11年来

浜村凡平です。

友人から怖い話を聞きました。


『男は先にサンマ定食を食べ終わると、女が同じサンマ定食を食べているのを、横を向いたり携帯を見たりしながら待っていました。女に「食べてるとこ見ないで。」と強く言われたからです。

二人は付き合って三回目の食事デートでした。女は付き合う前、「食べ方が汚いから。」という理由で、食事に行くのを頑なに拒みました。付き合ってから初めて行った食事では、男は女の食べ方は特に気になりませんでした。二回目の食事でも特に気になりませんでした。三回目の食事で和食の店に入りました。「魚は絶対いやだ。」という女を、「食べ方汚いからって嫌いにならないから。この前も全然汚くなかったし。」と、魚の口になっていた男が説得しました。

「ごちそうさまでした。」

女が食べ終わり箸を置き、男が前を向くと、サンマがあった皿の上には、小さい小さい寺がありました。サンマの骨でできた高さ5センチくらいの綺麗な寺です。

「え?……なにこれ?」
「だから言ったじゃん。食べ方汚いって。魚は骨があるからうまく食べられないんだって。」
「いや…汚いっていうか…綺麗だよもう。え?何これ?魚の骨アートじゃん?というか骨足らなくない?そんなにあった?なんでこんなことできるの?」
「知らないよ。子供の時からずっとそうだもん。魚を普通に食べてるといつのまにか寺できてんだもん。」
「え?寺を作ろうと思ってやってないの?」
「やってないよ。普通にただ食べてるだけ。なぜか寺みたいなのになんの。だからやだって言ったじゃん。」
「……え?いやすごいよこれ。え?もう一回食べれない?」
「は?」
「いやだって見たいもん。」
「無理だよ。お腹一杯だもん。」
「お願い。お願いします。すいません!アジの開きください!あー、頼んじゃった。ごめん。食べれなそうだったら俺食べるし残していいから。お願い。」

女は、最悪だ、と思いながらも、今までにこの食べ方を気持ち悪がってきた男達の顔と、目の前の、好みど真ん中すぎるくらいど真ん中の男のわくわくした顔を比べて、渋々了解しました。

男は、女の許しを得て、食べている間ずっとアジの開きを見ていました。身も骨もぐちゃぐちゃになっていくアジの開き。あれ?寺できないのかな?と思っていると、食べ終わる少し前から、パーツとパーツが合体していくかのように骨が組み合わさり、食べ終わる頃には綺麗な寺が出来上がりました。

「え?なんで?すご!」
「すごくないよ。食べてるだけだもん。」
「いやすごいよ!しかもこれさっきと違う寺じゃん!すごすぎる!食べ方汚くなんかない!これ…すごい。あ…あの!結婚してください!」
「え?」

二人は結婚しました。


五年後。
体重が240キロになった女は、魚の骨アート展が開かれている、自分が魚の骨で作った会場の、自分が魚の骨で作った控え室の、自分が魚の骨で作ったドアを開けました。そこでは夫である男が、自分が魚の骨で作った女性と性交していました。

「え!?トークショーの時間じゃ?……あ。いやこれは。……ごめん。言おうとは思ってたんだ。」
「気付いてたよ。え?なんで?それ元々人間じゃないんだよ。魚の骨だよ。…なんで?」
「…ごめん。好きになっちゃったんだ。それにほら、なんかね…前と変わりすぎちゃったっていうか…。」
「あんたが喜んでくれるからこんなになるまで食べてきたんじゃん。」
「……うん。そうだね。ごめん。」

女は涙を手でぬぐった後、自分が魚の骨で作った拳銃を、男と自分が魚の骨で作った女性に向けて撃ちました。
女は死体になった男を、自分が魚の骨で作った包丁で切り分け、自分が魚の骨で作っていない箸、五年前に男からプレゼントされた箸を使って、泣きながら食べました。

「……まずいよ。おえっ。魚じゃないからもっとうまく食べられないし。うえっ。でも成仏してほしいから頑張って食べるね。」

女は八割がた身を残して男を食べ終わりました。

男の骨で、犬小屋のようなみすぼらしい寺が出来上がりました。

「……ダメだ。やっぱり私、食べ方汚いじゃん。」



人が食べたいものを無視して自分が食べたいものを押し付けるとこういうことになるよ。』



友人が中目白黒の海苔佃煮バーで出会った、とてもきれいにスペアリブを食べる女性から聞かされたらしいです。




うん。自分が食べたいからって押し付けるのはやめよう。


あとどれだけ可愛くても魚の骨に気持ちもってかれたらやばい。気を付けよう。






ん?ちょっと待てよ。この記事を書いてて気付いたんだけど、中目白黒なんて無くない?中目黒だろ。あと海苔佃煮バー?行ってみたいと思ってたのに調べたら出てこないぞ海苔佃煮バー。てか海苔バーも佃煮バーも出てこないじゃねえか。


うわ!騙された!くっそ~!

おい!小泉の進次郎ちゃんよ!どうせこのnoteも見てるんだろ!

次会ったら!しっぺでこぴんばばちょっぷ!だかんな!

♪銭がなけりゃ~君~銭がなけりゃ~