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漢方における病気の進行ステージ・六病位

 風邪をひいたかなと思っているうちにだんだん進行して喉がちょっと痛くなり、咳が出たり食欲がなくなったりと言うふうに、次第に病気が奥に入ってくるような感覚を持った事はありませんか。私の場合は、喉がチクチク⇒首のあたりの喉の乾燥感⇒ 痰を伴う咳、と気道の奥に向かって風邪が入り込んでくる印象を受けます。ただし、現在では日々の暮らしに漢方を取り入れてから、ひどく体調を崩すこともなくなり風邪もひかないのでこのような経験をすることもなくなっています。

 漢方では、急性の病気になるときは、病邪が体の表面からだんだん奥の方へ入っていき、体の上から下へ降りていくというふうに考えるとともに、病邪に対する抵抗力が強い状態から病気が長引けば抵抗力が落ちた状態へなっていくと考えます。これは風邪がだんだんひどくなる過程をイメージするとわかりやすいかもしれません。そして病気の進行具合によって6つのステージ(病期)を想定しています。これらの病期のいくつかを経て、治らなければ死に至ると考えます。漢方の原典といわれる書物に、傷寒論というのがあります。この傷寒というのは大まかに急性発熱性疾患を表わすと考えてよいと思います。昔は平均寿命がぐっと短かったでしょうから、急性疾患に対する医療が主で、今のように慢性病が大きな問題となることは少なかったのでしょう。日本漢方では、この急性期に対応していると思われる傷寒論の考え方に寄せて、慢性期疾患に対しても6つの病期を当てはめて考えることが多いのですが、さすがに無理があるなぁと感じることもあります。それはさておき、漢方における6つの病期(6病位)をどのように分けているかをみてみましょう。

太陽病

 病気の初期で、病期の首座が体の表面で上のほうにある時期です。ただし上というのは四つん這いになったときに上を向いている方とイメージした方がよいと思います。症状には、頭痛、発熱、筋肉痛、関節痛、項背部痛、悪寒などがあります。

少陽病

 病気の首座が、少し奥に入り、脇下、季肋、脇腹あたりにやってきます。症状には、体が熱くなったり冷えたり、肋骨下縁あたりの胸からお腹にかけてが張って痛んだり、口が粘ってすこし苦く感じたり、嘔気、嘔吐、食欲不振などが見られるなどがあります。

陽明病

 さらに病気の首座が奥に入ってしまいます。表裏の裏に入った状態で、内臓に入ってしまった状態とイメージするのがよいと思います。症状としては胃腸の不具合が目立ちます。お腹が張り、便秘になり、体が熱くなり、のどが渇くというような症状がでてくるわけです。また発熱が持続することもあります。

 以上の3つの病期には「陽」という文字が入ります。陰陽の陽で、まだまだ体の抵抗力があり、病気と闘っている時期です。この時期に病気から立ち直ることができなければ、体が弱っていき、「陰」の時期に入っていきます。陰のステージはだんだん体が弱っていく過程になります。

太陰病

 体の奥に冷えがあり、体力が落ちます。お腹が冷え、腹痛、下痢、食欲不振、嘔吐などがみられます。

少陰病

 太陰病の時期より体が弱り、様々な機能が衰えていきます。全身倦怠感が強くなり、いつも寝ていたいという状態になります。四肢を中心に体の冷えがあり、下痢を認めます。手首の脈を見ようとしても探らないとわかりにくいほど弱くなります。

厥陰病(けついんびょう)

 厥陰病期になれば、臓腑の機能がさらに衰え、重篤な病状に陥ります。意識が混濁してきたり、体温が下がってしまったりと、もう死が近いというイメージになります。

 以上六つの病期が想定されています。基本的には上記の順番に病気が進行するイメージですが、最初からぐっと重病感のある状態になることもあります。それぞれの時期に適応する方剤が決まっているので、病期が決まれば処方選択の幅をぐっと狭めることができるわけです。ただし、漢方の見方というのは多面的であり、ほかにも虚実、寒熱、気・血・水その他の視点からも病状を把握して、最終的に処方を決定するという流れになります。

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