紡@研修医を終えて

初期研修医の2年間を終えてから、一年が過ぎようとしている。これまで出会った魅力あふれる…

紡@研修医を終えて

初期研修医の2年間を終えてから、一年が過ぎようとしている。これまで出会った魅力あふれる個性的な医者たちと、これからはできないであろう経験を忘れてしまわないように、記しておこうと思う。

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最近の記事

6. 救急かかりつけ

 救急当直における診療たいてい一期一会である。定期的な通院はお近くのかかりつけ医が基本であるが、中には救急がかかりつけになってしまう患者さんもいる。お馴染みの主訴で受診するお得意さんだ。  背中が凝るので受診するおじいちゃんは、背中をさすってあげると楽になったといって帰っていく。足が熱くなり、山からの電波で行動が阻害されると訴えるおばさんは精神疾患を患っており、精神科に通院中。足が痺れるおじいちゃんはいつも財布に数十円しかなく、救急車で受診するが帰りの交通費がないため、なか

    • 5. あなたのおかげで不眠です

       こんにちは。今日はどうされましたか?最近風邪気味と。季節の変わり目ですものね。お食事はとれているようで、よかったです。めいっこさん、もう小学生になられたんですか。時が経つのははやいですね。ええ、ほんとうに。あ、そうそう、お薬でしたね。前回と同じでよかったですか?では用意しておきますので、また調子が悪くなったらご相談くださいね。  どうも、調子はいかがでしょうか。こないだ病院を受診したら、担当した医者の態度が悪かった?これから病院を変えようと思う?ええ、ええ、良いと思います

      • 4. 結婚したいと唱えましょう

         わたしには大好きな友人がいる。通称アオちゃん、出会いは大学。お互い人見知りなので、当初の飲み会の場や教室の中ではちょっと顔見知りのまあ友達、という関係だったが、じっくりことこと関係を煮込んでいった結果いまとなっては結婚式の挨拶をお願いするくらい仲良くなってしまった。ラブ。    面白くて、頑張り屋さんで、優しくて、美人。そして現役バリバリのお医者さん。やってられんわと言いながらストイックに働いている。欠点を血眼になって探していたら数年前になくした自転車の鍵が代わりに出てきた

        • 3. 医大生、卒業間際に別れるあるある

           初期研修医時の同期の田中くんは大学生の間、長年お付き合いしていた彼女と別れたのちに我らが勤務先のツナマヨ病院(仮名)にやってきた。  卒業間近に別れるのは医学部では結構あるあるである。特に地方大学では、地元の大学は難しそうだがここなら勝ち目があると踏んだ都会出身の子が多い。その中にはご家庭が開業医であることも多々ある。そもそも開業の有無に関わらず、大学の六年間(医学部は六年制である)を過ごしたからと言ってそのまま住み着くには、地方大学にはいささか魅力が足りない。また、大学

        6. 救急かかりつけ

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        • かくいう私も医者である
          6本

        記事

          2. 研修医は医者です

           ところで、研修医という事柄はどれだけ社会に浸透しているのだろうか。現代の医療では当然の制度なので、どこまで説明が必要なのかいまひとつ検討がついていないので、ご存知の方はさらりと受け流していただきたい。知らないならまだしも、誤解をしている方がいるかもしれないので説明しておく。なんでも、研修医の話が原作の大ヒット小説がドラマ化した際、サブタイトルとして「医者未満、学生以上」のようなものが案としてあったらしい。大炎上してそのサブタイトルは無くなった様だが、それもそのはずである。研

          2. 研修医は医者です

          1. かくいう私も医者である

           初期研修医の2年間を終えてから、一年が過ぎようとしている。 終わってみるとあっという間で、短い間に本当にたくさんのことを経験し、いろんな出会いがあった。 深夜を回る手術、時には一睡もできなかった夜間の救急当番、毎週のように一緒に飲んでいた気の合う同期…。 社会人として、医師として、初めてのスタートを切り、当時は新しいことだらけで慣れるのに精一杯、毎日をこなすのに精一杯だった。 専門の医科を決めた今、今後他の科を経験することも初期研修医に戻ることもない。もう戻れないと思うと

          1. かくいう私も医者である