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腎気丸(じんきがん)三兄弟 コメントにお答えして

 漢方の魅力を少しでも多くの方にお伝えしようと思い、Podcastでの音声配信を始めて約160話ほどアップしてきました。聞いていただいているメディアは、Spotify, apple podcast, Anchorその他いろいろでしょうが、少しずつ聞いてくださる方も増えているようです。

 録音は、iPhoneを使い、言い間違いや噛んだりしてもやりなおしなしということでやっています。話す内容は、マインドマップを作り、それを見ながら話すということで当初行っていましたが、漢方薬の名前は漢字もみていただかないと、音声だけではわかにくいという面があります。そこでここのところ、文字情報としてブログの形でこのNoteに投稿しています。興味があればぜひのぞいてみてください。

 先日Caracaraさんという方からコメントをいただいきました。Caracaraさんのご家族が、白内障による見えづらさから来ると思われる肩こり、頭痛を医師に相談したところ、普段服用している漢方薬に加えて六味丸を処方されたけれど、白内障には八味地黄丸ではなかったかなと思ったとのことで、なかなかの漢方ファンとお見受けしました。そこで今回は六味丸、八味地黄丸、牛車腎気丸の三兄弟をご紹介します。

 六味丸に桂枝と附子の二つの生薬(二味)が加えられたものが八味地黄丸です。ですからそのご家族の場合、普段服用している漢方薬にすでに桂枝や附子が含まれていた可能性が一つあります。特に附子などは過量投与となれば、動悸などの副作用が出ることがありますから注意が必要です。もう一つの可能性は、桂枝や附子が不要だったということです。桂枝も附子も体を温める方向に働きますから、手足があついなどということを訴える方には六味丸の方がよいということになります。

 昔の人は、親からもらった気、つまり生命エネルギーは、腎に蓄えられていると考えました。加齢というのはその気のエネルギーが年齢とともに目減りしていくものと考え、腎虚と呼びました。その腎の気を補う処方を補腎剤とよび、上記の三兄弟がその代表になります。生薬とすれば、地黄や山薬が補腎効果があるものになります。

 六味丸は、比較的体力が低下した泌尿器・生殖器・副腎の機能障害に基づく排尿障害、陰萎、腰部・下肢の脱力感、しびれ、痛みなどを目標に用います。保険適応は、「疲れやすくて尿量減少または多尿で、時に口渇があるものの次の諸症: 排尿困難、頻尿、むくみ、かゆみ。」となっています。なお、人は加齢とともに水気が抜けてきますが、六味丸には潤いを補う作用もあるので、滋陰剤に分類されることもあります。

 八味地黄丸は、中年以降の方を中心に泌尿器・生殖器・腎などの機能低下に伴う排尿障害、陰萎、腰部・下部の脱力感、しびれ、痛みなどを目標に用います。八味丸とか腎気丸とも呼ばれます。保険適応は、「疲労、倦怠感著しく、尿利減少または頻数、口渇し、手足に交互に冷感と熱感のあるものの次の諸症:腎炎、糖尿病、陰萎、坐骨神経痛、腰痛、脚気、膀胱カタル、前立腺肥大、高血圧。」となっています。

 牛車腎気丸は、八味地黄丸にさらに牛膝と車前子が加えられたものです。牛膝も腎を補う力があり、車前子は沢瀉や茯苓と一緒に水バランスを整えてくれます。この処方も中高年者を中心に、エージングによると思われる症状に用いますが、特に尿量減少、夜間尿、浮腫、腰・下肢痛などが顕著なものに用いることが多いです。保険適応病名は、「疲れやすくて、四肢が冷えやすく、尿量減少、または多尿で時に口渇のある次の諸症:下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、むくみ。」です。

 上記三剤いずれも、保険適応病名として白内障は含まれていませんが、加齢による症状に対して用いているうちに、白内障に対しても効果を表すことが少なからず認められるようです。以上、アンチエージングを考えている方のお供となりうる漢方薬のご紹介でした。

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