【財務分析】大手企業を分析するコツ 楽天の場合

社外経営企画室長の濱口誠一です。中小ベンチャー企業が儲かる体質になるための財務コンサルティングを行っており、特に経営実態と目指す姿を「数値化・言語化」する活動を行っております。

大手企業分析のコツ「セグメント」

 今までは決算書をそのままリバース財務ツリー用いて可視化してきましたが、大手企業、特に複数事業を行っている企業の場合は、決算書をそのまま活用しても分析効果が薄くなります。そこで、「セグメント」と言われる切り口ごとに分析を行います。

 セグメントとは、端的にいうと「事業の分解単位」のことです。

楽天の場合

 楽天の場合は、次のようなセグメントになっています。

・インターネットサービス:楽天市場を中心とするECサイト
・フィンテック:カード、銀行、保険などの金融
・モバイル:新規に参入した携帯事業

楽天の特徴はEC事業と金融事業を同時に行っていることです。当然、収益構造もビジネスモデルも全く異なるため、「楽天」という一つの塊だけで分析しても効果が薄くなり、それぞれの事業ごとに見ていく必要があります。

では、楽天のセグメントごとの実績はどうなっているでしょうか?昨年度(2019年12月期の数値で見てみます)

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営業利益は前年より約▲1000億、半分以下に低下しています。売上高は全セグメント増加していますが、インターネットサービスとモバイルは営業利益が低下しており、「粗利以上に費用が増加した」状態です。

IR資料によると、「先行投資」が原因のようですので、この先行投資が成果に結びついて営業利益も改善するのか、それとも投資回収には至らないのか、今後の展開に注目です。

また、従業員一人当たりの売上で見るとフィンテック部門は一人当たり1億円とかなり生産性が高いことがわかります。営業利益率も最も高く、楽天を支える事業です。

見方によっては、フィンテックで稼いだ利益(693億)をモバイルに投資をして(▲601億)、基幹事業のインターネットの部分を利益として残している(907億)とも言えます。

セグメントごとの判断×総合判断

楽天に限らずセグメントを分析するときに考えるべきことは、
①各セグメント単体で見たときに収益性
②会社としてのセグメントの位置づけ

です。①を見るときには、それぞれのセグメントを競合他社と比べてみます。楽天であれば、インターネット事業はEC事業、フィンテック事業は金融・決済事業との比較ですね・

②はIR資料や各種分析資料から読み解きます。楽天の場合は、「楽天経済圏」という言い方がされており、インターネットでの消費者を楽天ポイントを通じてつなげる、つまり、フィンテック収益につなげる、としています。フィンテック以外のセグメントは、極論すれば「フィンテックへの入り口」ともいえるかもしれません。実際にフィンテックは利益率が高いので、ここに誘導する戦略自体は間違っていないでしょう。

このように、大手企業や多角化企業を見る際には、決算書そのままではなく、セグメントの観点から分析すると、様々なことが見えてきます。

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