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面接で応募者の能力は見抜けるか?

面接は応募者の選抜において最もポピュラーな方法である。

ところが最近、面接って意味があるのか?と思うようになった。このきっかけについては後日書くとして、面接についてわかっていることを整理してみたい。

面接には2種類ある

面接はその進め方によって、構造化面接と非構造化面接に分けられる。構造化面接は質問内容や評価方法をあらかじめ設定しておき、誰が面接官になっても決められた通りに進め、決められたとおりに評価するような面接である。一方、非構造化面接とは、(大抵の場合、質問の大枠は決まっているものの)細かい進行までは決められておらず、その場の話の流れを踏まえて面接官の判断で進めていくような面接を言う。

構造化面接の方がパフォーマンスを予測できる

構造化面接は、面接者による評価がばらつきにくく、応募者のパフォーマンスを予測する精度が高いことがわかっている。というより、非構造化面接の予測精度が低い。構造化面接の妥当性係数(予測力)は0.51で、非構造化面接は0.31である。(『採用学』より)

Google社も構造化面接を採用している。

しかし、皆さんにとってなじみ深いのは非構造化面接の方ではないだろうか。実際、非構造化面接の方がまだまだ一般的な面接である。この理由について、Googleの上記サイトでは次のように書かれている。

では、構造化面接の質問を使う組織があまり多くないのはなぜでしょうか。実は、質問を作成するのが難しいのです。構造化面接の質問は、記述してテストする必要があります。また、面接担当者が他の質問をしないように指導する必要もあります。さらに、同じ質問が何度も出されると予想した応募者同士が、情報を交換してすべての回答を用意してこないように、質問を絶えず更新する必要があります。別の調査によると、構造化面接があまり頻繁に用いられていないのは、一般に面接担当者は皆自分の面接が上手いと思っていて、助けなど要らないと感じているからだということがわかっています。

ここに書かれているように、構造化面接をするにはかなりのコストがかかる。苦労して質問と評価を設計できたとしても、人を見る目に自信のある役職者に「これ以外の質問はしないでください。評価はこの表に従って機械的に行ってください」と言う難しさは理解してもらえることだろう。

構造化面接の落とし穴

実は私も面接を構造化したいと強く思いながら、在職中に実現させることができなかった人間である。構造化面接を入れてさえいれば……といまだに考えてしまう。

ところがどっこい、おもしろい論文を見つけた。

構造化面接を導入しているソフトウェア開発会社1社について、その面接評価を検証した論文である。この企業では最終面接を2人の面接官が担当し、1「社会人の態度」,2「対人関係力」,3「性格の適合度」,4「誠実さ」,5「業績創出可能性」の5つの要素を評定する。

構造化面接の効果を考えると、本来面接官による評価のバラつきは小さくなるはずである。ところが、この企業の事例では、項目によっては面接官間にかなりのバラつきが認められた。特に「業績創出可能性」では異なる面接者で全く評定が一致していないという。

採用選考面接の面接者は,構造化面接法に基づいて各要素の内容とそれに応じた質問内容が予め付与されているが,実際は各要素の内容に基づいた評定を行っているというよりも,それとはほぼ無関係に評定を行っている可能性が示された。

なかなかショッキングな示唆である。

面接項目や質問内容、評定について定量的に検証をし、面接官に対してもトレーニングをしなければ面接精度は上がらない。当然のことではあるが、実際やるとなるとかなりきつい。地味な(短期的に成果が見えにくい)割に大改革である。やった方がいいのはわかってるけど、そこまでやる余裕ないっすわ、が人事担当者の本音ではなかろうか。

面接でジャッジすることをあきらめる?

たった1社の事例であるものの、中途半端な構造化面接では意味がないというのは腑に落ちる結果である。とはいえガチガチの構造化面接をつくるパワーもない。

ではどうしたらよいのか。

面接で「ジャッジ」することをあきらめたらどうか、というのが私の提案だ。

採用活動には「ジャッジ」と「フォロー」がある。応募者を見極めるのがジャッジで、引き付けて志望度を高めるのがフォローである。

「面接=ジャッジ」が一般的な認識だが、これを「面接=フォロー&相互理解」に改めてみてはどうか。フォローの場合、面接ではなく面談というワードを使う方が適切かもしれない。どうせ妥当性の高いジャッジができないのであれば、フォローに振り切ったらいいじゃないか。ジャッジはSPIや適性検査などで行えばいい。

ラジカルすぎるだろうか?だが私は本気である。

最近は動画による選考も増えてきている。であれば生で行う面接は、生でやる価値のあるものでなければ意味がない。その意味でも、面接を中途半端な質問とジャッジを行う場にするのではなく、相互理解のための場にしてしまった方がいいのではないか。

「面接はありません」と打ち出すのもブランディングに繋がりそうだ。

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ということで今回は構造化面接のメリットと難しさを整理してみた。採用(求職)活動における情報の非対称性を何とかしなければという思いもあるので、今後ははもんとして企業と応募者の相互理解に使えるツールを開発してみたい。

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(どみの)

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