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介護施設で働く理由。

私の仕事は看護師。

健康チェックと

介護予防訓練士として口腔体操と運動の補助を担当している。

インストラクターと表現活動の資金調達のために片手間で始めたこの仕事が

多動の私にはよく合っているようで数カ月前に正社員にしてもらった。

最近、よく幸せな夢を見る。

みんなが笑っているような。

きれいごとではなくマジな話、私は

みんなの笑顔がすき。

笑わせるのがすき。

人が楽しんでいるのを見ているのが好き。

どんどん輝いていくのも好き。

だから

人に教える仕事が好きなんだと思う。

その人に

光を

あてたとき

輝き出すその瞬間は見逃したくない。と思って仕事している。

その人が背負ってきた歴史に目を向けると

輝き出す。

一定の距離を置いていたその人が心を開いてくれる瞬間はたまらない。

赤い靴履いてたおばあさん

前にOさんは私にいじわるをした。

虫の居所が悪かったのか

椅子の位置が悪いと

金切声で怒った。

いろいろ嫌味を言われたこともあるし

男性スタッフのほうが好きなようで

話していてもほとんど話が弾まなかった。

でも

この日初めて

私に心を開いてくれた。

個別の口腔体操をしているとき

Oさんは「家で『のろい、遅い。』と言われる。誰も自分の辛さを分かってくれなくて辛い。」と。

ひとしきり話をきいたあと

一言伝えた。

できないことが増えたとしても、Oさんご自身の素晴らしい本質は何も変わらない。

だから何も心配しないで、ここに来てください。と話すと

涙を流していた。

そのあと

ご自身が好きな詩を教えてくれた。

高村光太郎さんの智恵子抄、だという。

「智恵子は東京に空がないといふ」

の声がシンクロして

目が合って

大笑いした。

口腔体操で詩を読んでいただくのは

発語練習だけではなく

呼吸法や表情筋のトレーニングも一緒にできるから

私が独自に編み出した方法だ。

その人らしい口腔体操のやり方がある。

好きなことをやってもらうのが一番楽しいと思うし

大笑いしてもらうのが一番の目的と思っている。

10分でどれだけ価値を感じてもらえるかはこれにかかっているんだ。


次回の口腔体操はそれをやろうと盛り上がり

Oさんの涙は消え、笑顔で帰っていった。

予定していた口腔体操自体は今日はできなかったが

それでよかったと思う。

自分の気持ちを吐き出して、表現することが

一番の口腔体操、なのだから。

介護の世界は

セクハラとか

急に怒りだす人とかいて

怖いし

きもいし

いびり系のおばあさんにごみを渡されたり

嫌なこともあるけれど

こういう心の交流があるから

やめられない。

気に入っていただけたら、サポートしてくださいませ。創作活動の費用に充てさせていただきます。