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山椒の入っている漢方薬

 うな重をいただくときなどに、少し山椒を振るとさらにおいしく感じますね。たくさんかけすぎるとかえってよろしくないですが、この山椒も生薬として使われています。

 小粒でもぴりりと辛い山椒は、お腹を温め、痛みをとめ、過剰な水分を取り除きます。抗菌作用、血流増加作用、免疫活性作用なども報告されています。この山椒が含まれているのが大建中湯(だいけんちゅうとう)です。大建中湯は、山椒、乾姜、人参、膠飴から構成された処方です。山椒と乾姜が大いに温めてくれます。人参と膠飴が元気をつけてくれます。

 保健適応は、「腹が冷えて痛み、腹部膨満感のあるもの。」となっています。昔の書物では、お腹や胸が大いに痛んで、飲食ができず、お腹は冷えており、お腹が動いて見え(腸蠕動が見える)、痛がっていてお腹を触れないというような人に使うと表現されています。この表現が、腸閉塞ににているところから実際に腸閉塞の患者さんに使います。そして効果が実証されているので、漢方のことを知らない外科医も、大建中湯をよく処方します。お腹の手術後の癒着障害による腹痛などにも利用します。

 お腹が冷えて、腸の動きもよくないというような人に使うと、お腹の調子が良くなります。便秘傾向が改善することもよくあります。大腸の血液循環が改善することが分かっています。腸管蠕動の亢進作用があります。

 漢方の眼で見ると、体力が落ちていて、手足やお腹が冷えているような人に使うということになるのですが、腸閉塞を疑うようなときには普通の西洋薬のように体質など気にせず使っても効果が出る場合が多いと思います。

 大建中湯のエキス製剤には100番という番号が振られていますから、覚えやすいですね。この処方で一番記憶に残っている方は、もう30年くらい前の胃癌術後の方です。術後のイレウス(消化管通過障害)に対して大建中湯をまずは一日15gから開始したところ、腹痛はすぐに収まりました。しばらくして7.5gに減量して問題がないことを確認しました。開始から半年後くらいに、本人と相談してお薬をやめることにしました。するとなんとその翌週にはまたお腹が痛くなってしまったのです。すぐに7.5gで再開したところすぐに症状は治まり、その時私が赴任していた病院を離れるまで継続した次第です。

 高齢者というのは、新陳代謝が落ちており、からだも冷えやすくなっています。もちろんお腹も冷えてしまっている場合がすくなくありません。そんな方で腹痛などを訴える方には、この100番の大建中湯を試してみるとよいかもしれません。





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