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フードデリバリーの行く先。薄利多売の方向性、合ってるのだろうか。

こんにちは。

フードデリバリーを始めて1ヶ月半。
もう少し業界のことを深堀りしてみようと、まずは決算短信を拝見。早速、疑問が生じたので調べていくと、出前館が目指す姿は本当に合っているのだろうかと考え込んでしまいました。株主でもないのですが、これまでの経験と配達員の経験を踏まえて書き残しておこうと思います。

出前館は上場企業なので、IRが公開されています。画像は決算短信の資料です。

2023年と2024年比。売上高はとんとんなのですが、営業利益に差があり過ぎています。一体何があったのか、不思議に思いました。

2023年2月に全自社配達拠点を閉鎖。シェアリングデリバリー事業の全ては個人事業主へのアウトソーシングへ移行しました。その結果、配達員雇用時に生じていた、品質管理責任がなくなり、教育や衛生管理は、個人事業主の個人責任へとシフトしました。また、同時に配送料金の適正化も行なったとの事なので、原価低減に成功したことになります。

原価低減自体は素晴らしいことなのですが、さらに読み込んでいくと、近い将来の暗雲低迷が来るのではないかと想像していまう内容でした。


出前館が掲げるKPIは「デリバリーの日常化」と「黒字化」です。今期についても、この2点を優先するとのこと。

配達員の数を重要視しており、ピークタイム以外に配達員が稼ぎにくいとの問題にも対策を講じています。私もピークタイム以外のブーストが低い時間帯は、Amazonのデリバリーパートナーの方がいいのではないかと思い、資料請求をしたところです。荷物の配送なら、食事のように時間帯を選ばないからです。UberEatsなら、1配送300円の時もあるくらいです。こういう時間帯は、注文が少く、配達員は多い状態。需要と供給がアンバランスで、対価も低くなります。そこで出前館はAmazonのように配送の中継地点からお客様の自宅までのラストワンマイルを配達員に発注出来るようにしようと、Yahoo!ショッピングと提携しました。今年の夏頃からテスト運用が開始されます。稼げない時間帯はフードではなく、段ボールを運べるようになるわけです。

一見、外食産業に見える出前館ですが、事業内容を読んでいると、物流事業主であることがわかります。

運送部にいたことがあるので、いろいろと思い出します。トラックの輸送業者も、復路活用には常に頭を悩ませています。例えば関西から青森着の場合。帰りの復路の仕事を別に取らないと、運送業者は大損になります。全国各地にネットワークを張り巡らせている運送業者は自ら受注を得ることができますが、そうでない会社は荷主に復路分の運送料を交渉するのが常。荷主も仕方なく、費用を負担することも多くあります。

この点、出前館は配達員確保のための努力を怠っていません。この点は非常に評価出来るところだと思います。

さて、問題のシナリオはここからです。

世帯カバー率は56%。
直近1年間に1回以上オーダーしたアクティブユーザー数は6.57百万人、前年比24.7%減。巣籠り需要が崩れ、人流が復活した結果なので、減少自体は問題ありません。平時の数字に戻るだけなので。ただ、リピート回数がアクティブユーザー全体の平均では、月1回の利用にも満たないというのが現実です。

当初、出前館はファミリー世帯をターゲットに絞り、広告戦略を成功させました。ところが、ここに来て単身層の取り組みに力を入れ始めたとの事。

これまでのデータから、リピーターほど一回の注文金額が低いという結果が出ています。配達していてもよくわかるのですが、ファミリーは当然注文金額が高く、配達員に還元される金額も多くなります。対して、単身層は配達員の報酬分を出前館が得ていないのではないかと心配になることさえあります。

出前館は注文から30分以上待たせると、リピート率が下がるというデータを得ているので、シングルピック(1配送)の発注が基本です。配送距離も短く設定されているので、配達員にとってはかなり良心的。以前、マクドナルドも1分チャレンジをやっていました。1分以上待たせると、お店から去ってしまう率が高くなるというデータを得たためです。取り逃がしを防ぐための策、顧客満足度を高めるための策としては有効でしょう。

そして、加盟店を増やすため、フード以外のカテゴリを増やすようです。現在でも、コンビニやスーパーの案件を受けることがありますが、受注内容はまるでネットスーパーのよう。重たいペットボトルやお米など、バイクが傾くのではないかと冷や冷やしながら運びます。出前館はコスメやドラッグストアなどの取り込みを予定しているようです。例えば、イオンのネットスーパー。以前は5,000円以上で送料無料でしたが、なくなりました。現在は1配送330円。まるでUberEatsです。

こういったことからわかるのは、大勢の配達員を確保するため、受注を増やし、配達員への報酬を確保しようとしているという事。ただ、問題なのは、それに反して加盟店はメニューの料金を下げるであろうと予想していることです。いわゆる、薄利多売の構造。物流問題はこの悪循環にハマるのが常なのです。


では、どこが問題なのだろうと考えた時、「デリバリーの日常化」は正解なのだろうかということ。

昨日、ケンタッキーをとあるファミリーに届けました。続けて受けたのは、ミニストップのプリンパフェ4つ。同じファミリーへのお届けで、少し驚きました。

「週に一度の贅沢を」

が正解なんじゃないかと思うのです。お店から自宅まで誰かがドアtoドアで届けてくれる。そんなユーザー体験を300円で提供することが、正しいのだろうか。ラグジュアリー体験としての意識付けの方が自然なのに、配達員確保のために方向性がおかしくなっていないだろうか。そう、強く感じたのです。

ようやく物価高に転じた日本経済の潮流に、自ら逆行する理由はないと思います。

ECに対し、物流業者が「送料無料と書くのはやめてほしい!適正価格の明示を!」と叫んでいたことがあります。これ自体は反論の余地がありますが、例えば450円支払って自宅まで持って来て貰う。贅沢思考の満足感であるべきではないでしょうか。

競合と競り合う中で、価格が下がっていくのは必然ですが、どこかで適正価格に引き上げる転換期も来るはずです。それを待つのではなく、実現に一歩踏み出す勇気を持つのは、早い方がいいと思います。
結局はそうなるしかないのだから。



最後まで読んで頂き、ありがとうございました。


では、また。





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