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頑張ったから伸びてほしいよ!(絵)

8月の初頭にGtC塗りという塗り方を知った。詳しくはYoutubeで検索してもらえばと思う。

私は色塗りが苦手だ。ラフや下書き、線画、加工の工程に比べて、単調でつまらないから。

ラフと下書きは絵の方向性を決める”アイディア”を詰めていく作業なので、どんな絵にしようかワクワクしながらペンを走らせることができる。
線画は「きれいな線を引く」という”ゴール”があるので、努力できる。
加工はオーバーレイ1枚重ねるだけで絵の雰囲気がガラッと変わるのでとても楽しい。
色塗りは……そもそも選択肢が多すぎて迷子になってしまう。アニメ塗り、厚塗り、水彩風、ギャルゲ塗り、グリザイユ画法、バケツ塗り、モノクロ……。
ぱっと思いつくだけでこれだけ塗り方が頭に浮かぶ。
この中から今回描いている絵に合いそうな塗りはどれかな?と悩む時間が一番しんどい。

チル仁王

見てもらえばわかるだろうが、結構線をしっかり描いてしまうタイプなので、どれでも良さそうでどれも似合わないような気分になってしまう。

もう十何年そんな感じだったのだが、GtC塗りと出会って塗りが楽しくなった。
GtC塗りは簡単に言うとグリザイユ画法のようにグレーで濃淡をつけた上から乗算で固有色を置き、オーバーレイで明度・彩度を調整していく塗り方である。
最後にレイヤー全体を統合して細かく加筆修正をしていくのだが、この加筆修正が私にはちょうどよい面倒臭さなのである。

例えば、厚塗りだと線画の上からずっとゴリゴリゴリゴリ色を塗り重ねていかねばならぬ。
(私の知っている)グリザイユ画法だと、グレーで塗り込んだあとはグラデーションマップで一気に色を乗せる。これが最初のうちはうまく行かないのだ。色がくすんだり、白飛びしたり、全体的に深みのないのぺっとした仕上がりになってしまった。

白石夏影

見様見真似で初めてGtC塗りで描いた絵である。ボタンが適当になってしまったが、個人的には顔と髪の描き込みを頑張った。

白石夏影2

初めてだったこともあり、目元は少し滲んだようになってしまったが、頬の輪郭や鼻筋、目のハイライト、髪の流れにかなりの時間を割いた。

さて、ここでタイトルを回収しようと思う。
GtC塗りは「色塗りってこんなに楽しかったんだ!」と目の覚めるような気持ちになった塗りだったし、自分の理想の色も表現できた。
とてもいい絵が描けたのではないか!?とかなり興奮したし、きっと飛ぶようにいいねがもらえるぞ!と期待しまくっていた。
この絵の前の絵が想像の半分くらいの反応で悲しかったので、普段つけないタグをつけて下駄を履かせて投稿したのだが、結果は目標の3桁いいねには届かなかった。
ここで少しダメージを食らうが、たまたまだろうと次の絵もGtC塗りで頑張ってみた。

サマバレケンヤ

がんばったやつ。これはイベント時にタグ付きで投稿したが、一つ前の絵より反応が少なくて悲しかった。
描けないながら向日葵も背景も手描きしたのに。
このあたりで「真剣に描いたものより適当に描いたものの方が反応がいいSNSの謎」を思い出した。
これ本当に謎なのだが、なんでSNSユーザーは頑張って描いた絵をスルーしがちなの…?しかし、この絵はpixivでも反応の伸びがそんなに良くないので、なにかどこか刺さらなかったのだろう。つらたん。

ひまわり畑

しかし、私だって諦めたくない。GtC塗り3枚目である。
ひまわり畑でふっと消えてしまいそうな雰囲気を目指して描いてみた。
1枚目2枚目が明るい雰囲気だったので、画面は明るいが、キャラクターは逆光にして少しダークで儚い雰囲気になるようにした。わかりにくいが、色収差で夏のギラギラした光も表現してみたつもりだ。
そしてこの絵は2枚目よりいいねが5少ない。
GtC塗りに慣れてクオリティも上がってきたと思うにつれいいねは減っていくこの残酷な現実……。

はかきょ

GtC塗り4枚目。まだまだ工夫が足りないのだと、吹き出しをつけて会話しているシチュエーションをわかりやすくしたり、画面の情報量を増やすべくカラフルなスプラッシュを乗せてみたりした。
これまではどこか写真に撮ったような”静止画”的イラストだったが、今回は漫画の中の1コマを意識して描いてみた。
まぁしかし、この絵も3枚目より10ちょっといいねが少ない。
描けば描くほど反応が減る。私の絵柄にこの塗りが合わなかったのか、そもそも界隈でウケる絵柄、雰囲気ではないのか。

赤也とブン太

もうどうにでもな~れ☆と、以前の自分でももう少し線画をブラッシュアップするわ、という落書きを出してみた。
一応、下書き→清書→色塗りという工程は踏んでいるが、ただただわちゃわちゃしている元気な少年を最低限の労力で描きたかっただけだった。
これが80近くもいいねをもらえているのが謎である。
GtC塗り4枚目の倍くらい反応が多かった。
本当に意味がわからない。こんな30分もあれば描けそうな絵が……なぜ……。

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謎の伸びを見せた落書きの次に、実験的に絵柄と雰囲気を少女漫画に寄せた絵を出してみた。
固有色のベタ塗りの上に赤寄りのグレー一色で適当に影を付け、適当な線で影の縁取りをしたくらいの手抜きイラストである。
手抜き感を緩和させるために、キャラの上にグラデーションマップをスクリーンで薄く乗せ、全体になんか良さげなテクスチャをかけて画面の情報量を調整してある。
さて、こちらの絵はGtC塗り3枚目と同じくらいの反応量であった。


頑張り量で言えば、圧倒的にGtC塗りの方が時間も労力もかかっている。「絵」としてのクオリティが高いのも、技術が高いのも、GtC塗りの方が圧勝だ。
しかし、実際にウケたのは適当な線画に適当な塗りの落書きである。高く掲げた拳も、ろくに資料を確認していないのでありえない方向を向いている。
ベタ塗りに1影のみの少女漫画チックな絵も、労力の割に伸びが良い。

絵を描く人間として、私は長いことクオリティの高さと「絵」としての完成度の高さを求めてきた。
わかりやすく例えると、キュビズムや抽象画よりフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」やジャン・オノレ・フラゴナールの「ぶらんこ」などが好きである。

ウケる表現と目指すものの乖離はなかなかにしんどい現実を突きつけてくる。
音楽もアニメも漫画も、最近の流行りはトゲトゲしていて趣味じゃないことも、上手にウケる方向にシフトチェンジできない一因である。
どんどん置いていかれてしまうなぁ。

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