見出し画像

ショーケンKampo ⑫ 頭痛 60歳男性

症例検討会風に症例を通して漢方に親しむ、ショーケンKampoの第12回。頭痛を訴える方に黄連解毒湯(おうれんげどくとう)を使用した例を取り上げてみます。

【 ※Twitter   ※ 音声配信 】

【症例】 男性 63歳

【主訴】頭痛

【現病歴】50代半ばから高血圧傾向だが治療は受けていない。60歳になった頃から頭痛が出現した。緊張型頭痛の診断を受けて、筋弛緩薬、鎮痛剤、抗不安薬などの処方をうけた。しかし一年くらい前から頭痛が強くなるとともに毎日のように鎮痛薬が必要となったため、漢方診療を希望された。怒りっぽいところがあり、時に胸やけを感じるとのこと。

【所見】身長165cm、体重78Kg、血圧145/93mmHg。血液検査では中性脂肪がやや高値であること以外特に問題はない。顔はやや紅潮気味で、白目の部分に充血を認める。脈は力強い。舌には黄色い苔が認められる。腹壁の緊張は普通。みずおちにやや硬い抵抗と圧痛を認める。

【経過】体力はある方で、顔面紅潮、目の充血、胸やけなどから熱をもっており、怒りっぽいなどから黄連解毒湯を処方した。2週間後の再診時には、頭痛や胸やけが非常に軽くなっており、4週間分の処方を追加して様子を見たが、症状は消失し終診となった。

【説明】黄連解毒湯は、黄芩、山梔子、黄連、黄柏の四つの生薬から構成されています。いずれの生薬も体を冷やす方向に働くもので、体にこもった熱によりいろいろ症状が出ている場合に、熱を冷ますことにより効果を表わすという面があります。
顔がほてって、イライラ、カッカの小太りおっさんが使用適合するイメージでしょうか。
保険適応は、「比較的体力があり、のぼせ気味で、いらいらする傾向のあるものの次の諸症:喀血、吐血、下血、脳溢血、高血圧、心悸亢進、ノイローゼ、皮膚そう痒症、胃炎。」となっています。
心身の熱を冷ますとされますので、心の興奮も鎮める方向に働きます。からだの興奮を抑え、血圧にも良い影響が出ることがあります。皮膚のかゆみに効くと言われると不思議かもしれませんが、冷ますことによりかゆみもよくなることがあるようです。一度胃がん術後の方が、皮膚科にいくら通ってもかゆみが取れないと言われたことがありました。家族がその方のことを短気だと言っていましたし、顔に少し熱を帯びているようすでしたので黄連解毒湯を処方したところ、服用した晩にはよくなったと言われていました。

少し苦味があって、飲みにくいと感じる方もおられると思います。私自身は、ちょっと頭に血が上っているなぁと感じた時などに、時々お世話になっています。また結膜表面の血管から出血して結膜を赤くしてしまうことがありますが、そのような時にも有効です。

漢方の世界は広く、深いので、その全容はつかめないにしろ、うまく利用すると日々の生活に非常に役立ちます。ぜひ、漢方の世界に興味を持ってください。質問やコメントは、Twitterで「#はなめがね」をつけてつぶやいてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?