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天気痛という言葉がNHKで使われていたので

 テレビ番組の中で、「天気痛」という言葉が使われていました。NHKの番組で使われているところをみると、ある程度市民権を得た言葉となってきているのでしょう。どうやら、主に低気圧が近づくときに、頭痛などがおこるものを指しているようです。天気の変化などで体調を崩す、気象病の中でも痛みが出るようなものを天気痛と呼んでいるようです。気象痛と呼ばれるのを聞いたことは有りますが、私の頭の中ではてんきといえば天気が良い方に結びつくのでちょっと違うかなぁと思います。

 ちなみにあたらしい概念のように説明していましたが、天気によって体調に変化が起きるということは、漢方の世界では当たり前のことです。病気のとらえ方という面で、西洋医学が東洋医学に追いつこうとしているという印象を受けます。

 気象病の原因は特定されておらず、天気の変化に伴って不調となるもの全体をさしている症候群といえると思います。漢方では体調変化をみる物差しの一つとして、気・血・水をイメージしますが、天気痛を含む気象病の場合、水のバランスが崩れた、水滞(水毒)と考えて対処する場合が多いです。ただし、そのような方は、気という生命エネルギーが弱っている場合や、血が足りず体力が落ちていることも多いと思われます。

 天気が悪くなる時に、痛みが出る、めまいがする、体調が何だか悪い、体が重い、などという症状を訴える場合に第一選択となるのは、五苓散(ごれいさん)という漢方薬です。体の水バランスを整える生薬が4種類含まれ、さらに桂皮によって体を温めるとともに気のめぐりをととのえてくれます。保険適応病名は、「口渇、尿量減少するものの次の諸症:浮腫、ネフローゼ、二日酔、急性胃腸カタル、下痢、悪心、嘔吐、めまい、胃内停水、頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病。」となっています。どうして低気圧傾向になるときに頭が痛くなるのかよくわからないけれど、普段から体のどこかがむくみやすい人というのは、気圧が下がると脳がむくみ、気圧が下がってしまうとその圧にだんだん適応して痛みも消えていくなんてことを勝手に想像しています。体の水はけを良くしてあげることで、脳が浮腫まずに痛みも出ないと考えれば一応説明になっている。実際は知らないけれど。

 半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)というのも同様に使えます。五苓散と同じ生薬が三つ入って全部で12種類の生薬からできています。冷えがベースにあって、水滞傾向の方に使いますから、天気痛にも良いのでしょう。

 女性によく使う当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)も候補に上がります。これも、朮、沢瀉、茯苓という水代謝を改善する生薬が含まれているとともに、血のめぐりを良くし、痛みを取ってくれる処方となっています。

 天気痛を訴える方に漢方を使うときには、水のバランスを整えてあげることを第一に考えるわけですが、気や血のバランスがどうなっているかも一緒に考えて、目の前の患者さんに最も合いそうな処方を決めます。ですから、ここで例として挙げた処方以外にも、利用できるものはいろいろあると思います。自分の体調を振り返ってみて、どうやら天気が崩れるときに調子が悪くなる、と思ったら漢方薬のことを思い出し、一度診察を受けてみてください。

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