花と生きる
華枝という名前は本名で、母がつけてくれた。
その場にいるだけでぱっと場が華やかになるような人に、そして枝のようにしなやかに生きてほしい
という願いが込められているそうだ。
この名前をとても気に入っている。
みんなには、はなえ、はな、はなちゃん なんて呼ばれている。
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高校生の時、何か部活に入ろうと思った。
中学生時代は吹奏楽部に入っていたから、それを引き続きやろうとも思ったが、
なんとなく別のこともやってみたくて決めかねていた。
そうすると、同じ中学の可愛くて大好きだった2学年上の女の先輩から、
華ちゃん、華道部にはいろーよ。楽だよ。と誘われた。
当時から可愛い人にめっぽう弱かったので、入部届を出した。即決だった。
ちなみに、1年生で華道部に入ったのは私だけだった。
華道部は2年生がおらず、
そもそも、部活は2週間に一回、外部から先生が来て1時間教えてくれるという、なんともゆるいものだった。
正直、わたしは3年生の可愛い先輩と楽しく話せるという邪な入部動機だったため、花がどうこう、ということにはあまり興味がなかった。
部室なんていうものも当然なく、
部活は放課後の家庭科室で行われた。
外部から教えにきてくれる先生がやってきて、
あまりの派手さに高校生ながらに驚いた。
青みピンクのリップに、薔薇柄のシャツ、そして、キツいくらいの薔薇の香りの香水を纏った60代くらいのマダム。
マダムは、見繕った花をいくつか机の上に広げ、
徐に剣山を出し、
「このなかから好きなものを好きなように生けてね」
と言った。
一応基本的な生けかたは教えてくれたけど、
ほとんどはフリースタイル。
先輩とお喋りしながら、思い思いに花を切ったり刺したりして、よくわからないけどいけた。
できましたぁと見せると、
マダムは「あらぁーこれはここをこうしたほうがいいわね」
と私達が生けたものを全部抜いて、ぜんぶマダムの思うように生けなおした。
思わず笑ってしまったけど、
それから奇妙な部活は続いた。
花を生ける、マダムに全部抜かれ生けなおされる、そして笑って花を家に持って帰って花瓶につっこむ、先生は言葉では説明しないタイプだった。
今思うとなにがどうしたらよかったのか、ちゃんと聞いていればよかったのだけど、
その頃はお喋りに夢中で流していた。
そうこうしていると、誘ってくれた3年生の先輩が卒業してしまった。
ある日、顧問の先生(一応いた)に呼び出され、
「いま華道部は2年生がいないから、1年生のあなた1人なんだけど、来年新入生が入らないと廃部になるの。どうする?」
と言われた。
どうするって言われても……
そうなっちゃったら仕方ないんじゃないんすかぁー
とその時はヘラヘラ笑って職員室を出た。
ちょうど生徒会にも入ろうとしてたし、夏にはチアガールもやっていたし、
私にとって部活はただの先輩とのお喋りの場だったし、別にあってもなくてもいいや、そう思っていた。
ふと、マダムの顔がよぎった。
廃部になったらマダムは来なくなるのか…
別にそんなに関わることもなかったし、部活に思い入れなんかないと思うけど…
もしかしたら、さみしくなったり、するのかな?
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春休みがあけて、2年生になり、新入生に向けて部活紹介があった。
部活紹介とは、体育館に新入生が全員集まり、各々の部活の部長がいかに自分の部が素晴らしいか、ユニフォームなどをきたり、実技をしたりしてアピールし勧誘する、あれである。
当然3年生ばかりの部活紹介に、1人だけ2年生の私が部長として呼ばれていた。(部長もなにも、部員ひとりなんだけど)
何を言うかも全く考えておらず、
突然1年生の前に放り出された私は、
「えー、っと、華道部です。
2週間に一回だけしか部活がなくて、楽だし、花生けるのは、結構楽しいです!あ、花は持って帰ることができます…
ちなみに3年生はいなくて、部員は2年生の私だけしかいないんで、だれか入ってくれないと廃部になっちゃうので、入ってくれたら嬉しいです。優しくしまーす♡」
と、なんともヘラヘラふざけた部活紹介をした。
こんなんでだれが入るんだ。マダム、さようなら、と思っていたら、
6人くらい入部希望者がいてビックリした。
そうして、華道部は存続できることになった。
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後輩達は可愛くて、たくさん話をした。
しかし、生徒会やチアやバイトが忙しくなった私は、
2週間に一回しかない部活さえも、欠席してしまうようになっていた。
先輩部活きてください!と渡り廊下で会うたびに言われ、バツが悪くなっていたのをいまでも覚えている。
ある日、久々に部活に行くと、マダムが先に来ていた。
またいつもの通り適当に花を生けていると、
マダムが
華枝、って名前はいい名前ね。
と言った。
名前覚えてたんだ、って言う衝撃と、強い薔薇の匂い。
なんとなく、この場を残せて、良かったと思った。
それから3年生になりあっけなく部活を引退したのだけど、
最後まで、華道とはなにかわからなかった。
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東京にきて、花を生けるようになった。
あれから10年以上経っているが、
何も本を見なくても花を選べたし、高さをだしたり切ったり曲げたりすることができた。
花を見ていると、元気がもらえる気がした。
サロンにも沢山花瓶を置いて、花を飾った。
生花は手がかかる。
毎日水を換えないといけないし、
茎を切ったり、葉をとったり。
花は生きている、
ちゃんと咲く、
そして枯れる。
なぜか手入れの方法も知っていた。
無駄なことは何もないんだな、と思えた。
コロナの影響で、花屋さんがピンチだときいた。
こちらのnote、とても分かりやすく参考になるのでぜひ参考にしてほしい。
定期便サービスや配送を行っている店舗もあると思う。
こんなときだからこそ、
私は花をいけて、無駄なことなんかないとまた思える日を待っている。
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PersonalBeauty andy 華枝
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