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季節の過渡期

食材の買い物を終えた帰り道、まだ13時にもなっていないけれど陽は傾き、夏の眩しい日差しとは違う、すこし白っぽい光が住宅街を照らしていた。

日陰をぬけて陽を浴びたとき、季節だ、と思った。

光の色が冬。あたたかい季節の昼の光は、もっとまるくてやわらかい。ひんやりをすこし過ぎたつめたさの初冬の空気とともに浴びる日差しは、寒さが増すのに比例して鋭くなる。12月頭、鋭くなりはじめた日差しは住宅街を白々しく照らして、空は妙に抜けてきれいな青。季節の過渡期。

買い物から帰ってきて一息ついてから、それでもまだ14時半、日は十分に差していて、よし、と思い立ち散歩へでかけた。

最初はいつもより少し早めに歩いていたけれど、大股で歩いてみたら股関節が気持ちいい。そういえばわしわしと歩くの、結構すきなんだったな。久々にわしわし歩いてみよう。こういう運動するときって腕をちゃんと振ったほうがいいんだっけ?ひじを曲げて腕を動かしてみる。あ、上半身の刺激が気持ちいい。凝り固まってる肩甲骨を動かすように腕を動かしてみる。お、お、これはなんだかいけるかも。わしわし、歩く。暑くなってきてダウンのチャックを開ける、上半身がなんとなくほぐれてくる。あれ、身体動かすのって気持ちいい、な?ランニングが趣味の夫の気持ちがすこしわかった気がする。頭に血が巡っていく感じがして気持ちいいけれど、首から上は寒さに弱い仕組みなので耳と頭が寒さに嘆きはじめる。そうするとちょっと飽きてきて、早く帰りたい気持ちが前にでてくる。ある程度遠くまで歩いたから、あとはもう家に帰ろう、知らない道を通って帰ろう。大股で、腕を振って、突き進む。家についてダウンを脱いだら、冬に外から帰ってきたひとの匂いがした。 無職2日目、運動のよさに目覚める。

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