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大学院で転んだ話【1】

昔から学者になることを志していた自分。
身の回りを豊かにする便利なモノを開発したい、その思いで研究者になることを夢みていた。

高校生の頃から大学院へ進むことは頭にあり、当たり前のように大学を卒業し、気がついたら大学院に進学していた。

学部・修士と年月を重ねて、研究のイロハがようやく見えてきた頃に、自分は夢の実現に少しずつ近づいていることを実感していた。

風向きが大きく変わったのは修士2年の初期、博士課程への進学を決めて日本学術振興会特別研究員(通称: 学振)の申請書を書いていた頃だ。

何も書けなかった。

学振の申請書は、研究背景やその意義、実験計画などを詳細に書かねばならない。
研究背景こそ書けると思ったが、それ以降は真っ白な状態になった。

そこからは自己嫌悪に陥る日々が続いた。「なんで書けないのか」「自分は研究能力がなく向いてないのか」「今まで頭動かしてなかったのか」などと、憂鬱な日々を過ごし、研究室へ行かなくなった。

食欲も無くなり、寝るだけの生活を過ごし、申請書は最終的に出せなかった。

自分に研究能力がないことを目の当たりにし、ひどく落ち込んだことを覚えている。「今までは言われたことをこなしてきただけか」「自分は主体的に研究を進めていなかったのか」などの思考回路しかなかった。

おそらく、自分は研究者に向いてないのだろうと思った。物事には向き不向きが必ずしてある。
ここら辺で退いていればよかったかもしれない。

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