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面白タイプのルビーです。

1.スタールビー

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インド産、Tucson Gem Fairで購入しましたが、このレベルなら日本でも入手可能です。六角形の成長痕が肉眼でも見えて、年輪みたいです。

鑑別でルビーと出た場合、天然/合成の判別が大事だと普通のルビー編で書きましたが、もう一つ、石がカボション(ドーム型)だった場合はどこかに特殊効果──スターかキャッツアイ──が出るのではないかと疑って、あらゆる角度からペンライトを当ててみます。中心がずれていることがあります。

なぜスターになるかというと、石の中に細~い針状のルチルが入っていて、それが60度の角度で交差しているからです。
キャッツアイの原理と同じで、下の図の横線に対して垂直方向に目が出ます。スターの場合、この横線自体が60℃の角度で交わっているため目が3方向に見えて、それぞれが中心で交わるので6条のスターになる、ということです。面白いですね。

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この図を2つコピーして60度ずつ回して重ねるとそうなるはず

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台湾で買った合成スタールビー。天然(左)と比べると、こんなに薄っぺらいのに、シャープなスターがピシッと出ます。
素人時代の買物でしたが、合成とはわかったので値切りまくって、比較のためのコレクションにしました。

ルビーはコランダムのうち赤い色のものを言いますが、スタールビーになると少し色範囲が広くなります。
友人がスリランカで買った紫色のスターサファイアをリングにした後で鑑別に出したら『スタールビー』で出てきました。スタールビーの方が(名前的に)高く売れるでしょうから、売る人には良いかもしれませんが、かなり青寄りの紫色でないと『パープルスターサファイア』は出ないということですか。でも、青寄りの紫だとバイオレットですね……。

60度で交わったルチルのインクルージョンをシルクと呼びます。顕微鏡を暗視野にして覗くと、とても美しいです。

ルビーは加熱して色を良くするのが普通ですが(詐欺ではなく、人間で言うと化粧ぐらいです)加熱するとシルクがなくなるため、本来スターが生じるはずのルビーが普通のルビーになってしまっているかもしれません。

加熱して途切れたシルクインクルージョンは、非加熱の鑑別の時の手掛かりになります。シルクがブツブツ切れていると加熱を疑いますからね。

2.トラピッチェ

トラピッチェといえばエメラルドですが、
「ルビーにもあるらしい。六方晶系だから?」
という噂を聞いて、鉱物展で見つけました。宝石品質のカボションカットのものは少ない(高い!)ので、スライスしたものをよく見かけます。

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これは日本の鉱物展で

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これは翌年のTucsonで。小さいけどカボション

このように、地の色やアームの色が違って、どれだけのバリエーションがあるのかよくわかりません。

できる過程もまだわかっていませんが、↓ のトルマリンのトラピッチェを売っていたフランス人によると、これが成長過程なのではないか、とのことです(左から右に向かって成長)。

最初は3本のアームで、外から枠ができて中央に向かってきて、アームが6本になるのだと言っていました。私のヒアリング(英語)が正しければ……。

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