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古典と暗記

あけましておめでとうございます。
トップの写真はNDLデジタルコレクション蔵の新撰朗詠集。藤原基俊の選です。

お正月ですね。宿題で、百人一首を覚えなくてはいけないというお子さんあるいはご本人、いっぱいいると思います。
私は常日頃、日本文学や古典籍関係の仕事をしています。当然、古文書も扱いますし、くずし字もある程度は読むことができます。当然、古典(に限らず、物語や資料全般を読むこと)は楽しいと思っています。だから、たくさんの人に読んでほしいし、触れてほしい。
でーすーがー。
その暗記、本当に意味ありますか?

古典で使われている日本語と今の日本語って、同じ言葉でも意味が違ったりするんです。
たとえば「(いと)をかし/おかし」という言葉。枕草子なんかでよく出てきますから、知っている人も多いと思います。
現代では「おかし」は「おかしい:滑稽な、普通とは変わっている、変だ」とかいう意味で使われています。
古典では「趣がある」なんて意味だといわれてますが、「美しい、優れた、愛らしい、興味深い、面白い、おかしい」なんて言う意味で使われています。
古典を「現代語に訳す」とか言うでしょ?
同じ言葉でも意味が違ったりするからわざわざ「訳」が必要なんです。

それを、ただ暗記するだけで楽しめると思いますか?

レコ大で米津玄師作詞作曲の「パプリカ」が大賞をとりました(2019年の話ね)。
意味が分からなくてもなんとなーく歌っちゃってる園児とかいますよね。かわいいですね~。スーパーとかでパプリカがかかると小さい子が一斉に歌いだして、かわいいと同時にちょっと恐怖を感じたりするんですがさておき。
意味が分からず歌っても楽しめるのは、「パプリカ」が現代語で歌われているから、そしてそのリズムが現代的だからです。
生活に根付いたリズムと言葉なら、意味が分からずともある程度は楽しむことができます。
でも、古典って、そこまで生活に根付いてます?
根付いてほしいなと思ってますけどね…連歌とか楽しいですし。でも、現状根付いてません。悲しいほどに。
そんな根付いてないもの、異国の文化と同じです。それをいきなり覚えろったって無理。無茶。
どうせ百人一首を覚えさせるなら「百人一首っていう歌集がある。季節についての歌や、家族についての歌、恋の歌、友達の歌、いろんな歌がある。そのなかでひとつ(和歌は一首と数えるけれど)、好きな歌を選んでみよう。そして、どうしてその歌が良いと思ったのか、教えてください」とかやればいいのに。

和歌はEmotionです。
エモいとかいうじゃないですか。それですソレ。感覚なの。
「なんかいいな~」って思うことから始まるんです。
ちな、百人一首だと私、崇徳院の
瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ
が好きです。
語ると長くなるのでここでは割愛しますが…。崇徳院、保元の乱で負けて遠流され(ここに至る過程も紆余曲折あって…これも語ると長くなるので割愛します!かっつあい!)、死後は怨霊として祟ったとまでされる人です。
そんな崇徳院が詠んだ恋の歌ってだけでもう…キュンキュンきます!だから語ると長くなる!ので、かっつあい!

全部読むのかったるいと思うなら、好きなジャンルとか、好きな人物から選んでもいいんですよ。歴史上のあんな人物がこんな歌詠んでるんだ~。って感じるだけで十分だと思います。
必死になって意味も分からず丸暗記するより、お気に入りの一句を見つけたほうが楽しいと思いません?

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