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過去の自分を振り返る

「昔話でもしてみよう」

そんな気持ちになった令和2度目の梅雨の時期。

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ブログを綴るにあたり、基本的には「自己紹介の記事を書いた方が良い」とされているが、全ツッパで無視し続けていた。

過去を振り返るのが嫌いな訳でもないし、酔ったら昔話ばかりする僕ですが、ブログ記事にしても需要あるか?みたいに思えて。

まぁ、たまには良いじゃないか・・と筆を進めてみる。というか、タイピングを進めてみる。

若き酔いどれ

僕が料理人を目指したのは、高校1年生の時。

「料理を作れる男子ってカッコよくね?」くらいの軽い気持ちだった・・はず。

夏休みや春休みという長期休暇には、実家の旅館の調理場でバイトをさせてもらっていた。

包丁が使える事がとにかく嬉しくて、当時勤めていた板前さんが大根の千切りなどを教えてくれた。

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高校生の僕としては、「みんなの役に立っている」と思っていたが、今振り返ると当時の板前さんは大変だっただろうなぁ・・って。

・社長の息子
・高校生
・仕事は何も出来ない
・大型連休の時だけのバイト
・何か仕事を与えないと
・単純作業だけじゃなく包丁仕事も

と、正に「使いづらいバイト」の代名詞だ。そんな奴来たらさ、裏でめっちゃ悪口言うよね。

「マジで社長勘弁してくれよなぁ~。あんなガキどうしたら良いんだっつーの」って。

かくいう高校生の僕は、「使えないバイト」などとは微塵も思っておらず、大人の世界に足を突っ込めた快感に酔いしれていた。

若いが故に、自分に酔う。

「板前になろう」

そうちゃんと決意したのは、高校2年生の頃。

何も出来ない自分が、よくそう決意したなぁ・・と振り返れば。

「目の前に当時の僕がいるなら、もっとよく考えろよ。大丈夫か?」

と聞いてしまうだろう様な楽観的な答えだった。

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大学で経営を学んで、専門学校で栄養士を学んだ。

あまりにも長い回り道だが、”将来は、旅館を経営をするのに「経営学」が必要で、隣が病院だから栄養に特化した料理が作れたら完璧やん” などと、アホな脳みそで弾き出したアホな答えを風聴していた。

振り返ると、エビデンスなど一つもなく、そんな答えを出す自分に酔っていたのだと思う。

やはり、若い人は自分に酔う。しかも泥酔だ。

24歳 臆病者

ようやくプロの板前の世界へ進んだ時、既に24歳だった。

実家の旅館の料理長に、東京で有名な板前さんのお店を紹介してもらった。

つまり「コネ」。混じりっけのないほど純度の高い「コネクション」を使った。

否定されるのが怖かった

何も無い自分を。何も出来ない自分を。

臆病だから人の力を借りた。「人様のコネ」という一番手軽な方法で。

24歳。

世間的にはまだ若いが、16歳から修行を始めた人も多くいる板前の世界なら「中堅」の年齢である。

ズタズタの自尊心

アルバイト時代には、

「はなさんの作る賄いが最高」
「やっぱ焼き鳥を一番上手く焼くな」

とか言われてた。

そして、そうやって言われている自分が好きだった。

狭い世界で、ちっぽけな自尊心を温めていた。

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いざ、”ホンモノ”のプロの世界に入ると・・・何も出来なかった。

毎日の様に怒鳴られ、怒られ、出来ない自分に苛立ち、悔しんだ。しんどいくらいに無力だった。

温めていたちっぽけな自尊心は、すっかり冷え切っていた。

「辞めようかな・・」と、毎日の様に考え、休日は現実を逃避する様に朝から晩まで眠った。

それでも辞めなかったのは、「人様のコネ」で入社したから。

1年も経たずに「辞めます」などとは、口が裂けても言えなかった。

・紹介してくれた板前さん
・紹介されて会社で根回ししてくれた当時の親方

辞めると言えば、少なくとも確実にこの2人の顔に泥を塗る。

「…最低でも1年は頑張ろう」と思えたのは、むしろ良かった事かもしれない。

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辞めようと思っていた1年後、ようやくチームの歯車の一員となっていた自分がいた。

仕事が楽しくなってきたのは、このあたりから。

好んで料理本を買う様になり、賄いで色々試したりもした。

自分の賄いがお店のランチメニューになったり、仕事の幅が広がって、後輩の育成を任されたりも。

少しづつ認めてもらえ、自信がつき、仕事が更に楽しくなる・・と言う好循環。

「辞めなくて良かった」と、その時心から思えた。

修行初期の頃には、絶対に思えなかった感情だったので、そんな感情が湧き上がった自分に正直びっくりした。

「自由である事」と「自分勝手」

・「やりたく無い事はやらない方が良い」
・「仕事なんてすぐに辞めたって良い」

そんな風潮が流れる現在。

確かに、僕も上記の意見には賛成です。

でもそれは、少なくとも”自分の力で掴んだ仕事のみ”に適用される事だと思う。

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コネで入ってきたのなら、紹介してくれた人・尽力してくれた人の顔に、泥を塗る様な真似は出来無い。

誰かの力を借りたのなら、最低でもその人の温情に報いないとね。

自分一人だけで責任なんて取れないんだよ。

「辞めて責任取ります」ってよく聞くけど、あなたが辞める事で何の責任が取れるのだろう?

よく考えてみてね・・・うん、取れないよね。”給与全額返上する”くらいじゃないと。

そんな事は不可能だし。

後戻りする人生は送りたくない

臆病だから人の力を借りたくなる。かつての僕がそうだった。

何も無い自分、何もできない自分を、否定されるのが怖かった。

でもね、「辞められない」という呪縛のお陰で、プロの世界が”楽しい”と思えるまで成長できた。僕はね。

全員に当てはまる事じゃ無いとは思うけど、続ける事で見える世界もあるのかな、とも思う。

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継続してる人は強いよ。本当に強い。

というか、継続している人で失敗している人を見た事がない。

バイト時代、就職して一度社会に出て、しばらくするとバイトに戻ってくる先輩が何人もいた。

言葉を濁さずに言うと、「戻ってきた」ではなく「逃げてきた」。

だって、自分をアップデートする為に出たのに、辞めて帰ってきたのだから。

帰ってきた場所に「進化」は無い。断言する。

誰だって、ぬるま湯に浸かっていたいもんな。気持ち良いもんね、ぬるま湯って。自尊心を温めるにはピッタリだよ。

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若い時なんて、誰しもが「何者でも無い」。

ただ、当の本人は「自分は特別だ」と信じている。”周りが自分の為にどれだけやってくれているか”を置き去りにして。

成長する為に一生懸命考えてくれて
楽しくなる様に試行錯誤してくれて
間違った方向に行くなら怒ってくれて

僕も当時は見えなかった、先輩のそんな気持ちを。

独りよがりの感情をばら撒いていた。恥ずかしいほどに。

継続する事って、別に「悪」じゃないと思う。

もちろん、ただただ継続しているだけじゃダメ。考えながらアップデートしないとダメだけど。

新たな世界が見えるまで続けてみるのも良いのでは?って思うんです。

今”必要とない”と思っている仕事も、”やって良かった”と思える時が来るかもしれない。結局は自分次第なのだから。

そんな事を思った梅雨のひと時。

”後戻りする人生”だけは送りたくないよね。前を向いて頑張ろ。


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