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ダイアローグ 対話する組織(前編)

背景

対話における不思議な効果については、これまで述べてきた通りだが、

この効果についての学術的な観点からの説明をしてくれる書籍があったので、こちらにまとめておく。

参考文献:


導管メタファー

現在、教育やビジネスの現場では、導管メタファーによるコミュニケーション主流となっている。導管メタファーとは、情報を有形のモノとして捉え、話し手から受け手の間のパイプを通して、情報を伝達するというコミュニケーション観である。主に産業革命時に、標準化した労働力を大量に生成するために考えられた手法で、特に効率的な情報の伝達を目的としている。

しかし、情報伝達の効率化を重視したこの方法では、「伝わらない何か」が存在する。例えば、会社の理念(顧客第一主義)を社員に伝える場合に、顧客第一主義という文字列は情報として伝わるが、それを社員が腹落ちして行動変容まで結びつけることができなければ、伝わったとは言えないはずである。つまり、この状況では、「伝わらない何か」が存在しているはずであり、それが腹落ち感、つまり聞き手が『共感する』という感覚であると考えられる。

聞き手の共感を得るための『対話』

情報伝達だけでは伝わらない何か、それについてはアカデミックな視点からさらに詳しく説明されている。ある夫婦がボトルに半分残ったワインを見ている。夫は、そのボトルをみて「まだ半分ある」と考えるし、妻は、「もう半分しかない」と考える。客観的事実は同じ(ボトルには半分のワインがある)なのに、与える意味(まだ半分もある/しかない)は人によって異なる。つまり、客観的な事実を共有しても、その意味付けまで共有できないと、その後の協調的な行動をとることは難しくなる(夫はワインを飲み続けるだろうし、妻は、コルクをしてしまうだろう)。

このように物事の意味とは、客観的な事実ではなく、人々のコミュニケーションの中で作られたものであるという主張を『社会構成主義』という。つまり、この観点から、協調的な行動をとるためには、つまり相手(聞き手)の共感を得るためには、相手との意味/意味づけを共有することが重要であるという視座が得られる(つまり、先ほどの例でいくと、妻は半分しかない、これ以上飲むのはもったいないと考えているんだな という意味づけを理解することで(共感することで)、今日はやめておいて、週末また飲もうか(協調的な行動)をとることが可能である)。このような客観的事実から相手の意味づけを理解するための方法として、『対話』が重要性であると考えられている。

対話の位置づけ

まず、『対話』について理解するために、『対話』と似たようなシチュエーションを比較してみる。


雑談:テーマがなく、自由な雰囲気で、たわいないおしゃべり。ゴールの設定はなし。

対話:テーマが決まっていて、自由な雰囲気で、真剣な話し合い。ゴールとして、テーマを吟味したり、再定義したり、合意できる。

議論:テーマが決まっていて、緊迫した雰囲気で、真剣な話し合い。ゴールとして、結論を出す。

このように、対話とは、①共有可能なテーマのもとで②聞き手と話してで担われる③創造的なコミュニケーションであると定義できる。また対話をする場合に重要な視点としては、相手の話を『聴く』こと。つまり、話し手が、一方的なおしゃべり(モノローグ)ではないし、かつ聞き手は、即時の自分の判断を留保して、虚心にその人の話を聴く必要がある。つまり、コミュニケーションにおいて、聴くとは積極的でかつ意図的な行為として考えるべきである。これらを踏まえて対話によってもたらされる効果としては

①相手の話を聴くことで、相手の意味づけのプロセスを理解する(共感する)ことができる

②自分が話すことで、自分自身の意味づけのプロセスを理解でき、自己の内省が可能となる。

まとめ

以上、書籍『ダイアローグ 対話する組織』から対話における学術的な視点からの効果について説明した。つまり、世の中の構成物質は、人と人の間のコミュニケーションによって存在するという社会主義的視点をとると、我々は、『対話』によって、相手の意味づけのプロセスを理解することができ、つまり相手に共感することができ、その後に協調的な行動をとることができる。これまで肌で感じていた『対話』の効果について、学術的な視点からの整理を行うことができ、大変有意義な書籍であった。本書籍の以降、『対話の組織における効果』については、後述する。



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