見出し画像

成城石井の白ワイン~幼少期のエモい記憶を添えて~


猫様が今日もご飯が出る機械の前でじっと座っている。前足をきっちりそろえて姿勢よく座り、挑戦的な目つきだけこちらに寄越してくる。今日は雨だから、ご機嫌斜めだね。

半分向き合う形で彼女を見つめていたら10分経ったことに時計を見て気付いて、萎えた。今日は時間が経つのが早い。

昨日遅くまで仕事をしていたせいでアドレナリンが脳からの放出をやめてくれず寝つきが最悪で、寝たり起きたりを繰り返してまともに寝れなかった。
生理3日目でお腹は痛いし、雨だし、寝不足で頭の回転は遅いし、顔は浮腫んでて盛れないし
そういう日に限って結構大事な外出が入ってしまってるんですよね。
朝から3時間運転したのち、午後はヒールで都内を闊歩して何件か用事を済ませていたらもうすっかり辺りは暗くなっていて、同僚と笑顔で別れたものの帰りの電車の中は奇声を上げたい衝動を抑えるのに必死だった。

今日は割と大仕事で、昨日の残業は今日の為だったのだけど
打ち合わせは無事終わったどころか花丸に近い結果だったのに
コンディションの悪さとその他の仕事が滞っていることから爽快感はゼロどころかマイナス。帰宅ラッシュの混みあった電車内に立ちこめる湿気と人の臭いで更に気分が悪くなったところで最寄り駅に着いた。
気付いたら最寄りの成城石井でお気に入りのバジルのパスタサラダと白ワインをひっつかんでました。
お疲れ、私。
まだ今日が木曜だという事実をぶん殴りたい。

とはいえ。本日も美人な猫様を眺めて白ワインを2杯分ほど流し込んだら、まあ今日も良い一日だったのかもと思い直せるほどには私は楽天的というか都合の良い解釈が得意で、こういう時本当に両親に感謝しますね。
大抵のことって基本的になるようになるし、毎日が完璧な訳じゃない。
細かいことは気にせず、今日を共に頑張ってくれた人たちに感謝をして、白ワインと一緒に負の感情達は体内に流し込んで排泄して寝るのが吉です。

私の両親は九州の田舎育ちで、父は2人姉弟の2番目、母は3人姉弟の真ん中に生まれた。
2人とも同じ小さな地元で一番優秀な高校を出たものの、父は祖父母の反対があって大学での上京が叶わず地元の大学に進学、母は「2番目の女だから」という理由で大学進学を許して貰えなかった。
学年が違ったから高校で出会うことはなく、しばらくしてから2人はお見合で結婚したわけなんだけど、2人には共通項があり
それは「自分の子どもに好きなことをさせてあげたい」ということだった。

私には2つ上の姉がいて、とても頭が良い。成績という意味でもそうだけど、「自分が求めていることを理解してそれを得るために辛抱強く努力する大事さを知っている」方の頭の良さ。smartよりwise寄りの頭の良さ。
携帯電話が出始めた頃姉はまだ小学生で、どうしても欲しいと両親にせがんで買って貰い、電話する相手もいないのに一日中嬉しそうに触っていたのをよく覚えてる。
「ケータイを作る」という目標を一度も曲げることなく、その後新卒で日本を代表する通信会社に入社した。社会人になってから良くない上司にあたって体調を崩したりもしていたけど、転職してキャリアもしっかり築きながら、これ以上ない素敵な旦那と数カ月後に生まれる子どもの話を嬉しそうにしてくれる。

一方私は小さい頃から一度言ったら聞かない、平成生まれの癖に昭和のオヤジ張りに頑固な娘で、変わり者だった。
今自分が持ってる最古の記憶は、幼稚園で皆でお絵描きか何かしていた時に「なんでお絵描きしたくないのにしなきゃいけないんだろう」と思ったこと。我ながら変わってる。
両親は手を焼きながらありのままの私を否定することなく友人のように接してくれたので、中学生くらいまで私は微妙に周りから浮きつつも特に辛かった記憶もなく、その後対人能力を身に着けて友人にも恵まれ今日まで楽しく毎日を過ごしてきた。
今思うと、両親から「これをやれ」「あれはやるな」と指図をされた記憶がほとんどない。一番きつく言われて「xxしたら自分が後から大変だよ!!」くらい。
多分指図したところで、聞くはずもないとはなから諦めていたんだろうけど。

高校生の頃、どうしても行きたい大学があり毎日狂ったように勉強していた時に「そんなに頑張らなくて良いよ、気晴らしに一緒に遊びに行こうよ」と母は言い
大学生の頃、留学先をどこにすべきか悩んでいた時に「鉛筆を転がして決めたら良いよ、多分どこでも頑張るだろうから」と父は言い
お風呂が嫌いで、お風呂を好きになる理由を探していた私に「頭を使う前にさっさと入ればいいんだよ、洗えば良いだけなんだから」と姉は言った。

今日みたいにストレスをためてしまった日。頑張っても上手くいかず、私空回りしてるやんとアホらしく感じてしまう日。あらゆることに気を巡らせているうちに、一周回って全てがどうでもよくなってしまう日。
何でも根詰めてやりすぎたり考えすぎて周りが見えなくなる私に、家族がふとした時にかけてくれた言葉を思い出します。

各々違う観点からだけど、「力を抜く」ことの大事さを今でも教えて貰ってる気分。

今年、30になるんですけどね。
白ワインが1本空きました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?