19年来

浜村凡平です。

友人から怖い話を聞きました。


『男が仕事を終えワンルームの自宅に帰宅すると暗闇の中に何かの気配を感じました。
恐怖心を消すように、「誰だ!」と叫びながら電気をつけました。
するとそこには、顔がのっぺらぼう、服なども着ていない、形状だけ人間と同じような、全身が真っ黒のスチールウールのような化け物が胡座を組んで座っていました。

「………。」

男が絶句していると、その化け物が、

「おかえり。君の分身だよ。」

「……分身?」

化け物は立ち上がりました。
化け物を見ると、確かに男と同じような背格好。少しだけなで肩。ぽてっとした腹。上半身に比べて細い足。全て男と同じでした。

「色でわかるだろう?ぼくがどういう存在か?」

化け物は真っ黒です。

「………もしかして、俺の…醜い、悪い心とかが集まってできた?そういう存在なのか?」

「違うよ。君は確かに汚い人間だ。汚いからこそ僕がどういう存在か心当たりがあるだろう?」

「……どういうことだよ。それ以上ってことか?人を憎む。憎悪の念。いや、もっとどす黒い、恨み。殺意。そういうのが形になったものなのか?」

「違うよ。にぶいね。汚いというのはね、掃除をしないってことだよ。」

「掃除?」

「僕はねぇ……、君が……、この部屋に落とした……、陰毛が集まったものだよ。」

「……?」

「陰毛でできた分身だよ。」

「……え?……いや、…そこまでは落ちてないでしょ。さすがに。何万…いや何百万本…とかないと。」

「17501449本だよ。それでも中は空洞だけどね。君は1750万以上の陰毛を落とし、そして放置してるんだよ。だから僕が生まれたんだから。」

「………。」

「さあ、どうするんだい?これから僕と一緒に生活するのか?それとも掃除機を手に取るのか?一択だと思うけどねえ。」

「………。」

男は久しぶりに押し入れの奥から掃除機を出してきました。そして掃除機をぶっ壊しました。

「え?」

「お前は俺だ。一緒に暮らそう。」

「………わかったよ。」

それから二人、いや一人と17501449本、の共同生活が始まります。男は新しい掃除機を購入し、17501449本以外の陰毛はすぐ掃除するようになりました。しかし、全ての陰毛を掃除することはできません。数ヶ月が経ったある日、17501449本だった陰毛は、17501873本の陰毛になっていました。

17501873本の陰毛が寝ていると、ウィーンという音が聞こえてきて、目を覚ましました。

男が泣きながら17501873本の陰毛に掃除機を向けていました。

「起きちゃったか。ごめんな。なんかさ、お前、変わっちゃったんだよ。ごめん。」

「………。大丈夫だよ。君にはお世話になったね。今までありがとう。」

そう言うと17501873本の陰毛は自分から掃除機に突っ込んでいきました。

しかし吸い込まれて100000本を越えたあたりから掃除機が詰まってしまいます。バラバラに散らばる陰毛と、形状を残してのたうちまわる陰毛。男はその陰毛地獄絵図を見るのに耐えられず、自分の目を潰しました。

男の目からは涙と血がとめどなく流れました。


こまめに部屋を掃除しないとこういうことになるよ。』



友人が佐山県に住む、常に目を閉じていた高祖父から、子供の頃に聞かされたらしいです。




うん。きれい好きではないけど掃除はこまめにしよう。


あと陰毛に愛情はもたない方がいい。






ん?ちょっと待てよ。この記事を書いてて気付いたんだけど、佐山県なんて県、無くない?検索したらやっぱりねえじゃん佐山県。で高祖父も調べたら曾祖父の父って。生きてるうちに会ってねえだろ多分。


うわ!騙された!くっそ~~!

おい!平井の堅ちゃんよ!どうせこのnoteも見てるんだろ!

次会ったら!しっぺでこぴんばばちょっぷ!だかんな!

♪銭がなけりゃ~君~銭がなけりゃ~