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文化庁の「国語に関する世論調査」を見てみた。「涼しい顔」はどんな顔?

文化庁が出している「国語に関する世論調査」を毎年見ています。
言葉の使い方に対する意識、ローマ字表記に関する意識、慣用句等の理解などに関する調査です。
あやふやに使っていた、間違って使っていた言葉に気付く良い機会で、勉強になります。
調査目的は次のように書かれています。

現在の社会状況の変化に伴う日本人の国語に関する意識や 理解の現状について調査し、国語施策の立案に資するとと もに、国民の国語に関する興味・関心を喚起する。

文化庁HP統計調査研究等→国語に関する世論調査

直近令和4年度の調査対象
16歳以上の個人6,000人、有効回答数 3,579(郵送による回答)
質問数は21 


本来の意味と違う意味に使われることが多い言葉

個人的に毎回注目しているのが、本来の意味と違う意味に使われることが多い言葉を取り上げる、「どちらの意味だと思うか」の質問。直近令和4年度の質問は下記の5つ。回答の選択肢はア、イ、その両方の意味、全く別の意味の四択です。

① 涼しい顔をする
② 忸怩たる思い
③ 情けは人のためならず
④ 雨模様
⑤ 号泣する

▼③以外は、本来の意味とされてきたものとは異なる方が多く選択されていました。
わたしの回答:①②③はかつて間違って覚えていて、何度も調べた経験があり、わかったのですが、④⑤は悩みました。

① 涼しい顔をする

ア)大変な状況でも平気そうにする  イ)関係があるのに知らんぷりする
※本来の意味は、イ)

回答:ア)61% イ)正解 22.9% と今回の質問の中で、最も本来の意味でないほうの回答をした人が多い言葉だった。

▼このような場合「61%も間違っていた!」「あなたは大丈夫?」的な記事をよく目にする。「知っていますか?、読めますか?、書けますか?」なども同じで、自虐的日本人には刺さるのかもしれないが、わたしはちょっと嫌な書き方だと感じる。
誰でも、知るまでは知らなかったのであり、知らなかったから恥ずかしい、常識がないかのような書き方はいかがなものかと思う。

「自分には関係ないと知らんぷり」という、辞書にある意味を知っても「涼しい顔」てどんな顔?と思う。類語の「素知らぬ顔」「何食わぬ顔」の方がイメージし易い。

※適当な画像がなかったので「涼しい顔」で検索したら、なぜか泳いでいる柴犬のフリー画像が出てきました。たしかに”涼しそうな顔”に見えます。
かわいいので使わせていただきました。とくに意味はありません。

忸怩じくじたる思い

ア)残念で、もどかしい思い  イ)恥じ入るような思い
※本来の意味は、イ)
回答 ア)52.6% イ)33.5%

▼「忸」も「怩」も、自分の言動を恥じる意味で、曖昧さはなし。どちらも「じる」の訓がついている。初めて見たら意味どころか読めない。
「忸怩たる思い」という表現が多い。ほかに「忸怩たる」「忸怩たるもの」、四字熟語「顔厚忸怩がんこうじくじ

③ 情けは人のためならず

ア)人に情けをかけると巡り巡って結局は自分のためになる 
イ)人に情けをかけて助けることは、結局はその人のためにならない 
※本来の意味は ア)

▼誤用問題でよく出る。「情けは人のためにならない」ではなく、「人のためではない」の意味。回答は半々。
わたしは「情けは人のためならず、まわりまわって自分のため」と覚えた。出典は『曾我物語』巻第四「虎を具して、曽我へ行きし事」が最も古い説あり。

④ 雨模様

例文:外は雨模様だ。
ア)雨が降りそうな様子 イ)小雨が降ったりやんだりしている様子
※本来の意味は、ア)
回答は ア)37.1% イ)49.4% 

▼この「模様」は「もよい」が変化したもので、「雨が降りそうな様子」が本来の意味。「催い」を辞書で調べると、その物事のきざしが見えること、とある。語源があるので本来 ア)の意味。

▼ではよく耳にする「全国的に雨模様になっています」は正しくない?
NHK放送文化研究所のウェブサイト(視聴者の疑問ー「雨模様になる」は正しい?)をみると、今では本来の用法に加えて「すでに雨が降っている状態」の時にも使われるとあった。
「雨模様」は、モザイクのように所によって降ったり降らなかったりする状態を、まとめて表現するのに便利な言葉だという。そのためNHKでは放送でこの表現も許容している。
デジタル大辞泉をみると、確かにその意味も加えられている。今後は意味のひとつとして認められてゆくのかもしれない。

ただ、降っているのか、降りそうなのか解釈が分かれる表現になってしまうため、天気予報では使わないそうだ。
たしかに正しく理解している人ほど、いま降ってる、これから降りそう、どっち?となってしまう。
言葉って難しい…。 

⑤ 号泣する

ア)大声をあげて泣く イ)激しく泣く
※本来の意味は、ア)
回答は ア)30.3% イ)42.1% 両方 25.8%

わたしは、イ)も間違いとは言えないのではと思ったが、「号」がつくため「声を出す」という意味が入っている ア)が正解。「号」には「大声で叫ぶ」という意味がある。怒号号令など

▼同じくNHK放送文化研究所のウェブサイトをみると、例として、
「(映画館で)映画を見て号泣した」
という言い方が最近増えていることを取り上げていた。何が問題かというと、これだと映画館で大声を出して泣くという意味になってしまい、はた迷惑な行為になるため、表現として適切ではないという指摘だった。

「号泣」で画像検索したら、あの”号泣会見”で有名になった、元兵庫県議会議員の野々村竜太郎氏が出てきた。あの会見を見れば号泣の意味が理解できるかも(笑)。

***END***
読んでくれてありがとう。






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