12年来

浜村凡平です。

友人から怖い話を聞きました。


『男は25年間勤めているテレビ局の中でも入ったことのない場所に侵入していました。完成した素材を送信所に送り出す主調整室に。

「…これか。…これを切り替えればあの時のテレビに。俺が憧れてたテレビに戻るんだ。」

男は現在全国のお茶の間のテレビに届いている映像の画面を見ていました。

(なんなんだよこれ。いつからこんなことになっちゃったんだよ。こんなのテレビじゃないよ。俺が好きだったテレビはどこいったんだよ。)

ザーザーザーザー。画面にはいわゆる砂嵐が流れていました。

男が働きだした25年前の時にはもうテレビは砂嵐だけを流していました。全放送局、全時間帯、国営放送も民間放送も。砂嵐を流すと視聴率がとれるという理由でした。男がテレビ局に入社してから25年間でやってきたことは砂嵐の粗さや黒みやザーザー音等を調節して少しでも視聴率を上げることでした。男が作った砂嵐が視聴率30%を越えた事もありました。男が作った砂嵐が8年続いた事もありました。

(俺は砂嵐が作りたかったわけじゃない。子供の時に見たテレビみたいなのが作りたかったんだ。なんでだ?なんでみんな砂嵐が見たいんだ?ネットの時代とか言われたりしてるけどそもそも砂嵐だから。砂嵐見てる奴も砂嵐作ってる奴も砂嵐の合間にCM流すスポンサーもおかしいって。砂嵐だぞ。何を見てるんだ?)

「……ううぅ。」

催眠ガスで気絶させていたスタッフが起きかけました。咄嗟に男は万が一のために用意していたナイフで刺して殺してしまいました。

(……やってしまった。すまない。俺はただ、砂嵐を垂れ流すのを止めたかっただけなのに。人を殺してしまった。もう取り返しがつかない。……これが終わったら自分も死ぬしかない。でも最後にあの時のテレビを。)

男は手が震えるのを必死で抑えながら操作して、自分が用意した映像に切り替えました。

(……テレビはやっぱこれだよな。)

画面にはカラーバーが映っていました。全国のお茶の間のテレビにカラーバーの映像が届きました。

(何年ぶりだろう。カラーバー。色がついてるよ。見てたなぁカラーバー。やっぱ最高だなカラーバーは。テレビはこうでなくちゃ。)

男は初めて見たカラーバー、はまりにはまったカラーバー、次の日学校で話題もちきりだったカラーバーの事を思い出しながら画面に映るカラーバーを見ていました。

(………。あれ?…でも?)

男は携帯を取り出し、保存してあった、猫が映っているだけの動画を見ました。

(……こっちの方が面白い。嘘だろ…。カラーバー…そんなに面白くなかった……。カラーバー!面白くないのかよ!なんてことだ!)

男は自分の首をナイフで刺して死んでしまいました。画面のカラーバーが赤一色になりました。



昔はよかったとか思いすぎるとこういうことになるよ。』



友人がタロウ電機のテレビ売り場で出会ったピン芸人のアナログヤマダ似の人から聞かされたらしいです。




うん。昔はよかったとか思いすぎないようにしよう。


あと侵入しちゃ駄目。咄嗟にでも刺しちゃ駄目。






ん?ちょっと待てよ。この記事を書いてて気付いたんだけど、タロウ電機?いやヤマダ電機だろ!ヤマダタロウってか!なめてんのか!あとピン芸人のアナログヤマダ似?そんな芸人いないよ!アナログタロウさんはいるけど!ヤマダタロウってか!なめてんのか!おかしいとは思ってたんだ!8歳の姪にこの話したら「砂嵐って何?」って言われた時から!デジタル放送になって砂嵐なんてしばらく見てないよ!どこかの違う国の話をアナログヤマダ似の人がアナログ通だから教えてくれたのかなと思ってたのに!アナログヤマダがそもそもいねえじゃねえか!


うわ!騙された!くっそ~!

おい!羽鳥の慎ちゃんよ!どうせこのnoteも見てるんだろ!

次会ったら!しっぺでこぴんばばちょっぷ!だかんな!

♪銭がなけりゃ~君~銭がなけりゃ~