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歯医者の「はい。あ~ん」の年齢制限って?

前回、精神的苦痛を伴うほどの歯医者嫌いな私が、親知らずの抜歯(親離れ)への覚悟を決め、全力で抜歯を楽しむためにnoteを書きました。

​さて今回は、歯医者の思い出を綴っていこうと思います。

歯科医院に行った時、口を開ける際どんな声掛けをされますか?

未就学児とか小さい子には、不安を減らしてくれるように優しい口調で「はい、あ~んしてね」と歯科医師さんも歯科衛生士さんも声をかけてくださいますよね。ワントーンほど声色をあげてくれるサービス付きです。だいたい歌うような声で言われると、素直に口を開けてしまいたくなる魔法の呪文。

それがだいたい中高生くらいになってくると「オトナ」扱いをしてくれるようになります。病院などに行った時も、敬語で親に話す時と同じ声色で、対等に話してくれる・・・

その常識、ちょっと待った!!!

私は問いたい。「はい。あ~ん」の卒業はいつでしょうか・・・

私が生まれたての頃、近所に歯科医院が開業しました。歯科医師のマルイ先生(仮)は確かな腕を持っていて優しいと評判。私は物心のつく前からその歯医者さんにお世話になっていました。坊主でまあるい眼鏡をしていて人柄もまあるく、落ち着く声で声をかけてくださるので、私は大好きでした。

「あらハナちゃん。よく来たね。はい、あ~ん♪」

そんなことから診察が始まるのが当たり前でした。小学校高学年になると背伸びをしたいお年頃。そんな子供扱いしないでよ~と内心思いながらも、その穏やかな人柄に助けられ、大嫌いな「キーン」「ウィンウィン」と煩い口内工事中の世界でも、何とか診察も耐え抜いておりました。

中学生くらいになると歯科医院にほとんど通わなくなり、気付けば大学生になっていました。例の右下親知らずの歯茎が腫れてものを噛めなくなったので、数年ぶりにマルイ先生のもとに駆け込みました。

年は19歳。見た目は立派なオトナです。私は秘かに、マルイ先生から「口を開けてください」と言われることを楽しみにしておりました。だって、そうでしょう?オトナなんですから!!

待合室でも漏れて聞こえる口内工事中の工事音に肌を震わせながら、いざ、戦場へ!

ユニットに案内され、ソワソワと椅子に座ったならば、若い歯科衛生士さんが最初に対応してくださいました。しっかりとオトナな声のトーンで!

はい。口を開けてください

はい。私の"口を開けてください記念日”の瞬間でした!口を開けているのでニヤニヤできませんでいたがたいそう誇らしく思いました。ですが、ラスボスはまだ対峙しておりません。先生!私はこんなに大きくなってオトナになりましたよ!もう先生の「あ~ん」が聞けないのは今となっては寂しいくらいですが、それも成長の証ですね。

しばらく来ていない間に、壁もユニット(治療椅子)も道具も新しくなっていました。私が生まれてからできた歯医者。一緒に成長したなあと、勝手に感傷にひたりながらラスボス(マルイ先生)を待ちました。

「お~ハナちゃんか~。久しぶりだねえ。元気だったねえ?もう大学生になったのかあ。」

私の記憶よりも数年年老いて白髪混じりのマルイ先生。まあるい眼鏡も健在でした。そうです!大学生になりましたよ!どうもオトナです!お見知りおきを!これはいけると確信し、ワクワクしながら椅子が倒されるのに身を委ねました。


はい、あ~ん♪


その場にいた若い歯科衛生士さんは思わずカルテと私の顔を見比べました。

私は歌うような優しい声色に言われるがまま、思わず口をあんぐりと開けてしまい、為すすべなし・・・


マルイ先生だけが楽しげに処置をし、困惑する歯科衛生士さんと私。

その時ばかりは「キーン」も「ウィンウィン」も頭の中で鳴り止み、かわりにマルイ先生の優しげで、歌うような「あ~ん」だけが何度も頭の中でこだまのように鳴り響いていたのでした。

最後まで読んでいただいてありがとうございました!「スキ」とても励みになります。マイペースに投稿しますが、これからも時々覗いてみてください。