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hanaike Books #番外編 渡来徹『ととのえる「いけばな」』

リレー形式で、おすすめの書籍を紹介いただく企画、hanaike Books。
今回は番外編ということで、hanaikeクリエイターとしてもお仕事をご一緒させていただいた、花道家渡来徹さんの著書について、私、太田が紹介いたします。

奇しくも、渡来さんと私が所属しているのは「いけばな小原流」。
同じ流派という一方的な親近感を覚えつつ、日ごろSNS上にアップされる流木、野菜など多様な素材を取り入れた作品に強い関心を惹かれ、ご活動を陰ながら拝見する日々。
今回の出版のお話も、刊行を心待ちにしていました。

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さて、花道家の渡来徹さんが、自身の半生といけばなとの関わりを綴った本書。
どんな人におすすめしたいか、ということを考えてみました。

誰に向けた発信なのか?

なぜ先生はそのように手直しするのか?
なぜ型というものがあるのか?
流派のいけばなと、そうでないものは共存できるのか?

いけばなを習ったことがある人、現在も習っている人で、いけばなを自分の中にしっかりと取り込みたいという意欲のある方は、きっと気づきがあるのではないかと思います。

逆に、そのような人はいないのかもしれませんが、いけばなに触れてみて、特に疑問を持たず受け入れられるような人は、少し混乱されるかもしれません。

伝統文化に関心がある人は、実際に習い事としているのであればなおさら、そうでなくとも共感できるトピックスに出会えるはず。

何かを教える立場にある人。
かつての、先生やお師匠さまの言うことは絶対、という不文律は廃れつつあります。
特に習い事となれば、生徒さんのニーズも多様化しており、今日はこのカリキュラムをおさえたからオーケー、ということにはなりません。
このような時世に教室を営む渡来さんの、実際の生徒さんとの対話やエピソードは、心に響くものがあります。

推進力を生む、ということ。

単に言い回しの妙だけでなく、印象に残っているのがこちらの言葉。

感覚も技術も蓄積、更新し続けなければならないんだ、と日頃褒めてくださる先生にサラリと言われたことで痛感しまして。

ここで使われているのが「いけばな貯金」という表現です。
私自身、先生から とにかく花に触れる回数、お稽古の回数がものを言うのだということを教わっていることもあり、なるほど、これは共通の感覚なのだと実感しました。

続けることで生み出される価値は、日々の営みの支えとなり、力を発揮してくれるものということが確信に。

物書きを生業とされていた渡来さんだけあって、本書ではいくつものユニークなフレーズに出会うことができます。

一日一章ずつで、約1週間。
もちろん一気に読み終えることも苦しくない分量でした。
書店で見かけられたら、ぜひお手にとってみてください。

writer
太田成沙
hanaike director
いけばな小原流 家元教授

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いけばなでの体験をもとに、花の魅力を発信するプロジェクト「hanaike」を構想。家にいながら、四季を感じ「花のある暮らし」を楽しめるコンテンツや商品を提案するWEBサービスを立ち上げる。第一線で活躍するフラワーアーティストや華道家をクリエイターとして集め、オンラインだけでなくリアルな場でのワークショップや物販イベントなどを企画・運営している。


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