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漢方入門② 気・血・水から人をみる

前回は、漢方とはということをお伝えさせていただきました。今回は漢方を考える上で大切な概念である、気・血・水について述べさせていただきます。

生体は気・血・水の三要素で維持されていると漢方では考えます。そのバランスの崩れを治すという目線で治療を考えるわけです。その他にも漢方の視点は、陰陽、虚実、寒熱、五臓その他いくつもあって、漢方医は自分なりに多くの考え方を咀嚼、理解して漢方薬を使用しているわけです。しかし、この気・血・水という捉え方が、漢方の中心の一つであることは間違いないと思いますので、その概略をお話します。

気と言うのは目に見えないもので、生命エネルギーと言い換えることができます。現代の科学で物質として捉えることができない精神活動や機能的な活動全体を気と呼んでいると考えれば良いと思います。気には生まれながらにして持っており腎に蓄えられている先天の気と、誕生後に外界から取り入れる後天の気があるとされています。

血と水は物質として捉えることができるもので、体に栄養と潤いを与えてくれるものです。その中で赤いものを血、透明なものを水とイメージすれば良いと思います。血は血液も含め全身に栄養を行き渡らせる機能全体を指しています。水は単に水分というだけでなく、様々な代謝を引き起こす場であり様々な物質を運搬する働きでもあります。

これら、気・血・水の三要素が互いに連携しあい、スムーズに循環することによって生体の機能が維持されていると捉えています。三要素のうち、気は陰陽の陽、血と水は陰ととらえ、陰と陽が量的にも質的にもバランスが取れている状態が望ましいと考えます。

気のバランスが崩れている状態は、気虚、気鬱、気逆の三つの異常を考えます。気虚は気という生命エネルギーが不足している状態です。気鬱は、スムースな気の流れが悪くなり、堰き止められているような状態を想定しています。気逆は気が逆に流れる状態で、正常では上半身から下半身に流れていく気が、上に向かって流れているというイメージです。逆上という言葉が近いかもしれませんね。

血の異常として、血虚と瘀血(おけつ)があります。血虚は血が足りない状態で、栄養不足につながります。瘀血は、血の巡りが悪くなった状態で、色素沈着やしこりの出現などが認められることがあります。

水の異常は水滞、あるいは水毒と言います。体の中で水の偏在が起きている状態です。むくみや腫れなどとして現れたり、水様鼻汁や下痢として現れたりします。

漢方ではなぜか、液体の足りない状態のことをはっきりと規定していないのですが、陽の気に対して、血・水の陰が足りない状態を捉えて、中医学では陰虚という概念が提示されています。私は、時々この陰虚も想定しながら処方を選択しています。

今回は、気・血・水の概略を説明しました。次回からは、陰虚を除いてそれぞれのバランスが崩れた状態、つまり上に述べた六つの病態、気虚、気鬱、気逆、血虚、瘀血、水滞を一つずつ見ていきましょう。最初は気虚からです。


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