きりんのつの

『きりんのつの』 作 すがの公

 昔、シェルターだった地下室。

 部屋の一角に消毒室の小部屋がある。
 小窓から中が少し見えて、消毒部屋の奥には下へおりる階段がある。
 地下2階の実験室と、地下1階のこの部屋を伝声管が通っている。

 実験で使われる薬品のビンに花が一輪さしてある。
 花屋でわざわざ買うような花ではない。

 美しい細胞分裂の絵が壁にかざられている。
 子供が描いたような動物の絵が額にかざられている。
 バイオハザード感染マークのようなシールが貼ってある。
 (放射能マークのような、リサイクルマークのような)

00■博士

 博士らしき白髪の老人が考え事をしている。
 不思議にカラフルに汚れた白衣。
 コーヒーサイフォンがある。
 たまに「子供が足下を通る」のを眺めるような視線。
 にっこりとほほえみ、通り過ぎるのを待つ。
 たえずぶつぶつ口元を動かしている。
 ときおり、なんだか困った顔になり、
 しばしの間放心したかと思えば、
 なにかのきっかけで突然ふりむいて、
 口のモゴモゴといった異音を発している。
 何かを思いつき、急いで滅菌部屋に入る。

 舞台上には誰もいなくなる。

 実験室の方だけに照明がつく。

 不思議な音がする。
 ポワンポンポワンポンポワンポン
 (実は、細胞が分裂する音です)

 じょじょに暗くなる。

01■秘書と社長

 少し、時間がたつ。
 違う花になっている。
 秘書がその花を見ている。

 しばし、人間の幸せについて考えながらその花を見てる。

秘書「やっぱ女は結婚よね」

 またしばし、夢のような気持ちでその花を見つめている。

秘書「どう?私、どう?イケてる?」

 が、いきなり、そのへんに生えている雑草ときづく。

秘書「無視か。雑草のくせに」

 床に叩き付けようとすると誰かが階段を降りてくる気配を感じる

秘書「地上からヒト!」

 秘書、身だしなみを整える。
 何かを期待して待ちかまえる。
 社長が入ってくる。
 秘書、すごく見つめている。

社長「階段の上のオートロック、あれ機能するのか」
秘書「(ジッ)」
社長「怪しいから点検させてくれ」
秘書「(ジッ)」

 何かにぶつかりそうになる社長

社長「?」

 誰でも気づくような状態で、紙が麻紐で吊ってある。
 社長、避ける

秘書「あ!(避けた!)」
社長「え?」

 秘書、気分が沈む

秘書「あーあ」
社長「へ?」
秘書「、、社長」
社長「え?ああ。なにか問題?」
秘書「ここの所長に渡すように言われた書類の件なんですが」
社長「ああ同意書ね」
秘書「はい」
社長「サイン貰ったら戻してくれたらいいよ」
秘書「ええ」
社長「うん」
秘書「それはわかってるんですが」
社長「あ、サインしない?あいつら」
秘書「はい」
社長「(舌打ち)ミミズのやつらは、自分の研究にしか興味をしめさないからな」
秘書「というか」
社長「うん」
秘書「あそこにあります(吊ってあるやつ)」
社長「ん?」
秘書「それです」
社長「え、これ?」

 よくみるとB5用紙を2、3枚、クリップで閉じた書類だった。

社長「あー」
秘書「気づきませんでした?」
社長「じゃまだなぁと思ったよ」
秘書「同意書です。気づきませんでした?」
社長「それは気づかなかったな」
秘書「そうですか」
社長「結構重要な書類なんだよこれ。なんの真似だコレ」

 秘書、落ち着いて

秘書「吊ったの私です」
社長「え?」
秘書「私です」
社長「吊ったの?」
秘書「吊ったの私です」
社長「あ、、、そうなんだ」
秘書「イライラしちゃって」
社長「、、?」
秘書「吊っちゃって」
社長「、、」
秘書「(指をさす)」

 しばらく、二人同意書を眺める

秘書「(ためいき)」

 しばらく、二人同意書を眺める

社長「どうして吊った?」
秘書「、、、、、」

 秘書、右手でメガネをあげ、左手の甲で目を拭う

社長「何があった?」

 秘書、答えない。

社長「、、、、、、、」
秘書「ヘっへっへっへっへ」

 秘書、突然、へっへっへと社長の目を見る。驚愕する社長

社長「(驚愕)」
秘書「ヘっへっへっへっへ」
社長「大丈夫か、君?」
秘書「だってやんなっちゃって」
社長「サインしてくれないから?」
秘書「イライラしちゃって」
社長「それで」
秘書「吊っちゃって」
社長「どうして?」

 秘書、右手でメガネをあげ、左手の甲で目を拭う

社長「泣いてるのか?」
秘書「ヘっへっへっへっへ」
社長「少し整理しないか」
秘書「大丈夫です!」
社長「そうかなぁ」
秘書「私が社長の秘書になってもうどのくらい!かれこれどのくらい経ちますか!」
社長「2年?3年?」
秘書「半年です!」
社長「なんだそんなもんか」
秘書「一生懸命!一生懸命!わたし!一生懸命!」
社長「うん君はよくやってくれてるよ」
秘書「書類も渡せない!」
社長「落ち着け」
秘書「ちっとも見てもらえない!私は役たたずです」
社長「え?見せてもいないの?」
秘書「生きている価値がないミミズ以下」
社長「なに言ってるんだ」
秘書「もう私生き物やめます」
社長「書類渡せないくらいでなんだ!」
秘書「カラスに喰われて旅に出ます」
社長「どうしちまったんだ!」
秘書「私はフン。鳥のフン」
社長「冷静沈着な君はどこに行った?」
秘書「へっへっへ」
社長「外の空気を吸ってきなさい。三分したら戻っておいで」
秘書「ワッ!(と泣きながら)たった三分!まるで即席麺!」
社長「じゃ5分!落ち着いたら戻っておいで!」
秘書「よっぱらっちらっちらい(ふらふら)」
社長「ほら、早く。行って!」
秘書「(ゾンビ)ううー。うううー。ううー。あああ」

 秘書、よくわからない状態でいなくなる。

社長「なにが起こった?」

 細胞分裂音。ポワンポンポワンポンポワンポン

社長「なんだ、この音」

 深呼吸する。

社長「あー、どうしちゃったんだろうあいつ」

 小さな貼り紙をみつける

社長「地下二階研究室にて『嬉し悲しガスMORE』実験中。モア?あいつらまた余計な研究してるな」

 社長、ぼんやりする。

社長「五分って長いな」

 きりんの絵を見る

社長「きりんって、つのある。なんでだろ」

 じっと見る

社長「へっへっへっへっへ」

 効いた

社長「なんでだ?もっと、ギモンに思えてきた。
 あいつも。より、どうしちゃったんだろうあいつ
 へっへっへっへっへ
 ?どうしちゃったんだろう俺。
 あれ?より、どうしちゃったんだろう俺。」

 気づいた。

社長「!」

 社長、事態にきづき、ハンカチを取り出し、口を覆う。
 伝声管から研究室へ話す。

社長「おい!地下2階!研究室!聞こえてるか?漏れてる!
 地下1階を換気!そして、滅菌しろ!私が出たらすぐにだ。」

 社長、急いで出ようとするが、
 思い直し、野花を持って地上へと逃げる。
 
 アラートが聞こえる。
 警報ブーッ・ブーッ・ブーッ・ブーッ
 レッドランプが点灯し、
 部屋中が真っ赤に染まる
 
 プッシュウウウウウウウウウ
 滅菌される音

02■ガスマスクのオープニング

 音楽の中、ガスマスクをつけた奴らがうじゃうじゃと舞台に集まってきて、場面転換を行う。
 しだいに動きがそろったりして『きりんのつの』が始まる。
 ガスマスクをとり、顔を見せる。

 ガスマスクの助手だけまだ顔を見せず、
 いつものように野花を新しくする。 

03■ミミズ

 秘書と社長、話し込んでいる。
 秘書、ぷりぷり怒っている。

秘書「ガス漏れも検知できない研究所なんて危険すぎます」
社長「まぁ、そうぷりぷり怒るなって。めったに無いことなんだ、大丈夫?」
秘書「私が聞きたいんです!何吸わされたんですか私」
社長「嬉し悲しガスMOREだそうだ」
秘書「モア?」
社長「嬉しい時はより嬉しく、悲しいときはより悲しくなる」
秘書「また無駄なものを」
社長「な」
秘書「後遺症とか無いでしょうね?」
社長「さっき聞いたら、生物ガスなので地球にはやさしいとかなんか」
秘書「逆に怖いんですけど」
社長「どう?平気?」
秘書「まぁ、たぶん」

 社長、伝声管に

社長「おっけーだってさー」

 社長、一仕事終えた感じ

秘書「え?なんですか?」
社長「人間がこのガス吸うの初めてだったからせっかくだから教えてくれって」
秘書「モルモットにしたんじゃないでしょうね?」
社長「え?ちがうだろ」
秘書「ほんとに?」

 社長、伝声管に

社長「わざとじゃないよね?」

 無視

社長「無視」
秘書「即刻埋めてしまいましょうここ」
社長「それには同意書がないと」
秘書「私だって毎日毎日、伝声管から話しかけてたのに無視です。テーブルに置いておけば見ると思ったけど全然見ないから、私もうイライラして」
社長「あー、それで」
秘書「吊ったんです。研究室に降りてくるときに気づくと思って」
社長「でも、ほぼ、住んでんだよ。ミミズのお二人」
秘書「こんな日の光も入らない場所で寝起きするなんて信じられません」
社長「かもしれんねえ」
秘書「こんな、じめじめした時代遅れの研究所なんてあるから、会社の経営が傾くんです」
社長「わかってんだけどさ」
秘書「小さな会社なんですから」
社長「でも、ミミズの養殖のおかげで始まった会社だから」
秘書「は?」
社長「うちの会社、初めはミミズを養殖してたんだ」
秘書「ミミズを養殖するんですか?」
社長「そうだよ」
秘書「ミミズって、あのミミズ」
社長「そのミミズだ」
秘書「なんでミミズなんて!」
社長「隣の国では普通のことらしい。ミミズのこと『大地の竜』って言ってさ。」
秘書「隣って、あの国ですか?」
社長「うん」

 秘書、吊ってある同意書を取る

秘書「始まりがこの研究所だったとしてもです。こんな無駄で、維持費ばかりかかることを続ける必要はありません」
社長「けど創始者だからさいちお。戦争前に隣の国から亡命してきてこの地下に住みついてミミズ養殖初めた人なんだよ」
秘書「こんなところに住んだんですか!?」
社長「うん家族でね」
秘書「子供も?」
社長「うん」
秘書「信じられない。その子は、ろくな育ち方をしませんよ」
社長「ははははそうだなぁ」
秘書「私、所長に会ったこともないです」
社長「めったに地上に出てこないからな」
秘書「自分のガスにやられて、死んでんじゃないですか」
社長「ははははは」
秘書「おいくつですかミミズ所長」
社長「私の35歳上だから」
秘書「70歳」
社長「丁度、倍か。じじい年食ったなぁ。」
秘書「もう退職しても良い頃です」
社長「ああ、なあ」

 間

秘書「社長、結婚しないんですか?」
社長「え?私?しないよ絶対」
秘書「え?絶対?そうですか」
社長「うん。突然なに?君は?」
秘書「相手がいませんから」
社長「そう。残念だね」
秘書「ええ、残念です」

 同意書を出し

秘書「私じゃ受け取って貰えそうにないので。社長、御願いします。
 頭のおかしいミミズじじいの相手は、ごめんです。社長は無視されないようですし」
社長「ま、普通の業務のことならなぁ」
秘書「隣の頭のおかしい国の人間だとすればなおさら私、嫌です」
社長「どうにか君、頼めないか?」
秘書「嫌です」
社長「私も嫌なんだよなぁ」
秘書「私はもっと嫌です」
社長「俺、苦手なんだよなぁ、おやじ」
秘書「私はもっと苦手です。え?」
社長「もう親父と何年もまともに口聞いてないからなぁ」
秘書「おやじ?」
社長「うん」
秘書「おやじというのは」
社長「みみずじじい」
秘書「というのは」
社長「私の父親」
秘書「は?」
社長「私、ここで育って、こんな大人になったよ。言ってなかったね」
秘書「はい。知ってたら、もっと私、うまいこと言えました。でも。あとの祭りですね」
社長「気にすることないよ」

 秘書、同意書をにぎり

秘書「、、私やります」
社長「あ、そうしてくれる?。このあとえーと?(時計をみる)」
秘書「午後から視察です。地下室観たいって、軍司令部の方が」
社長「なんだろ?」
秘書「地下の空気清浄機でも検討したいんですかね」
社長「君に任せていい?」
秘書「もちろんです」
社長「さっきの結婚の話なんだけど」
秘書「、はい」
社長「なんだか家族を持つのが恐ろしくってね」
秘書「、、」
社長「だから、絶対しないんだよ。結婚なんて」
秘書「そうですか」
社長「たのんだ」
秘書「(深く礼)」
社長「(えっと、どこまでいったっけ。)」

 社長、自作の唄を考えながら退場する。

秘書「(ためいき)失敗した」

 しばらく、また花を見る

秘書「やっぱ女は仕事よね」

 で、気づく。

秘書「あれ?どうしてあなた生き残ってるの?滅菌処理で死んだんじゃ、、」

 で、気づく。

秘書「ああ、あの人、あなたに気づいて助けたのね。なんて優しい」

 で、気づく。

秘書「(タメイキ)悪い奴ならいいのに」

 貼り紙を読む。 

秘書「実験室内汚染は緑、準備室汚染は赤のランプが点灯する。マニュアルに従い、細菌の漏洩を防ぐこと」

 しかし、思い出す。

秘書「ミミズならな。男も女もない」

 しばし、放心。

 同意書を思い出し、がっくり肩を落とし伝声管へ。

秘書「お仕事中に失礼いたします。
 まいどお世話になっております。
 今、お時間よろしいでしょうかー。
 、、こんちゃっす!元気してるー?」

 無視

秘書「じゃ、私について話しします。
 えー私、もう三十路も半ばにさしかかってます。
 なんだか突然人生がむなしくなるんですね。
 わけもわからず涙がぽろぽろ流れることがたびたびあります。
 友人には『目から人生の汗が出てるよ』って。
 何言ってんだろう私。はっはっへいー」

 じじい、少し現れるが。秘書、ぜんぜん気づかない。

博士「、、」
秘書「私だっていつまでも若さにしがみついてませんけど。
 前の職場でおツボネ化して若い子たちに好奇の目で見られたとき。
 突然、自分が何か別のものに変わってしまったような気がして。
 このまま一人で朽ち果てるのかなぁって思うともう涙がしょっぱくてしょっぱくて」

 博士、なんか失敗して音を出す。ガタ

博士「(あ)」
秘書「(あ)」

 博士、地下に戻る

秘書「あ、待って!」

 秘書、同意書を渡そうとして、転ぶ。

秘書「、、おとうさんー」

 秘書、同意書に隠れて、少し泣く

秘書「ああ、もう立ち上がれないかもしれない」

 司令官が地下に降りて来る。

司令官「失礼します。?」

 秘書に気づく。いちお、壁をノックする

司令官「地下研究室というのはここですか?」
秘書「ここは準備室研究室は地下二階です」
司令官「ここが、キリンガスを産み出した研究所ですかぁ」
秘書「へーそうなんですか」
司令官「どうしました?」
秘書「あなただって転んで立ち上がれない事くらいあったでしょう」
司令官「手を貸しましょうか?」
秘書「けっ」
司令官「視察に来た軍部のものです」
秘書「地下研究室をご覧になりたいと」
司令官「どこか打ちましたか?」
秘書「胸です」
司令官「へ?」
秘書「私の胸は打ちひしがれ、張り裂けんばかりです」
司令官「あー」

 細胞分裂音ポワワオンワン

秘書「へっへっへっへっへ」
司令官「だいじょうぶですか?」
秘書「なんだこのやろう」
司令官「このやろう?」
秘書「大丈夫に見えるのかてめえ!」
司令官「すいません見えません!」
秘書「診ろ!胸を診ろ!がばっとみろ!観てみろ!もう何年も誰にも見せてねえ」
司令官「ヘッへっへっへっへ」

 秘書、我にかえる

司令官「みます!私、俄然、胸を観ます!よりみます
 この後の責任ははっきりいって取れません!私はこの後、オオカミにも、果ては赤ん坊にもなるかもしれない!」
秘書「わあ(美しいフォームででなぐる)」
司令官「もがご」

 司令官、ノックアウトされ、倒れる。

博士「(おお)」
秘書「わあ!わたしったらなんてこと!」
司令官「(立ち上がり)、、、」
秘書「ごめんなさい!ごめんなさい!ちょっとあたし、どうかしてたんです!」
司令官「いや、あの、なんだか」
秘書「はい」
司令官「頭を思い切りぶん殴られたような気分です(礼)へっへっへっへっへ。(ゾンビ)ああ、うう、ああああ」

 司令官、よくわからなくなり、退場する

秘書「あの!すみません!」

 秘書、ぼーぜんとしている

博士「、、、」
秘書「あれ?これって。あ」
博士「(メモる)たまに、我に返る」

 秘書、博士と目があう。

秘書「、、、」

 秘書追う。博士、滅菌室に逃げる。鍵をかける。

秘書「あ!くそ!じじい!」
 
 博士、そのまま地下二階へ
 秘書まだどうにかあけようとがんばる。
 そのへんの道具でぶっこわそうと試みる。

 バッグに荷物を背負った青年が地下に降りてくる。
 軍服の上に、白衣。すごいちかづいて、肩をたたく

青年「(トントン)」
秘書「!!うわあ」
青年「(頭を下げる)申し訳有りません!」
秘書「え?!(ドアをぶっこわす努力はやめない)」
青年「ここであってますか?」
秘書「なにが?!あけろおお!!!(ガチャガチャガチャガチャ)」
青年「?(あとずさり)失礼します(礼)(駆け足)」

 青年、退場

 実験室の方からたくさんの泡が水面に上がっていくような音が聞こえる。
 細胞分裂音、ポワンポンポワンポンポワンポン

青年「へっへっへっへっへ!」
秘書「(ガチャガチャガチャガチャ)あけろおお!」
青年「(敬礼)手伝います?」
秘書「開けて!」
青年「ハ!」

 と、ジャックナイフを取り出す

青年「せい!へっへっへっへっへ!」

 勢い良くナイフをさしこむ青年
 秘書、伝声管から警告する

秘書「ミミズに告ぐ!!こっちにはなぜか凶器を持った見ず知らずの青年が笑顔でいる!
 すみやかに投降し、同意書を受け取れ!」
青年「固いな」
秘書「がんばんな!へっへっへっへっへ」

 警報ブーッ・ブーッ・ブーッ・ブーッ(以下、鳴り続ける)

青年「警報!」

 天井の真緑のランプがつく、秘書、あわてる。

秘書「(貼り紙)みどり(マニュアル探す)マニュアルマニュアルマニュアル」
青年「どうします?」
秘書「今駄目今駄目!」

 と、青年を乱暴に外に出すためにいったん秘書も退場する。

秘書(声「わあ!ドアロック」
青年(声「ぶちこわしますか?」
秘書(声「だめ!町中がより嬉しくてより悲しくなる!」

 滅菌室のドアがあく。

助手「シュー、シュー」

 ガスマスクの女が入ってくる。

秘書&青年「へっへっへっへっへ(ゾンビ)あああ、ううう、ああああ」

 秘書、戻ってくる。助手に気づく

助手「シュー」
秘書・青年「わーーーーー!!」

 カギを出し壁の操作板らしきところを開け、
 何かのボタンを押す。

 アラート、解除される。

助手「シュー、シュー」
二人「、、、、」

 助手、また実験室へ。

秘書「え?あ、まちなさい!」
助手「シュ?」
秘書「説明しなさい」
助手「モゴモゴモゴゴゴ」
二人「聞こえない!」

 助手、手を合わせて、礼をする。
 秘書と青年も手を合わせて、礼をする。

助手「(逃げる)」

 助手、逃げる。秘書、追う。また閉められる
 ガチャガチャガチャガチャ

青年「出口みてきてください。ここは自分が」

 秘書、再び退場する

 青年、軍隊で訓練をうけたであろう身のこなしで部屋全体をチェックする。
 余計にころがり、余計に用心する。
 ボックスのようなものの中に、日記を発見する。

青年「、、、日記」

 ガスマスクの助手が戻ってくる。

 プシュウウウウウウウ

 ガスマスクをとり、作業用のカッパを脱ぐと肌着である。ナウシカ程度の。

青年「!(ズキュン)」

 その様子を覗いた青年、ドギマギする

青年「、、、」

 白衣を羽織り、滅菌室から出てくる助手

青年「あ!は!いや!さ!」
助手「あ、シュいまシェンでシた」
青年「え?」
助手「おどろかシェて。シェンシェい冗談がシュきで。」
青年「冗談?シュき?」

 助手は隣の国の出身で、さしすせそが、シャシシュシェショになる。(濁点がついても同じ)

青年「あ、えーと、言葉」
助手「シェンシェいと同じくもとは隣の国の人間でシュ。シェンシェいの助手になりに、この国に来たジョ」
青年「あ、自分は、えーと。なんつーかそのー」
助手「あ、新しい助手シャン?」
青年「えーと、俺、ぼく、いや、わたし、。ええと、じゃ、助手シャン」
助手「ショうシュか!」

 助手、青年の手を握る

助手「よろシくお願いしまシュ!」
青年「あ、し、しまシュ」
助手「シェンシェい!」

 助手、伝声管にはなす。

助手「あ、もシもシ、シェンシェい、新しいやつきたジョ」
博士(声「ドージョーう」
助手「どうジョって」
青年「あ、はい」
助手「わたしうれしい!」
青年「あ、そう?」
助手「みんなシュぐ、身体こわしてやめるから。シェキげほげほ、ハナミジュジュルジュル。はい、ガシュマシュク!中は危険なシャイ菌でいっぱい!」
青年「シャイ菌、、」
助手「ドージョ!ドージョドージョ!」

 助手、地下2階へおりていく

青年「ドーモ」

 ガスマスクを持たされ、つったってる青年

青年「あ、、、、日記」

 さっきの日記を箱から出す。

青年「、、だれの日記だろう」

 青年、開く

04■35年前のこと

 場面転換の音楽がなる。

 35年前の室内に変わる。
 たとえばキリンの絵がはずされミミズの絵がかざられる。
 コーヒーサイフォンが無くなる。
 伝声管に、なにかかぶせる

 音楽が消える。

 青年、小さな光の中に日記を開いて読んでいる。

青年「『何かの倉庫だった地下室に転がり込んだ。
 この国は物価が高い。
 なんだってあるが、神様がいないらしい』」

 男が登場する。
 35年前の博士である。
 白髪ではないし、
 白衣もまとっていない。
 ボロを着ている

青年「日雇いの仕事にすらありつけない。
 どうやら私の国は世界に嫌われている。
 出身がばれると扱いが変わるので、早く言葉を覚えなくては」
青年「金がない。金がない。金がない」
青年「しばらく誰とも話していない」

 男、天井を見ている。

青年「腹が減った。腹が減った。腹が減った」
青年「来週の今ごろまでは持たないかもしれない。
 すでに国を出たことを後悔している。
 私はどうして故郷を捨てたのだろう。
 私は一体何になりたかったのだろう」

 男、壁を見ている。

青年「もうすぐ死ぬ。もうすぐ死ぬ。もうすぐ死ぬ」
青年「地下室の壁が崩れ、土があらわになったところにから、太いミミズがはい出してきたので食った。
 まずかったが今日は生きのびた。明日の分もほる」
青年「ミミズ、ミミズ、ミミズ」
青年「このまま私は人間ではない何かになってしまうかもしれない」
青年「ミミズ、ミミズ、たまに人間」
青年「そういえば、国で、土を良くするためにミミズを増やして畑にはなしてたっけ」
青年「ミミズ、人間、ミミズ、人間」

 男、箱をのぞいている

青年「そうだ」
青年「必要なもの。腐った土。最初のミミズ。箱」
青年「はい出されても居心地が悪いから、いちおふたをする」
青年「たまに土とミミズのフンを交換する。交換後のフンは肥料となる」
青年「ときどき水をかけ、土をかきまぜる」
青年「こいつらはオスもメスもないから、時間が経てば増えるはずだ」

 男、大きな箱の中から中くらいの木箱を出す。
 不揃いだがたくさんある。

青年「トロール漁で使っている箱を港に行って盗んできた。
 箱をばらし古釘を拾って小さいものをたくさん作った。
 当分は魚臭いが仕方が無い」

 不揃いの箱の中からパン。

青年「売れた。街中歩き回った挙げ句、港で売れた。
 なんと釣りのエサだ。久しぶりにパンを食べて寝た。
 それにしても、趣味で魚を釣るとは驚いた」

 不揃いの箱の中から小銭、札(外国の金が良い)。

青年「休日が売り時だ。顧客もついてきた。
 金がたまったら時計を買う。新聞もとらなくては。
 早くこのミミズの穴からはい出したい」
 
 男、滅菌室にうきうきとひっこむ。

青年「釣り客に持っていくにはタバコくらいの大きさの箱がいい。
 急には増えないからまたミミズを掘る。
 この調子だと地下2階まで出来そうだ」

 滅菌室の方から小さい箱をもって出てくる。

青年「問題が起きた」
青年「ここは昔の戦争で軍がシェルターとして使っていたのを払い下げたと聞いていたが」
青年「所有権が軍にあったらしい」
青年「私の嫌いな軍人がくる」
青年「あばら骨が二三本折れる覚悟はしておいた方がいいだろう」

 助手、青年、退場する。

 音楽が消える。

 軍人(司令官の父)登場し、男としばし対峙する。
 *軍人のときは歩兵ルックである。

二人「、、、、、、」

 男、そっと、リボンのついた、タバコくらいの小箱を出す

軍人「なんだ」

 受け取り、開けながら

軍人「あまり、俺を安くみない方がいいぞ。
 あまり、俺を安くみない方がいいな。
 俺を、安く、みない方が、いい。かた結び」

 男、はさみで切る

男「(ちょきん)」
軍人「あ、ありがとう」
男「続きどうぞ」
軍人「ま、あまり、俺を安くみない方がいいぞ」

 軍人、開ける

軍人「、、、虫」
男「ミミズです」
軍人「!」

 軍人、びびるが、声を出さず、返し、
 いっかいどっかおけそれって
 身振りで伝え、

男「(置く)」

 蹴る。散らばるたくさんの小箱。

軍人「密入国か」
男「ちがいまシュ」
軍人「シャシシュシェショお!」

 蹴る

軍人「お前らサ行が変」
男「シュンマンシェン」
軍人「戦争が始まったの知ってる?」
男「しらないシュ」
軍人「昨日、おまえんとこの国と」
男「、、、」
軍人「というわけだから。じゃ、グッバイ」

 と銃を向ける

男「!ちょとまってくだシャイ!」
軍人「だって戦争始まったんだから俺殺してもいんだもん」
男「ションな!なんでもあげまシュから!」
軍人「ミミズしかいねえじゃねえかこの部屋」
男「いのちばかりは!ドージョおたすけシャい!ほんとシュンマンシェン」
軍人「うるさいぞ!」

 銃に力がこもる

男「!!!(覚悟)」

 が引き金にふれると緊張する彼

 と銃をさげる

軍人「、、くそ」
男「?」
軍人「言葉練習しろ!なんか気ぬけんだ!」
男「アリガトうゴジャイマすドーモシュンマシェン!」

 軍人、落ち着こうとする

軍人「タバコいい?」
男「どージョどージョ」

 どこぞのタバコを出し。
 ジッポを出すが、
 なかなか火がつかない。
 うまくできず、むきゃーってなる

軍人「ムキャアア!」
男「なした?」
軍人「、、、、、、くっっそおお、
 またあのヒステリーにコケにされる。
 そんなパッパとできねえよぉ」

 軍人頭をかかえる

男「なんシュか」
軍人「誰にもいわない?」
男「言わないしゅ」
軍人「言ったらころシュよ?」
男「言わないしゅっしゅ」
軍人「俺二等兵なのに無茶な特別任務あるの」
男「なんしゅか?」
軍人「毒ガス工場を作れって。うちの国、ほんとは借金だらけなんだって。
 だから、最終兵器つくる金がねえんだって。軍隊だって名ばかりでよ。
 俺だって学校出て公務員になるつもりで歩兵になったくちでよ。
 一年の中で一番でかい仕事、街の公園に雪像つくることだから」
男「シェツゾウ?」
軍人「まつりがあるんだよ。雪の。雪ふったら、象作るんだよ。雪で」
男「へえ」
軍人「平和だったんだよ60年。
 役所に毛生えた程度の軍隊なんだよ。
 核爆弾つくる金なんてねえから、
 一番安くつくれる毒ガスつくらせろって。
 わかった?」
男「はい」
軍人「よし。(銃を構え)これ国家機密だからシャイナラ」
男「ショんな!」
軍人「ぱっぱとやんねえとまたあのヒステリー女がヒスるから」
男「ヒステリー?」
軍人「くちぐせ」
軍人&女(声「もっと効率よく出来ないものカシラ?」

 白衣の女が現れる

軍人「ほらな」
女「あんた本を読んだほうがいいって。
 少しは哲学を持った方が良いんじゃないカシラ?」
軍人「科学者ってのはみんなこう?」
女「軍人なら、国や子供たちのことを考えたら?」
軍人「あんたみたいな女俺嫌いだな。抱いてくれというなら抱かなくもない」
女「もうおめーは前線で死ね。おまえの遺伝子は世に残すべきではないわ。こちらは?」
軍人「密入国のミミズ野郎だよ」

 女、歩み寄る

女「こんにちは」
男「こんにちは(礼)」
女「maj pov」
軍人「?」
男「maj pov」
女「HoSchoH earthworm?(あなたはミミズを育てているの?)」
男「、、、、」
女「tu'lu' mo'mey earthworms?(たくさんのミミズがいる?)」
男「、、vaj。tIv?(そうです。みる?)」
女「QaQ? jIQuch! nuqneH!(いいの?うれしい!ありがとう)」
男「H,Hevam yIghoS.(こ、こっちです)」
女「nuqDaq?(どこに?)」
男「wutlh rav cha'DIch(地下2階)」

 男、地下二階へ行く

軍人「こりゃたまげたね」
女「地下2階に行ってきます」
軍人「なんで」
女「ミミズを見に」
軍人「もの好きだね」

 女、地下2階に行く

 軍人、一人でいる

軍人「、、、」

 銃を構え

軍人「、、」

 呼吸を整え

軍人「、、、、、、、」

 力をこめるが

軍人「、、、、、くそ」

 撃てない。

軍人「、、、、できん」

 銃を床に置く。

 女、わきゃわきゃと上がってくる

女「わきゃ!わきゃきゃ!わきゃ!」
軍人「。。」
女「どうかした?」
軍人「なんでもねえよ」
女「彼のミミズの知識はすばらしいの!
 地下を観た?彼、品種改良までしてる!数十種類いる!」
軍人「そーかい」
女「ご存じだと思いますけど、細菌を培養している土にミミズを離すと、細菌の突然変異が頻繁に起こるの。
 DNAに含まれない予備遺伝子、プラスミドの伝達が、ミミズのおなかの中では効率良く行われるから。」
軍人「ご存じないです」
女「有名な話ですが、ミミズは、汚染された土の中で毒ミミズ化。汚染物質は体内に蓄積され、濃度を増す。食物連鎖によりこれが繰り返されると、数十万倍の濃縮率の毒を得ることができます」
軍人「たすけてー。」
女「彼をこの地下ガス開発工場の共同運営者にしてください」
軍人「え?」
女「彼は利用できます。」
軍人「ミミズから、毒ガスを作るってのか?」
女「厳密には、ミミズのフンから」
軍人「科学者ってやつは意味がわからん」
女「偉大な発明は想像力から始まるんだから」
軍人「俺は目に見えないもんは信じねえ」
女「もう期待しない。いい?彼を、わたしのパートナーにして」

 女も、地下二階へ行く

軍人「なんだか妬けるぜ」

 音楽。

<ミミズ>

青年「地下室はその女の人が研究室に改造した」

 引っ越し屋らしき奴らが女の指示にしたがっている。

女「あなた、これ、少しそっちへどいて」
軍人「人使いがあらい!俺は軍人だ」

 軍人、奥の箱をずらそうとする

女「そことそこを綺麗にして。そこに机をおいてちょうだい。あと、これ。ええとこれは?」

 ぼろい箱のうえに一輪、花が置いてある

女「なにこれ、雑草?きたない。だれこんなもの。あたしの図面どおりにしてちょうだい」
軍人「なんか怒ってっぞー」軍人、なんか荷物を持ってとおりすがり、退場する。
男「えーと、これは」
女「昨日は無かったとおもうけど」

 女、図面をみる

男「花」
女「どうしたのこれ」
男「ミミズのフンをショとにシュてたら、ショこにシャいて」
女「あなた、花が好きなの」
男「たまにくうけど」
女「くう?」
男「あまり腹が減ったら、たまに喰いまシュ。でもまジュい」
女「じゃあどうしてここに?」」
男「、、えっと」
女「昨日はなかったのに」
男「きらい?あ、シュンまシェン」あっさり捨てにいく
女「待って」
男「え?」
女「雑草でもきれいね」
男「おいとく?」
女「このままじゃすぐ枯れるから、、」

 軍人、薬瓶などの入った荷物を持って通りかかる

女「まって」
軍人「え?」
女「、、」

 ひとつ選び出し

女「水入れてきて」
軍人「俺の仕事じゃねえ」
女「あなたの仕事は研究所つくりじゃないの?」
軍人「こいつ働いてねえだろ」
女「彼の仕事はミミズの繁殖です」
男「しゅんましぇん」

 軍人、口をとんがらせてちゅーちゅーしながら、水を入れにいく

女「ちゅーちゅーしない!変な軍人」
男「ショウシュね(笑)」
女「あら笑った」
男「シュンまシェン」
女「いくつ?」
男「35」
女「わたしの一つ上」

 軍人戻ってくる

軍人「ほらよ」
女「どうもありがとう」
軍人「え?うむ」

 女、花をさす。
 さっきよりずっと良い。

男「Say'」
女「なんていう意味?」
男「美しい」
軍人「へー」
女「Say'」
男「はい」

 3人、雑草をみる

女「さ、やっちゃおう」

 女、たちどまり

女「qatlho'qu' (どうもありがとう)」

 女退場

男「、、、」
軍人「なんていった?」
男「『ありがとう』って」
軍人「あっそ」

 軍人、去る

男「なにかしまっシュか?
軍人「おまえはミミズに集中しろ」
男「でもミミズ、勝手に増えまシュから」
軍人「まじかよ」
男「なんかはこぶ?」
軍人「、、それ」

 二人、大きなを一旦もちあげる。
 *これが、のちのちの伏線

 セットが元通りになる。

<自由>

青年「私はこの国で、産まれて初めて給料を貰った」

男「こんなにくれるのか?」

 軍人、賞状のようなものを読む

軍人「えー、(さっそく読めない)き、との、えー、なんだ?」
女「きでん」
軍人「貴殿の協力を感謝する。貴殿には南の人間としての栄誉と勲章を与える」

 軍人、バッジを男の胸に止める

男「え?」
軍人「なんで俺がこんなこと」
女「文句いわないで」
軍人「あなたは、我が軍、我が国の公式な客人となる。このバッジがあれば、おまえを差別した奴は監獄行きだ」
男「、、、」
女「良かったですね」
軍人「どこでも通用するぞ」
男「、、、どこでも?」
軍人「そうだ」
男「!」

 男、思いつくと同時にすごい早さで外に飛び出す

軍人「あ、おい!」
女「どこいくの?!」

 戻ってきて

男「おかしでシュ!!ケーキ!!クリームの!!いちごの!知ってる?」
女「ケーキ?」
男「上等なケーキ屋に入って!買うっシュ!ショのあと、ショのあと、ドウブチュ園でシュ!」
女「動物園?」
男「みリュ!」
女「なにを?」
男「ドウブチュ!」
軍人「あ?」
男「虫じゃなく!見上げるような!観た事もない生き物が、ドウブチュ園ではみられる!」
女「そうね」
軍人「あたりまえのことだ」
女「ちがうの」
軍人「え?」
男「ただ、見シェ物にするために!遠い外国から!船でわジャわジャ!」
女「あたりまえじゃないの。隣の国では」
男「シュごい!みたか!カミシャマ!金だ!
 喰うためだけじゃない!生きるためだけじゃない!」
軍人「そーいうことね」
男「シュごい!」
女「ええ」
男「良かった!この国に来た!本当に良かった!金!趣味!楽しみ!芸術!自由!ケーキいええ!象ぱおおん!」
軍人「子供か」
女「そうね」

 わき起こる母性本能、遠いまなざし。
 軍人、その横顔にノックアウト

女「さっ、働かなくちゃね(笑)」
軍人「、、ああ」

 女、地下2階へおりる

軍人「、、、」

<理解>

青年「私達はお互いの知識をわかちあった
 私は初めて科学の洗礼をうけた」

男「二頭の成体が体を逆方向に向けて環帯部分の腹面を接着することにより交接をおこなっているんシュ!」
女「まぁ!これから表面に筒状の卵包を分泌し体の隙間に複数の受精卵を産卵するのね」
男「ミミズによっちゃ、ふたつにちぎれてふたつとも一個体として再生するんだよ!」
女「まぁ♪きもちわるい♪」
男「うん♪きもちわるい♪」
女「ね?!」
軍人「ああ、きもちわるーう♪」
二人「あはははは♪」
軍人「あはは!」
三人「あははははははは!♪」
 
 3人、くるくるまわる

<プロポーズ>

青年「私達は一緒に色々なことを学んだ。」

 軍人、指輪を持ってプロポーズの練習をしている

軍人「ととと、すちゃっ。ばーん『結婚して俺の子を産んでくれ』あー、なるほど。
 ととと、すちゃっ。ばーん『俺は産めない。結婚しよう』いいなこれも。

 女登場、軍人もちろんきづかない。

軍人「ととと、すちゃっ。くるーん、だんー『何か足りねえぞ。おまえの薬指』」
女「あの人は?」
軍人「『指輪どう(ぞ)』わあ!」
女「なにしてんの」
軍人「うるせえ!」

 女、花を変える。にこにこ眺めている

軍人「どうなんだよ研究は」
女「順調ですよ」
軍人「早くしねえと戦争が終わるぞ」
女「わかってます」
男(声「シュゴいシュゴい!これ」

 紙袋をもってくる男

男「みてみて!みてくだしゃいこれ!」
軍人「なんだよ」
男「ちゅいでにどーじょ」
軍人「ついでにな」

 紙袋から、コーヒーサイフォンを出す

女「なにこれ?!」
男「シュこしくらいぜいたくをしてもいいんじゃないかって思うんでシュ」
女「はじめてみた」
軍人「あんたも初めてみるもんあるのか」
女「なんていうの?」
男「コーヒーサイフォン、本で見ました。」
軍人「どうしてこんなもん?」
男「あなた。コーヒーシュキだから」
女「あたしに?」
軍人「また点数かせぎやがって!」
男「一緒に眺めましょう、コーヒーサイフォン。まいあしゃ」
女「え?」
軍人「毎朝?」
男「ええ。まいあしゃ。私と」
女「それって」
軍人「まさか」
男「はい」

 男、手をさしのべる
 女、その手をとる
 軍人、ぼうぜんとする。

青年「私達は一緒に色々なことを学んだ。
 科学の前に生物はすべて平等だってこと。
 国境を越えて、私達は愛し合えるということ。

 軍人、指輪をポケットにいれて退場する
 ふたり、抱き合う。

青年「私達は結婚した。本当に幸せだった」

 二人、退場する


04■助手と青年

 青年、日記を読みふけっている。

 音楽が消えてゆく

 助手、冷めきった麺類をアルミフォークで喰いながらでてくる

助手「(ずずずずず)」

 日記読んでるのを眺めてる
 もちろん気づかない青年、表情ゆたかに、日記を読み進める

青年「(なんてこった!)(そんなことが)(次のページをめくるのがこわい!)(おそるおそる)」

 助手、ジェスチャー当て。

助手「なんてこった!そんなことが?次のページをめくるのがこわい!おそるおそる、、なんてこった!」
青年「(助手の台詞に合わせてもっかいやってあげた挙げ句)正解」
助手「(ずずずずず)ああ」
青年「「もちろんまだ気づいていない)」
助手「ミミジュ博士の日記。おもシろいでシュか?」
青年「うん」
助手「人の日記、勝手に読むなんてシャイてー」
青年「でも、僕には、成さねばならないことがあるから、(くんくん)良い香り」

 助手、超、近い。

青年「いつのまに!」

 ぱっと離れる

助手「ショの身のこなし」
青年「ぎくり」
助手「あなた、助手じゃないショ」
青年「なんのはなし?」
助手「150キロ!ひゅん!」

 助手、青年に向かい、何かを投げる

青年「しゅぱたん!」
 
 青年、一回転をし、

助手「まさか!!」

 青年、キャッチしたフォークを見せる

青年「なかなかの球威だ」
助手「フォーク!」
青年「君こそ何ものだ?」
助手「なんのはなし?」
青年「167.4キロ!ひゅん!」

 助手、青年に向かい、何かを投げる

助手「しゅぱめん!」

 麺を安全な場所に置き

助手「しゅぱたしゃん!」
 
 助手、一回転をし、

青年「まさか!!」

 助手、キャッチしたフォークを見せる

助手「プロ顔負けね」
青年「フォーク!」

 二人、しばし動かない。

 助手、麺類の続きをたべる。

助手「(ズズズ)」
青年「君も助手じゃないだろ」
助手「じゃんねん。私は立派な助手っしゅ」
青年「隣の国から来た助手?」
助手「(ズズズ)隣の国から来た」
青年「ほんとかなぁ」
助手「だからシャメててもへーき(ズズズ)」
青年「まずいくせに」
助手「ミミズ喰ったことないでショ」

 間 

青年「国はまだ貧しい?」
助手「戦争に負けてもっと悪くなったって」
青年「いつからここに」
助手「一ヶ月前」
青年「nuqDaq Kilin-Gas?(キリンガスはどこ?)」
助手「、、、Kilin-Gas'a'(キリンガスか)」
青年「tlha'wI' je are(そうだ)」
助手「jISovbe'(知りません)なんシュかショれ?」
青年「とぼけるな」

 青年、一歩出る。
 助手、フォークを構える


青年「君となりのスパイだ」
助手「どうしてわかったの」
青年「僕らの組織じゃ君有名人だ。肩のココに3つのホクロ」
助手「あなたも、キリンガスをねらってるの」

 青年、ナイフを抜く

青年「僕には、成さねばならないことがある」
助手「それは、私も同じでしゅ」
青年「渡すわけにはいかないんだよ」

 しばし、おみあい

青年「あ」
助手「だれかきた」
司令官(声「いやあナイスパンチ」
青年「!」

 司令官と秘書が再びおりてきた。

秘書(声「申し訳ありません」
司令官(声「我が軍にもあなたくらいイキのいいのが欲しいもんだ」
青年「司令官」
助手「上司?」
青年「まずい」
秘書(声「ほんとにすみませんでした」
司令官(声「はっはっはっは」

 助手、先に扉にいき、

助手「おシャき」
青年「あ!」

 青年の鼻先で扉をしめる

青年「にゃろ!」
助手「(バイバーイ)

 青年、隠れる場所をさがす。
 青年、その昔ミミズが入ってたであろう大きな箱に入る。

司令官(声「社長さんは」
秘書(声「あとから来ます」

 間一髪ふたがしまる直前

青年「あトイレ行きたい(がっかり)」バタン

 司令官登場する。
 殴られたところにガーゼをあてている

司令官「たいしたパンチでした」
秘書「ハタチで習った護身術、初めて使いました。大丈夫ですか?」

 とガーゼをさわる

司令官「ホーー-ウ!大丈夫です」
秘書「すいません!」

 箱のふたが少しあがる

青年「(ちら)」

 青年、トイレのすきをうかがっている

司令官「社長さんは?」
秘書「少し予定が押してまして。スミマセン」
司令官「おいそがしいですか」
秘書「お待ちいただけますか?」
司令官「そうしましょう」

 司令官、まわりを見回す
 キリンの絵をみつける

司令官「おお、キリンですか」
秘書「ですかね。えーと、たぶん」
司令官「さすがは、『35年前に我が国を勝利へと導いたキリンガス発祥の地』、ですなぁ」
秘書「キリンガス?」
司令官「おや、ご存じない?」
秘書「ええ」
司令官「おやおや、ご存知ない?」
秘書「はい」
司令官「おやややや」
秘書「ご存じないですおしえてください」
司令官「ふむ(満足)」
秘書「キリンガスって、なんですか?」
司令官「毒ガスです」
秘書「毒ガス?」
司令官「ええ」
秘書「毒ガスって、毒のガス?」
司令官「そうです」
秘書「毒って、毒?」
司令官「毒です」
秘書「吸ったら」
司令官「死ぬ」
秘書「毒?!」
司令官「ご存じない?」
秘書「毒ガス?」
司令官「ええ」
秘書「毒ガスって、毒のガスですよねえ?」
司令官「そうです」
秘書「、、、知りませんでした」
司令官「秘書のあなたにも知らされてませんか」
秘書「私が知ってるのは、ミミズの養殖から始まった会社で、今は空気清浄機の開発販売設置メンテをやってるってことです」
司令官「その、あいだが抜けてます」
秘書「あいだ?」
司令官「戦時中、この施設は軍の秘密工場でした」
秘書「秘密工場?」
司令官「私の父も、叔父も、陸軍歩兵として勇猛果敢に世界を相手に戦ったと聞いています。
 しかし、国に金が無かった。万策尽き、あわや敗戦かと思われたその矢先、
 一人の天才科学者がキリンガスを完成させました。
 おかげで我が国は先の戦争に勝ったんです」
秘書「天才科学者」

 秘書、地下への入り口をみる

秘書「もしかして」

 ちょうど出てくる、天才科学者らしき人と、助手

博士「おれ先」
助手「ジュるい!」
博士「もれる」
助手「レディーファースト」
博士「どっち」
助手「小」
博士「大」加速
助手「わあ」加速
博士「おれ先」
助手「やだやだやだやだ」

 二人、退場

司令官「、、」
秘書「、、」
司令官「便所」
秘書「はい」
司令官「ひとつしかない」
秘書「ですかね」
司令官「だれ?」
秘書「博士と助手」
司令官「なかよし」
秘書「ですかね」
司令官「ええと、なんだっけ?」
秘書「あああああああ!!」

 同意書をにぎりしめ

秘書「今チャンスだったのに!ううう!」
司令官「え?」
青年「俺も今、チャンスだったぁー」
司令官「ん?」
秘書「どうしました?」
司令官「やまびこ?」
秘書「は?」
司令官「なにがチャンスだって?」
秘書「いえ、あの、私の仕事の話です」
司令官「なんの仕事?」
秘書「これ、渡さなきゃいけなくて」
司令官「なにそれ?」
秘書「同意書です」
司令官「どれ(ひったくる)」
秘書「あ」
司令官「ああ、これはこれは」
秘書「あの」
司令官「いや、失敬(かえす)お噂は本当でしたか」
秘書「、、はい」
司令官「倒産」
秘書「はい、あの、このことは」
司令官「まぁ、そう隠しとおせることもでもないでしょう」
秘書「ええでも」
司令官「私は、見ていないことにしましょう」
秘書「すみません」
司令官「それ渡せば今」
秘書「え?」
司令官「所長に」
秘書「あ、いや、ちょっと難しくて」
司令官「なんで?役員の同意が遅れるとすみやかに会社をたためないでしょう」
秘書「そうなんですが」
司令官「何が難しいんですか」
秘書「タイミング?というか。ええ」
司令官「あ、いいですよ今渡してしまって。待ちます」
秘書「ああ、いんです後で。確実に手渡しで」
司令官「置いとけば?」
秘書「いや。たぶん見ないんで」
司令官「ぜったい見るとことか置こうよ」
秘書「え?ああ、ですねえ」
司令官「吊っちゃうとか。これ、ナイスアイデア」
秘書「え?ああ、つる」
司令官「そことか。誰でも見るでしょ」
秘書「あー。はい。じゃ、今度」
司令官「今やらない?」
秘書「あ、今は。はい」
司令官「あー君、仕事難しくするタイプ?」
秘書「は?」
司令官「女性って多いよね。そういうのね。自分だけの台所作っちゃうみたいなね」
秘書「なんですか?」
司令官「おたまは絶対ここ!みたいなね」
秘書「、、、」
司令官「縄張り意識っての?どこでもいいだろうっていうさ(笑)」
秘書「おたまはそこの方が使いやすいんじゃないですかその女性にとっては」
司令官「あ怒った(笑)」
秘書「そのひとは毎日使うから。怒ってませんけど」
司令官「ごめんごめん、怒られちゃった(笑)」
秘書「怒ってません」
司令官「まあまあイライラしないで(笑)」
秘書「してません」
司令官「いや、私が悪かった。ね。」
秘書「ね?」
司令官「仕事しよう仕事(笑)。ね。」
秘書「、、、、はい」

 司令官、A4の書類を探す。

 いつのまにか青年、司令官をにらみつけている。

秘書「?!」
青年「(にらみ)
秘書「、、」
青年「あ」

 青年、口に指を当て

秘書「え?」
青年「シッ」
秘書「(なんで、そんなとこいるの?)」
青年「(トイレに、いきたい)」
秘書「(え?)」
青年「(おしっこ!も!れ!る!)
秘書「(え?)」
司令官「これだ」
秘書「は?」
司令官「(開いて読む)過去の実験データを入手しました」

 青年。ゆっくりと箱の中へ

司令官「殺傷率、伝染率、そして細菌が死滅するスピード。
 どれをとっても本当に素晴らしい。
 1日に1人から4人に伝染。細菌が死滅するスピードは一週間。単純なかけ算です」
秘書「1日に4人」
司令官「2日目には16人」
秘書「三日目で」
司令官「64、256、1024、4096、そして一週間で16384人です」
秘書「、、、たった一週間で」
司令官「このガスの素晴らしさであり、最大の謎は、感染者が死ぬと細菌も死ぬところです。
 生物学的危害つまり、biological hazardが起きにくい。
 世界中がこの細菌を欲しがります」
秘書「どうしてですか」
司令官「核に匹敵する脅威となりうるからです。
 これが、細菌兵器が『貧者の最終兵器』といわれるゆえんです」

 ガタ!

司令官「なんの音です?」
青年「、、にゃあ、ちゅう」
司令官「にゃあ、ちゅう」
秘書「猫と、ねずみです」
司令官「何だ、猫と、ねずみか」
秘書「ええ」
青年「(ホっ)」

司令官「今日伺ったのは他でもありません、その天才科学者にお会いしにきたのです」
秘書「、、、どうして今ごろ」
司令官「それは、もうしあげられません」
秘書「まさか」
司令官「何が起こってもおかしくない時代です」
秘書「戦争が起こるんですか?」

 青年、トイレ限界。ガタ!

青年「、、にゅ、にゅう」
司令官「え?もう一度」
青年「にゅう」
秘書「にゃあでもちゅうでもなく」
三人「にゅう」
秘書「なんか、新しいですね」
司令官「新しい生き物かな」
秘書「ですかね」

 青年、司令官の目を盗み

青年「(おしっこ!も!れ!る!)」
秘書「え?おしっこ?」
司令官「おしっこ?」
秘書「え?あのー」
青年「(しーしー)」
秘書「しー?」
司令官「しー?」
秘書「え、あ、はい。しーって」
司令官「おしっこ」
青年「(も!れ!る!)
秘書「も、れ、る」
青年「(おしっこ)」
秘書「おしっこシィ」
司令官「あ、いいですよ今。待ちます」
秘書「いや、私じゃなく、あの(指差す)」
司令官「?」

 司令官、青年の方を見るが、
 青年、スッと箱の中に消える

秘書「あ」
司令官「(向き直し)あの?」
秘書「あのー、えーと」
青年「(しー!たのむ)(拝む)」」
司令官「?」
秘書「新しい生き物が」
青年「(たのむ!しー!)」
司令官「なんです?」
秘書「あの、まちがえました」
司令官「まちがえた?」
秘書「失敗しました、いろいろ」
司令官「なに?」
秘書「なんでもないです」
司令官「君、、だいじょうぶ?」
秘書「は?」
司令官「なんだか、しんぱいだなぁ、あなた」
秘書「、、、すみません」
司令官「で、どちらにいらっしゃるんです、キリン博士は」
秘書「さっき、、あ」

 ちょうど、博士がガスマスクで現れる。

博士「、、、、」
司令官「この方が」
秘書「天才科学者」

 なんとなく博士、きめる

博士「すっきり」
司令官「ちがうよ」
秘書「え?」
司令官「女性科学者だから」
秘書「あ」
博士「びっくりどどんがどん♪でっかいぼぼんがぼん♪」

 博士、地下室に退場

司令官「快便だったのかな」
秘書「うにゃあ」
司令官「70歳くらいの女科学者は?」
秘書「知りません」
司令官「隣の国の男と一緒になった女だ。天才と変人は紙一重というな」
秘書「、、そうですか」
司令官「何も知らないな」
秘書「すいません」
司令官「ちょっと君ではらちがあかない」
秘書「、、、」

 ガスマスクをかぶったまま、助手登場
 司令官とすれちがう

司令官「君、70歳じゃないよね」

 ガスマスクをとる

助手「ふー」
司令官「トイレはどこです?」
助手「しょっちっ」
司令官「?」
助手「なんシュか?」
司令官「隣の人間か?」
助手「ショうシュ」
司令官「いささか、君の会社には期待はずれだ」

 司令官、トイレへ。秘書、助手、それを見送る

秘書「あいつ」

 助手

助手「jagh(敵)」

 殺すジェスチャーをし、研究室へ向かおうと秘書の前を横切る

秘書「あの」
助手「ハイ?」
秘書「マージ・ポゥヴ」
助手「あ。maj pov」
秘書「マージ・ポゥヴ」
助手「mu' 'e' DaSov?qaSpu'DI' nI' yIjatlh! jIQuch vaj!
(言葉がわかるの?ひシャしぶりにしゃべった!超うれしい!)」
秘書「わ、ごめん!むりです!そんなしゃべれません!」
助手「なんだ」
秘書「は、はじめましては、えーと」
助手「qaleghneS」
秘書「ひゃー」
助手「qaleghneS。お会いできて光栄でシュ」
秘書「言葉、上手」
助手「教育で習いまシュ。あなたの国の言葉。しぇんしょー負けたから」
秘書「ごめんなさい」
助手「なんであなたが謝るの?」
秘書「だって」
助手「慣れてまっシュ」
助手「同情してる?」


 そっけなく退場する助手。バタン。

秘書「、、、、、、、ぽつーーーーん」

 気づく

秘書「ああああああああああ」

 同意書を握りしめる

秘書「今、チャンスだったのにぃぃぃぃ」

 くずれおちる

秘書「、、結婚も、仕事も駄目なら、女は何?」

 はるか遠くの野花に話す

青年(声「あ、そうじゃん!」
秘書「?」

 青年出てくる

青年「トイレチャンス!」

 退場しようとする

秘書「やろう!」

 秘書、捕まえる

青年「もるもるもるもる!」
秘書「まちなさいよちょっと!!」
青年「拷問!これは拷問!」
秘書「まて!こら!」
青年「しげきだめ!しげき!」
秘書「おまわりさーーーーん!」
青年「やめて!怪しいもんじゃないから!」
秘書「じゃあなんで箱の中入ってんの?」
青年「いろいろあって!」
秘書「答えて!何もの!?」
青年「陸軍の歩兵!二等兵!25歳!独身!」
秘書「え?軍人?」
青年「いまは御願いします!あとでかならず!」

 青年、ふりほどき、退場する

秘書「あいつの部下?」

 すぐ戻ってくる。

秘書「早かったね」
青年「きたきたきた!(ぴょんぴょんぴょん)」
秘書「え?」
青年「ビン!カン!ペットボトル!」
秘書「は?」

 青年、箱に入る

社長「ドーモお待たせしてすみませんでした」

 社長と司令官がちかづく

青年「ビン!カン!ペットボトル!」

 と、閉める。

秘書「え?え?え?」

 瓶を見つけて、箱を開けて。瓶を投げ入れて
 社長と司令官がはいってきて
 バン!と閉める。

社長「なに?」
秘書「え?(にこにこ)あ、あの、トイレは?」
司令官「トイレの前で一緒になって」
秘書「それはすばらしいことですわ」
社長「どした?」
秘書「え?えーと」
青年(声「にゅおう」
秘書「変な動物をちょっと」
社長「変?」
秘書「変な鳴き声で(叩く)おい」
青年(声「にゅう」
社長「みたいみたい」
秘書「社長、まずは(軍人の用を)」

 司令官、腕組み

社長「ああ、なんでしたか?」
司令官「倒産するそうで」
社長「え?」
司令官「ああ、彼女から」
秘書「え?」
社長「あ、言ったの?」
秘書「いえ、わたしは」
司令官「資料を見せてくれて。それを」
秘書「(口がすべる)コイツ」
司令官「え?」
秘書「コホイツ!コホんイツ!コホイツ!」
社長「せき?」
秘書「すみません、コホんイイツ!」
社長「あ、まだ渡せない感じ?」
秘書「、、、すいません」
司令官「さっき渡せたのに、渡さないから」
秘書「、、はい」
社長「そーかぁ。」
司令官「ダメな部下をもつとお互い苦労しますな」
社長「え?」
司令官「うちにも使えない若者がちらほらいましてね。
 一介の軍人のくせに、哲学だの主義だの抜かしてこざかしいばかりです」
青年(声「コイツ」
3人「?」
秘書「!コホイツ!コホんイツ!」
社長「大丈夫?」
司令官「ああ、のどがかわいたなあ君」
秘書「あ、お茶ですかハイ」
社長「あ、ごめんね」
秘書「いえ!」

 秘書、退場

司令官「大丈夫ですか彼女は」
社長「(無視)ご用件は?」

 司令官、向き直り

司令官「倒産を控えたこの会社にとって、悪い話ではないはずだ」
社長「、、」
司令官「35年前、我が国を勝利に導いたキリンガスが、
 地下研究室のどこかに眠っているそうですな」
社長「、、さあ。なんのことだか」
司令官「いま、なんと?」
社長「おっしゃってることがさっぱりわかりませんが」
司令官「まさか社長も知らぬとぬかすか?」
社長「ええ」
司令官「軍部にたてつくとどうなるかわかっているのか」
社長「そんなつもりは無いです」
司令官「キリン博士をだせ」
社長「ミミズ博士なら、まぁいますが」
司令官「ふざけるな!」

 司令官。ドン!と青年の入っているミミズ箱を叩く

青年(声「あ」
司令官「あまり、おれを安くみない方がいいぞ」

 細胞分裂音が聞こえる
 ポワンポワワンポンポワワワン

社長「あ!」

 社長、ガスマスクをする

司令官「へっへっへっへっへっへ」

 司令官、ためすように、ココココたたく。

青年(声「え?」
社長「?」
司令官「あまり(ドン!)」
青年(声「あ!」
司令官「おれを(ドン!)」
青年(声「だめ!」
司令官「安く(ドン!)」
青年(声「やめ!」
司令官「みない(ドン!)」
青年(声「ああ!」
司令官「ほうがいい(ドン!)!」
青年(声「あ」
社長「?」
司令官「さあ、キリンガスを出せ」

 水がチョロチョロながれる音

司令官「水?」
社長「ですかね?」
青年(声「、、にゅう」
社長「、、にゅう?」
青年(声「(しくしく)」
司令官「これは?」
社長「すすり泣く音ですかね」

 司令官、銃をかまえる

司令官「へっへっへっへっへ」
社長「わわっわ、銃?」
司令官「キリンガスをだせ!!」
社長「ちょっと、なにがなんだか」
司令官「私は興奮すると頭がムキャーっとなるタチでね。
 我が軍は政府のやり方には昔から納得していなくてね。
 交渉のための材料としてこいつが必要なんだ。
 はやく仕事を終わらせよう。さあ、天才科学者はどこだ」

 伝世官から博士の声

博士(声「死んだ」
司令官「、、、なに?」
社長「おやじ」
博士(声「天才だったじょシェエ科学者は、自らを実験台にして死んだ」
司令官「死んだ?」
博士(声「死んだよ。
 自らを呪って死んだ。
 世界を亡ぼすキリンガスを産み出してしまった。
 自分の罪深さに気がついたんだ。
 ワクチンを作ろうとしたんだ。解毒剤をな。
 最期はもうほとんど狂っていた。
 狂人のワクチンが効くはずもない。
 自分でガスを吸い込み、死んだよ」
社長「、、、、」
博士「社長にはわざと言ってなかった。そいつは何もしらん。
 ただ、今まで、会社を運営してきただけだ」
司令官「ふん。では、キリンガスは?」

 助手、地下から登場する。

助手「地下二階へドージョ」
社長「え?」
助手「キリンガスをお渡しするそうでしゅ」
司令官「ほう?」
助手「、、、」
博士(声「ガスの管理は彼女から受け継いでいる、今は冷凍室にある」
司令官「わりと、物わかりが良いじじいだ」

 助手につづいて、司令官退場する

社長「、、、、」

 社長、伝声管へ行き

社長「、、冗談だろ?!」

 秘書、お茶なくて、水もってくる。

秘書「あ、お茶っぱ切らしてて。で、お湯より、水かなって」
社長「これ」

 社長、ガスマスクを秘書に渡し、地下へ。

秘書「(グス)」

 秘書、やっぱり花に話しかける

秘書「わたし、必要ないのかしら」

 くずれおちる。

 助手が上がってくる。
 伝声管に耳を近づける

助手「、、こっちからはよく聞こえない」
秘書「?」
助手「くそ!」

 青年の箱を蹴る
 助手、うろうろする

助手「くそ!じーさん、やっぱり隠してた!
 この国の軍隊に渡ったら終わりだ。また私の国が負けちゃう」
秘書「、、、あのう」
助手「わあ、なんで寝てんの!」
秘書「あなただって立ち上がれないこと、日に二度くらいあるでしょう。」
助手「それどこじゃない!(青年の箱を蹴る)」
青年(声「う!」
秘書「けんないで!」
助手「それどこじゃない!(青年の箱を蹴る)」
青年(声「う!」
秘書「けんないで!落ち着いて。ね。」

 水さしだす、うけとる、のむ。秘書、こっそりうれしい。

秘書「いくつ?」
助手「年?!それどこじゃないから!」
秘書「ごめん。あたしただ、ちょっと今日、いろいろ失敗して、そんで、友達になれるかとおもって」
助手「友達?どうして?理由は?」
秘書「えっと。理由か。あ。仲良い方がいくない?」」
助手「(ためいき)」

 助手、向き直り

助手「私、余計な事してる時間ないから」
秘書「余計?」
助手「わからないと思う。
 どちらかが勝ってどちらかが不幸になるの。
 私はミミズを食べるけど、ミミズが私を食べることはないでしょ。
 それと同じ。
 そして、あなたたちがミミズを食べることは決してない」

 助手。きびすをかえす。

秘書「あの」

 ガタ

青年「ちょっとちょっと!」

 箱があき、

助手「ぎゃあ!」
青年「ちょと言い過ぎじゃないかスパイのくせに」
助手「どっから出てくんの!」
青年「けんなよスパイ!」
助手「しらん!」
青年「黙って聞いてりゃなんだこのスパイ」
秘書「え?スパイ?」
助手「ばらしたな」

 細胞分裂音が聞こえる
 ポワンポワワンポンポワワワン

秘書「あ!」

 秘書、ガスマスクをする。

青年「ヘッヘッヘッッヘッヘ
 不幸不幸とひけらかしやがって!
 ミミズ喰ったらえらいんか!そうかい!
 ならみとけ!うががああ!」

 と、ミミズを喰う

二人「ぎゃあああああ!!」
青年「っががああ!うまあ!うままあ!」
二人「うぎゃあああああ!!」
青年「がああ!うまあまあ!うままあ!」
二人「うぎゃあああああ!!」
青年「どうじゃ!くったったわい!みたか!これで、、ウ」

 箱にしゃがみこみ、吐く

青年「エロエロエレレレエオレオレレオレ」
秘書「あああ」
青年「このやろうは、キリンガスを狙って1ヶ月前から博士にすりよっているスパイですよ」

 細胞分裂音が聞こえる
 ポワンポワワンポンポワワワン

助手「ふっっへっへっへっへ。
 ばれちゃあ、しょうがねえ。ベリベリベリベリベリ」
秘書「へ、変化なし!」
青年「いちいち余計なことすんじゃねえ!」
助手「しゅぱたン!」

 助手、青年からジャックナイフを奪う

青年「あ」
助手「借りた!」
青年「どうする気?」
助手「全員殺シュ!」
秘書「は?」
助手「ガスを国に持ち帰る」
青年「僕の上司強いよ」
助手「ぜったい殺シュ。まずあんたと、あんたから!」
秘書「何おっかないこといってんのぉ?!」
助手「やあ!」
秘書「わあ!」
助手「うらあ!」
青年「わあ!へっへっへっっへ!お前の国の神様、そんなに物騒だったっけ?」
助手「へっへっへっへっへ!
 あなたの国が豊かな理由は、
 あなたの国より貧しい国があるからです!
 あなたが幸せに感じている理由は
 あなたより不幸な人間がいると知っているからです!」
助手「競争に勝たなくちゃ。ピラミッドの上にいかなくちゃ」
秘書「ピラミッド?」

 助手、ピラミッドの階層をジェスチャーで描く

助手「ミミジュ、にわとり、ぶた、シャる、ひと、神シャマ!へっへっへっへっへ!」
秘書「、、、」
助手「貧乏、金持ち。私は幸シェになる」
秘書「お金あるから幸せとは限らないよ」
助手「お金ないと!!!!しょんなこと言えないしょ!」
青年「だからって殺し合っちゃだめだろ!」
助手「じゃあ、あなた、戦争を止められる?
 世界はあなたやわたしの思い通りになんかならない」
青年「なる!」
助手「あなたも雇われのくせに!ハンバーガーの国?ピロシキの国?」」
青年「僕はスパイなんかじゃない!」
助手「へっへっへっへっへ!」
青年「世界の平和を願うただの陸軍二等兵だ」
助手「歩兵に何ができるの」
青年「僕は世界と情報でつながっている。
 ホワイト、ブラック、イエロー、軍人、芸術家、実業家、犯罪者、
 世界中、あらゆる種類の人間たちで平和協定を結んでいる」
秘書「なんだかすごい人だ!」
青年「へっへっへっへっへ!」
秘書「でも笑ってる!」
青年「ぼくわ!キリンガスを処分する」
二人「え?」
青年「世界中の最終兵器を処分して、世界平和を実現する!そのためには、人殺しもする!」

 青年、銃を構える

秘書「待ってよおおおお!!」

 秘書、ジャックナイフとフォークを構える

秘書「銃をしまって!ナイフとフォークをしまって!
青年「おまえの神様は危険すぎるぞ!!」
助手「あなたの思想は夢物語!」
二人「へっへっへっへっへ!」
秘書「やめてよおおおお!!!!!!!!!」

 赤のランプ

 社長、走ってくる

秘書「社長!」

 社長、秘書のガスマスクを優しくはずす

社長「ここを出る」
秘書「え?」
社長「ミミズは毒ミミズになるそうだ」

 ブー、ブー、ブー、ブー、
 いやがる二人の狂人をつれて
 二人はどうにか出ていく

博士(声「もういいか?」
社長「いいよ!あ、待って!君」
秘書「あ。はい」

 秘書、野花を持ち

社長「行って」
秘書「いこう」
助手「へっへっへっmu' 'e' DaSov?qaSpu'DI' nI' yIjatlh! jIQuch vaj!」

 二人、逃げる。

社長「父さん!」
博士「、、、」
社長「いくぞ」
青年「へっへっへッヘ僕やっぱあの子好きだなぁ」

博士(声「さて」
司令官(声「へっへっへっへっへ」
博士(声「手を出して」
司令官(声「手を。ぐへへ」
博士(声「つめたいかもしれない」
司令官(声「スースーする」
博士(声「キャップをあけるぞ」
司令官(声「はい。ぐっへへ」
博士(声「はい。あけたー」
司令官(声「あれ?なにも出てこない」
博士(声「はい深呼吸。吸って吸って吸って」
司令官(声「スーハースーハーへっへっへ」
博士(声「はい終わりー
司令官(声「これほんとにキリンガスか?」
博士(声「ちいさいんだよ」
司令官(声「俺は目に見えないもんは信じないんだ」
博士(声「へっへっへっへっへ」

 銃声

 バン

司令官(声「へっへっへっへっへ。あれ?この戸、あかないぞ。おーい」

 赤の警報
 暗。

05■ミミズの女神さま

 暗の中、助手の台詞

助手「夢みたッシュ」

 おかしな、照明。

助手「えい!えいー!」
ミミズ「よせええ、いたったたたあ!」
助手「へへっへへへい!」
神「これこれ、そこの人間、何をしてるのでミミズか?」
助手「ミミズを、5つに、ぶちぎってんだよお」
神「これこれ、かわいそうに。そのようなことをすると、手ひどい目にあうぞ」
助手「へん!たかがミミズだもんにー!所詮、原始的な生物じゃねえか」
神「おじょうちゃん、ミミズはね、原始的で単純なやつほど、再生能力があってね。すべての断片が完全なミミズに再生するんだよ」
助手「なに!?」
神「自然状態では自ら断片化してそれそれが再生することで増殖しているんだよ」
助手「笑止!嘘だね」
神「うそじゃないミミよ。『ミミズ 切る 再生』でググってごらん」
助手「ぐ、ぐぐう」
ミミズ1「おれは、ヤマトヒメミミズ」
ミミズ1と2「単純な小型環形動物だ」
ミミズ1と2と3「普段は自分自身を切断して増殖する派」
ミミズ1と2と3と4「つまり全ての断片が再生」
ミミズ1と2と3と4と5「生殖器官も再生するぜ」
助手「たたたたすけてえ」
神「ほうら手ひどい目にあってるでミミズ」
助手「せまいようココせまいよう」
ミミズ5匹「歌います」
助手「やめてえ」

 ミミズの唄が歌われる。

 ♪目、見えないけど、脳みそ、無いけど
 ♪メガスコリデス・アウストラリスは3メーター
 ♪ミクロカエトゥス・ラピは6メーター
 ♪おまえらよりでっかい

 唄のあいだ、執拗にみんな寄りついてくる

助手「ぬめぬめするーぬめぬめするー」
神「カンブリア紀にはすでに『オットイア』と呼ばれている環形動物、えら曳虫類が存在していたミミ。 クレオパトラ7世は『ミミズは神様』とあがなったミミ」
助手「ミミズにおしっこをかけると」
ミミズたち「あそこがはれあがるぞ」
助手「あなたはミミズの神さまですか」
神「ミミズ土公神ハッティフナット」
ミミズたち「大地のはらわたミミズです」
神「ミミズは5億年前から地球の土を耕し続けて、お腹で新しい細菌を産み続けているのです。細菌は突然変異を繰り返し、進化に貢献してきました。さすれば、ヒトもミミズの子孫です」
助手「神様」
神「ミミズたちよ、整列」

 いろんな方向みてる

助手「全然まっすぐじゃないの」
ミミズたち「ミミズだからな」
神「はい、きょうつけ」

 ウネウネしてる

助手「きょうつけしてよ」
ミミズたち「ミミズだからな」

 助手、ミミズと一緒にウネウネ揺れ出す。

助手「それもいいかもしれない」
全員「それもいいかもしれない。ミミズになって、みんな一緒にうねうね地下で、目も耳も考える脳みそもなく、仕事も恋も哲学もうっちゃって、この星を食べては出して耕して、役にたったほうが幾分、ましかもしれない。ましかもしれないなぁ」

 真っ赤な舞台
 神、ミミズたち、もぞもぞといなくなる。

06■

 どっかでコンロに火をつける音がする

 ミミズの箱のふたがあく。

 博士の頭が出てくる。

博士「あれ?」
女「あら、起きたのね」
博士「どのくらい寝てたんだろう」

 女の頭が出てくる

女「そりゃもう、ずいぶん」
博士「君、ずいぶんと若くないか」
女「もっと夢のある生き物を相手にしてよってはなし、覚えてる?」
博士「あー。ミミズなんかより」
女「たとえばキリンとか」
博士「キリンが一体なんの役にたつんだ」
女「だから優雅なのに」

 壁の絵をみる

博士「これ、キリンだろ」
女「やっとわかったの」
博士「誰の絵だっけね」
女「わたしたちの自慢の息子」

 間

博士「こうして見るとうまいもんだねえ」
女「そういうことも言えたのね」
博士「人生なんて、なんのためにあるんだろうねえ」

 秘書と社長がはいってくる
 男と女、それを箱から見ている。

秘書「まず、お湯をわかし」
社長「わかした」
秘書「人数分、入れます」
社長「人数分?1、2、」
秘書「(実験室をみて)さん?」
社長「、、はい(入れる)」
秘書「あ」
社長「なに」
秘書「ほんとはそれ、あっためとくんですって」
社長「どやって」
秘書「お湯で」
社長「もうないよお湯」
秘書「じゃあ、、まあ、、いっか」
社長「大丈夫か」
秘書「たぶん」
社長「わりと大雑把だな」
秘書「いいの。で、粉を」
社長「こな?」
秘書「コーヒーの粉を」
社長「はい。これ」
秘書「入れてください」
社長「どこに?これ?」
秘書「ちがう!」
社長「怒るなよ」
秘書「考えたらわかるでしょう」
社長「わからんて」
秘書「こっち」
社長「こっちね」
秘書「まって!」
社長「なに」
秘書「フィルターは?」
社長「なにそれ」
秘書「信じられない」
社長「なにが?」
秘書「準備」
社長「すいません」
秘書「ちゃんと(フィルターをつける)」
社長「はい」
秘書「粉を入れて」
社長「どのくらい」
秘書「さんにん」
社長「さん、にん」
秘書「絶対濃い」
社長「いちいち言うね」
秘書「事実ですから」
社長「あ、火をつけて」
秘書「はやい!」
社長「すいません」
秘書「まずセットして」
社長「うん」
秘書「火をつけて」
社長「よし」
秘書「待つ」

 コーヒーサイフォンを待つ二人
 博士と女、箱をそっとしめる。

社長「ねえ、君」
秘書「はい?」
社長「この前言ったことなんだがね」
秘書「なんですか」
社長「うーんとね」
秘書「なんですか」
社長「いや」
秘書「今、本気なんであとでいいですか」
社長「あ、うん」
秘書「あ!ふっとうした!第一撹拌!」
社長「え?はい、あつ!」
秘書「かして!」
社長「、、、」

 秘書、サイフォンに夢中になる。

社長「2本のやつも入れば、5本のやつもいるし。
ひたいに生えるやつもいれば、下あごに生えるやつもいる」
秘書「なんのはなし?」
社長「つの」
秘書「あごに生えるんですか?」
社長「きりんのツノってなんかの役に立つのかしらって言うからさ」
秘書「第二撹拌!」
社長「いいにおいだな」
秘書「ね」
社長「うん」
秘書「良かったですね」
社長「うん、産まれて良かったな」
秘書「あ、いけない。ちょっと御願いします」
社長「どうすんの?」
秘書「これ読んで(説明書を渡す)」
社長「どこいくの」
秘書「一本電話いれてきます」
社長「あ、ちょっと」

 社長、伝声管から、父親に話す。

社長「コーヒーできたぞー」

 耳をちかづけてみる

 音楽

 なんか聞こえたかも。
 
 暗

<了>

2014年7月
============
・許可なく上演コピー配布することを禁じます。
・許可については別記
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たくさん台本を書いてきましたが、そろそろ色々と人生のあれこれに、それこれされていくのを感じています。サポートいただけると作家としての延命措置となる可能性もございます。 ご奇特な方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いいたします。