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サウナピンチケとサウナスノッブ

 世は完全にサウナブームである。サウナバブルと言ってもいいかもしれない。10代~20代の若い愛好家や女性客は確実に増えているし、テレビや雑誌などのメディアでサウナ特集を目にする機会も多くなった。ジャニーズのアイドルや女性タレントたちがここぞとばかりにサウナ好きを公言している姿を見ると、いまや完全にサウナは市民権を獲得したのだと気づかされる。

 いやはや、昔では考えられないことだ。サウナに入り続けて20余年の私からすると、隔世の感がある。サウナに好んで入るような人種というのは、たとえば場外馬券場やホルモン焼きや場末のスナックが似合うような大人の男と相場が決まっていたからだ。

 もっと具体的に言うと、ボクシングの山根明元会長。真樹日佐夫先生。もしくはホストの愛田武会長。この3人が実際にサウナ好きかどうかは知らないが(←オイオイ!)、イメージとしてはそんな感じ。これでもまだわからないというなら、テコンドー・金原昇会長。周富徳&金萬福。城南電機・宮路年雄社長。金ピカ先生(佐藤忠志)。田中邦衛。菅原文太。成田三樹夫。衣笠幸男。江夏豊。……おおむね、そのあたりかな。政治家なら浜田幸一や麻生太郎。もちろん森喜朗もサウナが抜群に似合いますが(敬称略)。

 要するに全身から猛烈にオスの匂いを発するような昭和の男。サウナは、そういう人たちの社交場だったのである。青二才の20代だった私の目には、ドアを開くことすら躊躇する危険なオトナの人間交差点に映った。大袈裟と感じる人もいるかもしれないが、少なくてもガキがおいそれと触れてはいけないゾーンだという認識があったことは間違いない。

 そして時代は令和に変わり、サウナのカジュアル化は急速に進んでいる。サウナ好きの私にとっても、サウナ人口が増えるのは喜ばしいこと。しかし、である。サウナ施設で若いサウナーたちがキャッキャとはしゃぐ姿を見ると、なにか釈然としない気持ちがこみ上げるのも事実。ちなみに私は若いサウナーを「サウナピンチケ」と呼んでいるのだが、古参の老害アイドルヲタがピンチケをウザがる心境と酷似しているという自覚はある。

 では、なぜサウナピンチケがウザいのか? サウナピンチケは往々にして「サウナスノッブ」に陥りがちだからである。

 ご存知のように昨今のサウナブームは『サ道』(著・タナカカツキ)とそのドラマによって引き起こされたものだ。名作だと私も思う。だが、作品に感化されたサウナピンチケが訳知り顔で「ととのったー」とか言ってるのを聞くと、「ケッ!」と思う。『サ道』の中で推奨されている「サウナ」→「水風呂」→「外気浴」という流れを愚直に守り抜き、どこかのネット記事とかで仕入れた能書き(水風呂の温度など)を自慢気に語る様子は見てられない。まるでワインやジャズを語るようにサウナを論じられると、マジで鼻持ちならないのだ。私が軽蔑するラヲタと同じ系統というか。

 サウナが市民権を得たのは結構だが、果たしてこれが本当に私の望んでいた未来だったのか? 苦渋の表情を浮かべながら今日もサウナに入る。

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