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冷えると悪化する関節痛・神経痛に桂枝加朮附湯

 寒さがゆるみ、日中は少し暖かい日も増えてきました。冷え性の人にとってはうれしいことですね。とくに冷えると調子が悪くなる人にとっては、寒さと言うのは大敵です。

 関節痛などには、冷やすと楽になる場合と温める方が良い場合とありますが、冷え性の人は基本的に温めてあげる方が良いようです。漢方薬を使用する場合も、冷やすか温めるかを判断する必要があります。

 足首の骨折後の方が来られました。まだ少し患部が腫れており、熱も持っています。こういう時には温めないほうが良いですが、血の循環は良くしたほうが良いのでもともと処方されていた鎮痛剤などに加えて、桂枝茯苓丸を処方しました。比較的すみやかに腫れが軽減しました。そのうちに、朝方冷えると痛みが出るといわれるようになりました。これは温める時期だなとおもい、桂枝加朮附湯に変えたところ、冷えても痛まなくなったとのことでした。

 桂枝加朮附湯は、四肢関節の疼痛・腫脹、筋肉痛、麻痺、しびれ感などを目標に用いる方剤です。とくに冷えると具合が悪いという方に効くことが多いです。

 保険適応は、「関節痛、神経痛。」となっています。

 構成生薬は、桂皮(けいひ)、芍薬(しゃくやく)、蒼朮(そうじゅつ)、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)、附子(ぶし)となっており、桂枝湯に蒼朮と附子を加えたということで、桂枝加朮附湯という名前になっています。江戸時代の名医、吉益東洞(よしますとうどう)が、傷寒論の時代からある桂枝加附子湯に蒼朮を加えて編み出した処方と言うことです。なお、さらに茯苓を加えた、桂枝加苓朮附湯という方剤もあります。茯苓が入ることで水分バランスを整える意味合いが強くなっていると思われますが、同じように使えます。

 附子と桂皮が温めるとともに血行を良くし、芍薬が痛みを軽減し、蒼朮が水分バランスを整えて腫れを消退させ、大棗、生姜、甘草が胃腸を健やかにしてくれます。胃腸の弱い人にも使いやすい処方です。

 慢性関節リウマチの治療をしている方に、この処方を併用すると相乗効果があるといわれています。また帯状疱疹後に痛みが取れない神経痛に対する効果なども報告されています。骨粗しょう症における、骨量の減少抑制や疼痛軽減などの報告もあります。漢方薬は、伝統薬ですが、現在に合った新しい使い方が編み出されるのも面白いですね。

 私にも、桂枝加朮附湯が必要なタイミングが、そろそろやってくるのかもしれません。

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