即興小説「ペンギンの夢」

・お題:暑い小説家 時間:30分

(今年の夏は異常に暑い。)岡本氏は汗を拭い、机の上のパソコンに向かった。週刊誌に連載しているエッセイの締切が明後日までなのだ。岡本氏は何事にも余裕を持って臨む性格である。小学生の頃は翌日の持ち物をきちんとランドセルに詰めてからでないと眠れなかったほどだ。よって、岡本氏は原稿を締切の1週間前までには担当編集者に送信することを常としていた。
それが今回は、まだはじめの1行さえも書けていないのだ。これは由々しき事態だった。
(この暑ささえなければ…)岡本氏は暑さにはとても弱かった。しかも、年々ひどくなるような気がする。このままでは仕事ができないと踏んだ岡本氏は、思い切って都会から離れた高原に滞在することにした。幸い、打ち合わせはすべてリモートだし、人と会わなければならない予定はない。パソコンとスマホさえあればどこにいても仕事はできる。
列車で高原に降り立った岡本氏はほっと息をついた。都会のうだるような暑さがない。日差しはあるが、湿度が低く過ごしやすい。これなら仕事も捗るだろう。
岡本氏はさっそくホテルの部屋でパソコンを立ち上げ、エッセイの執筆にとりかかった。
「わたしはいま、××町の山奥のホテルに来ている。涼しい木陰と鳥たちの声がわたしを癒し…」ここまで書いたところで、岡本氏は異変を感じた。妙だ。さっきまで快適だと感じていた気温が、明らかに上昇している。腿の裏にはじっとりと汗をかいていた。岡本氏はホテルのフロントまで降り、フロント係に現在の気温を尋ねた。
「いまは31度ですよ。おかしいなあ、ここはクーラーがいらないくらい涼しくて、夏でもこんなに気温が高くなることはないはずなんですが」
それを聞いた岡本氏は、わけのわからない恐怖に取りつかれて言った。
「君、急用ができたので今日の宿泊はキャンセルするよ。もちろん、宿泊代は全額払う。」
岡本氏は逃げるように列車に飛び乗った。だめだ、もっと北へ行かなくては…
岡本氏がその北の大地の果へたどり着いたのは夜だった。周囲に宿は数軒しかない。それでも岡本氏は満足だった。あのうだるような暑さがここにはない…。
見通しは甘かった。翌朝になると、岡本氏のパジャマはぐっしょりと汗を吸っていた。
だめだ、もっと北へ、もっと北へ。岡本氏の頭にはそのことしかなかった。ついに岡本氏は氷で閉ざされた北の国へ向かう連絡船に乗った。これで、いくらなんでも大丈夫だろう。岡本氏は船の仲でパソコンを開いた。「ペンギンたちに会うのが楽しみだ。」執筆しながら満足そうな笑みを浮かべ、うたた寝する岡本氏の頭上のテレビでは、北極の氷がものすごい勢いでとけていることを知らせるニュースが写っていた。

・即興小説がつくれるサイトなんてあるんだね!面白かった!全然時間なくてものすごくアンバランスな文章になった。最初の方の文章長すぎ。笑

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