温かい炬燵で眠った。
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