素直になろう2022夏

初めてお金を払って見てもらった占いでいわれたことは、要するに、もっと素直でいなさいということだった。自分のスキルを無視せず素直に使いなさい、と。

この1年と少し、わたしはとっても満たされている。
けれどそれは環境や状況にたまたま恵まれているだけだってずっと思っている。このバランスがいつ崩れるのか、その先になにがあるのか。そんなことを頭の片隅でぼんやり考える日々が続くので、ちょっぴり占ってみてもらうことにしたのだった。


「これから、どんな生き方になりますか?わたしは何を生業にしていきますか?」

PC画面越しに並んだ数十枚のカードたち。占ってくれる方とともに紐解いていく。

『今もっている知識を使っていくことになります。自分自身のスキルを裏切らないで。無視せず総動員すること。』

どうやらこの先のことは全部今までの経験から繋がっていき、新しく取り掛かることから派生する感じではないらしい。へええ。この先ばかり気になっている自分に、「今までを大切にして」といわれるなんて思ってもみなくてやや戸惑う。

『自分のスキル、大切なものとか、脇においてませんか?せめて隣においてあげて。』

思い当たるような、ないような…ああ、でもこの数年で価値観が結構変わってしまって、それは悪いことではないのだけど、おかげでずっと大切にしていたものとちょっと距離をおいてたりはしてる。そう、文章を書くこととか。大切な友人がかつてわたしによく言っていた。「あなたの酸素は言葉だからね」。それは10代20代のもがき苦しんでいる時期の話で、今は落ち着いたから酸素とは遠くなっても大丈夫だなあ…と思っていた。けれど、脇においてきたものとしてまず浮かぶのはやっぱり言葉たちのこと。苦しくなっても、本で、インターネットで、素敵な言葉がわたしを救ってくれたし、楽しかったときは全部文章にして昇華していた。ただ人との出会いや転職、人生がすこし変わったことで救いを求めるようなこと自体が減っていき、おまけにノートPCを落下させてからキーボードが不調になり、そんなわけで文章を書く機会がぐっと減ってしまった。(ちなみに不調は今も変わらず、GとHとバックスペースの反応は気まぐれ。)
大好きな文章を書く機会が減っても問題なく過ごしていたしあまり気にしていなかったけれど、未来のことを考えたらたしかに、また書き始めてもいいのかもしれない。面白いことに繋がりそうな気もする。ううん違う、こういうことを楽しんでいないと、面白いことはこないような気がする。

文章を書くこと、感情を揺さぶられることに出会いにいくこと、作品ともいえないような絵をかくこと、本を読むこと。
身体は動かさないけれど心を動かすことは大好きで、30才を迎えるまではそれらがわたしのほとんどを構成していた。ああなんて内向的!でもね、楽しかったね。なにをするにも不器用で頭の回転も遅くて、人当たりのよさだけが取り柄みたいな人間だったからたくさん落ち込んで、そのたびに様々な形の芸術に救われて。周囲に上手に助けを求められるようになったり、理解してくれる人と出会ったり、環境に恵まれたりして、救いを求めなくてもよくなったから積極的に芸術を求めることがなくなって、そして生活は健やかになった。
それから1年と少し、健やかさを維持するバランスはそう遠くない未来で崩れることがわかっていて、今度はその変化がぼんやりと不安になってきた。いつ訪れるかわからないけれど、訪れたその先にどうなっているのか、どうしたらいいかなと聞いてみたら、ヒントはもう自分でもってるんだって。

『大事にしてきたこと、自分のできることを、きちんと大切にして』

そっかあ。文章も話すことも写真を撮ることも伝えることも、またちょっとずつやってみたらいいかもしれないな。だって、それらを楽しんでいたときはいつも感情の向くままにいて、必要なときに必要なことが登場していたんだよね。仕事を変えてみたら意外と社会に馴染めたから、それはそれですごくいいなと思っていたけれど、馴染んだ社会でこの先がよくわからなくなったのなら大切にしていたことをまた大切にしてみるのもいいのかもしれない。そうこういっている間に不調のキーボードも復活して淀みなくタイピングが続くよ。(これはきっと一時的だけれど!)
そういえばこの間、最近撮った写真を先述の友達に見せたら「素直になったねー!!」というよくわからない反応をされた。本当によくわからないけれど、昔の作品を思い返すと心当たりも少しある。素直さについての言語化はすこぶるむずかしいけれど、おそらくかなりいい方向に変化したんだなと思う。なんとなく。写真、また始めたらたのしいことあるかな。

仕事から帰宅した夫に、占ってもらったことをさらっと話した。

「占いでね、自分のできることとかやりたいこと、大切なことを裏切らずにいたらいいっていわれた」
「それ俺ずっと言ってなかった?やりたいことやんなよ、エッセイとか書けばいいのにってずっといってた気がする。」
そういえば、そうでした。灯台下暗しであります。
おかげさまで、大切なことをもう一度大切にする第一歩、踏み出しました。



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