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柴胡剤という処方群について

 どの時代のどの場所に生まれたとしても、人はそれぞれ様々なストレスを受けながら生きているのだと思います。現代も様々な精神的なストレスを受ける人が多数いると思われます。人はそういうストレスに対して立ち向かう過程で強くなると言う面もあるかもしれませんが、ため込んでしまい心身の調子を崩してしまうと言うこともあります。そのようなストレスが体に入ってきた時、漢方では多くの場合半表半裏(体の表面と中心の中間というイメージ)にそれをため込んでしまい、そこでため込んだマグマのように出口を求めて苦しんでいると言うように考えている節があります。そんな時によく利用される処方分が柴胡剤と言われるものです。

 柴胡剤とは多くの場合生薬の柴胡と黄芩を含む処方を総称したものとされますが、黄芩を含まない場合も柴胡剤と呼ぶことがあります。柴胡と黄芩で半表半裏にこもった熱を開放して病気を治癒に導くとされており、西洋薬の、消炎剤、解熱剤、鎮痛剤などの作用を併せ持つ漢方薬とかんがえられます。まさにため込んだマグマを解放してあげると言ったところでしょうか。西洋医学的にはこのような発想はなかなか理解しがたいのですが、このように考えて柴胡剤を処方すると症状が取れる場合があるのは事実です。

 風邪をひいて3~4日経つと食事がまずく、口が粘り、咽が渇くようになります。これは風邪が半表半裏に入りこんだためと漢方医学は考えます。この状態を少陽病といいます。柴胡剤は、この少陽病に対して使う処方というのが基本で、半表半裏の病邪を中和して、排除してくれると考えます。

 柴胡剤に分類されるものは複数ありますが、症状や病態に応じた他の生薬が配合されています。様々な状況で柴胡剤を使用する場合がありますが、西洋薬の対比で考えれば、精神安定剤、消炎鎮痛剤、抗アレルギー剤、風邪薬、胃腸薬、便秘薬などにあたるものと思われます。

 柴胡剤を使ったほうがいいかなと考えられる症状や所見とすると以下のようなものが挙げられます。口のなかが苦い、味覚が低下する、食欲不振、体温が上がったり下がったり繰り返す、肋骨の下あたりが張って苦しい感じがする、肝機能障害、イライラする、眉間にしわがある、などです。

 いろいろな場面で使われる柴胡剤ですが、柴胡には中枢抑制作用として、鎮静・鎮咳・鎮痛・解熱などの作用が報告されています。鎮静作用があるところから、ストレスで体調を崩す方が多い現代において、ちょくちょく出番のある処方群の一つです。たとえば四逆散(しぎゃくさん)という処方などは、漢方のトランキライザー(抗不安薬、精神安定剤)と呼ばれることもあります。

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