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わたしの読書の秋

『ミッテランの帽子』
著者 アントワーヌ・ローラン
翻訳 吉田 洋之 ‌
"Le chapeau de Mitterrand"
novel by Antoine Laurain
translated  by Hiroyuki Yoshida


1980年代のパリ。当時の大統領、フランソワ・ミッテラン氏がブラッスリーに置き忘れた黒のフェルト帽には、金糸でF.M.のイニシャルが刺繍されていた。‌

何事もうまくいかない公認会計士
不倫の恋を断ち切れないパリジェンヌ
ジレンマに陥った天才調香師
ブルジョワな人生に嫌気のさした男

‌彼らのどうしようもなくやるせない人生に、黒のフェルト帽は、静かな力〈ラ・フォルス・トランキーユ〉と大きな変化をもたらしてゆく。

誰もが停滞や低迷をしている時期はある。現状を思い悩んだり、嘆いたり。それは決して無駄な時間ではないのだと、何度もやり直すことが出来るのだと、著者は伝えてくれているように思う。

‌余談ですが、わたしがミッテラン元大統領のことやフランスが好きだなあと思ったあまりにも有名なエピソードがあります。

‌ミッテラン氏の就任中のスキャンダル(愛人の存在)を報じたタブロイド紙の記者に対して「Et alors? それが何か?」と一蹴したこと。フランスでは、彼を咎めるひとは、ほとんどいなかったと聞きます。それは、個人の身の上話よりも、執務室で起こっていることの方が、ずっと重要だと知っているからに他なりません。

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