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4. 結婚したいと唱えましょう

 わたしには大好きな友人がいる。通称アオちゃん、出会いは大学。お互い人見知りなので、当初の飲み会の場や教室の中ではちょっと顔見知りのまあ友達、という関係だったが、じっくりことこと関係を煮込んでいった結果いまとなっては結婚式の挨拶をお願いするくらい仲良くなってしまった。ラブ。
 
 面白くて、頑張り屋さんで、優しくて、美人。そして現役バリバリのお医者さん。やってられんわと言いながらストイックに働いている。欠点を血眼になって探していたら数年前になくした自転車の鍵が代わりに出てきた。ちょっと理想が高いところがある(高身長、年上、自分と同程度以上の職、笑いのセンスだけは譲れないとのこと。“だけ“とは?)。話を聞いてみるとちょっとどころではない鉄壁の高さを誇る理想のようだが、才色兼備の彼女を見ているとそうなってしまうのも無理はない。しかも自立しているので、男がいなくても生きていけていってしまうのが仇となっている。


 そんなスーパーウルトラワンダフルな彼女であるが、占いバーのようなところに行ったら毎晩結婚したいと唱えることから始めろと言われたらしい。もしいい出会いがあったとしても、恋愛センサーが死んでいるから頭を恋愛モードにすることから始めましょうとのこと。メンヘラ女子がはびこる令和の時代に、なんて逞しいんだ…。夜な夜な唱えてるわ〜といった彼女は以前となんら変わらない。占い代を返してくれたらビール代に替えて乾杯するのにね!

 アオちゃんのような有料物件がそのへんをうろついているということが奇跡であるが、それは男性側にも言える。ようするに彼女に見合うようなスペシャルな男性はすでに既婚者の肩書を背負ってしまっているのである。もうあと数年夜な夜な唱える呪文が早ければ違ったのだろうが、うっかりのんきに自立している場合ではなかったのだアオちゃんよ。最近になってその事実に気づいたらしく、先日彼女と会った時には、「妥協も必要だとわかったので年齢と身長は諦めることにした」とあっけらかんと言っていた。ユーモアは譲れないのよね…と唸っていた彼女の前に爆笑不可避の面白ユーモアセンス爆発王子が現れることを切に願う。


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