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枚方と京阪帝国

久しぶりに枚方に行く。用事があったわけではない。ふだんとちょっと景色を変えて、街のフィールドワークをしてみたくなったのだ。

三条から京阪で向かう。30分ほどで着く。枚方市駅は木目のフロアになっていて穏やかな気持ちになる。改札を出ると惣菜屋やパンの出店、無印良品があり、お腹も空いていたのでメロンパンを一個買った。

駅を出ると、東側にひときわ高いビルが聳え立っている。前来たときはなかったが、周囲に高いビルがない分、存在感は抜群だ。

ビルは、枚方駅再開発の一環として、商業施設、オフィス、住宅、ホテルが一体になった複合施設「ステーションヒル枚方」という名前で年内に開業する予定のようだ(ちなみに、ホテルはカンデオホテルズがやるらしい)。

最近は、こういう多機能複合系のプロジェクトが多い。先日読んだある商業系の雑誌でも、店舗の拡大より既存店舗の活性化に注力し、マンションやオフィスを抱き合わせた「商住一体型」の取り組みを進めるイオンモールが紹介されていた。もともとショッピングモールは複合的な商業施設そのものなのだが、近年は、いよいよ生活者の時間消費的な動線まで複合して、包摂を完成させる段階に入ったかのようだ。まあ、逆にいうと、ショッピングモール単体では、もはやあまり消費者にとってアピールしない「対象」へと風化した、ということでもあるのかもしれないが。

無印良品で吊り革アート?

閑話休題。京阪神地域では、鉄道は阪急が強く、絶対的なブランドを確立しているが、京阪も実はなかなか侮れない。四条河原町の一等地、高島屋南の一角は「グッドネイチャーステーション」として京阪が開発したし、いまや高級住宅街となった松井山手も、全面的に京阪が関与している。フレスコのパクリ?みたいなフレストというスーパーも京阪系列であり、枚方から松井山手一帯を中心に展開している。松井山手と京都駅を結ぶバスも京阪バスだし、さらに松井山手は、将来、北陸新幹線の京都ー新大阪間の経由駅となることが決まっている。

その点、対照的に、阪急の存在感はむしろ弱まっている印象すら受ける。阪急うめだ本店は全国第二位の売り上げを誇るものの、四条河原町の阪急百貨店は2010年に撤退しているし、京阪の枚方に対し阪急の高槻は、あまり勢いがないようにみえる(良い街だが)。電車に関していえば、個人的には阪急のあの発着音は大好きなのだが、実際の乗り心地でいうと、京阪の方が優雅な感じがするし、車窓も区切りがなくパノラミックだ。赤のダブルデッカーは特にテンションが上がる。

あえて単純に図式化していえば、阪急は百貨店的であり、京阪はモール的である。ヴィトン・ロレックス的阪急に対して、ユニクロ・無印的京阪という か。枚方・樟葉・松井山手は今後も「京阪帝国化」が進んでいく。「通勤に便利で、京都にもすぐ行ける」という条件で、この京阪帝国は、居住選択肢としても今後ますます強力になっていくのだろう。

ビル地下。「一揆」が全国チェーンなのは初めて知った

そんなわけで、駅を出て枚方T-SITEに向かう。枚方はツタヤ発祥の地である。地下のライフ(スーパー)に行き、京都のいつも行っているライフとの比較をしてみる。

まず、エスカレーターを降りると、いきなり弁当・惣菜コーナーが目に飛び込んでくる。ここは明確な違いだ。普通のスーパーは動線の終盤に登場してくることが多いが、枚方のライフでは最初から弁当・惣菜である。仕事帰り、自炊する力も残っていないサラリーマン(ウーマン)をターゲットにしているのだろう。中身もたんぱく質に富んだボリューム感のあるものが多い。のっけから、労働者の胃袋を掴むことに特化した、いつもとは違うライフの姿に新鮮な驚きを覚える。

そういう目で見ると、全部そんなふうに見えてもしまう。アルミ即席鍋のサイズも京都より大きいし、揚げかまぼこの種類も一段と豊富である。「都心通勤ホワイトカラー労働者のためのスーパー」という見立てがしっくりきそうだ。

冷凍食品は意外と少ない。スペースの関係からか、棚は高めに設定されている。続いて精肉コーナー。京都と比べると豚肉の品揃えがいい気がするが、これがむしろ普通で、京都が異常なのだろう。牛肉と鶏肉を贔屓にして豚は閑古にする京都の食文化を、ライフはしっかりリサーチしている。

三階の蔦屋書店併設のスタバで少し仕事をする。このT-SITEは、なんだか梅田のルクアを10分の1くらいにして再現したみたいだな、と思う。梅田と枚方で、ルクア的感性が地続きしている。梅田で仕事をして、ルクアのバルチカで一杯飲んで、電車を乗り継いで枚方に到着し、ライフで惣菜を買い、蔦屋書店でそれっぽく自己啓発書を買って、家に帰る。洗練された(美化された?)都会のライフスタイルである。東京はさらにその規模と密度で大阪を上回り、パターンや組み合わせも豊富なのだろう。21世紀ですなあ。

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