得手勝手

　人格「桂子」のためか、高校卒業のころは少女のような性格をしていた。
　顔つきも少女のようだったが、性格がまるで女性というのは、人格が交代したと考えるのが自然じゃないか。
　高校の元クラスメートの男が五人くらい、車でドライブに誘いに来る。いつでも彼女のような体裁で、助手席に乗って連れまわされてしまう。無口でなんでも言いなりになるから、男たちに都合のいい。
　渡辺がいつでも電話をかけてきて、こっちの都合をお構いなしにドライブのお供とさせられる。仕事を休まされてデニーズへ連れていかれることもあった。
「おれのコーヒーは黄色いんだ。泡が出るんだ」
　そんなことを言って、車を運転している。この渡辺を一度だけデニーズに呼び出したことがある。
　一皿三百円くらいの野菜を十皿ほど注文して、それを渡辺は三十分ほどで黙々と食べた。
　数えきれないほど誘い出され、連れまわされて、自分のほうから誘い出したのがこの一度である。渡辺は野菜を食べ終わったらビールを飲んだ。
「もう帰っていい？」
　至極迷惑そうだった。それは得手勝手じゃないかと思ったが。