14年来

浜村凡平です。

友人から怖い話を聞きました。


『男は山を彷徨っていました。当てもなく彷徨っているというよりは、何かを当てにして彷徨っていました。疲れで意識が朦朧としてきました。今回は諦めるかと思っていると、

ガサッ。

音が鳴った方を見ると熊がいました。

(……いた。……やっとだ。やっと見つけた。)

熊は男に気付き、警戒しているのか、じっとその場を動きません。

(襲ってくんなよ。襲ってきたら全て台無しだからな。)

男は死んだフリをしました。熊は男を少し観察してから、どこかへ行きました。男は熊が立ち去ったであろう音を聞きながら、少しだけ微笑みました。

(ありがとう。)

男は死んだフリを続けました。

([熊に会ったら死んだフリ]か…。違うんだよ。最後まで教えてくれないと。[熊に会ったら死んだフリをして、熊がどこかへ行ったら、起き上がり安全な場所に避難する。]そこまで教えてくれなきゃ。なあ?けんちゃん。)


20年前。
少年だった男は友達のけんちゃんとその山に探検に入りました。二人は迷ってしまいました。そして熊に遭遇しました。咄嗟に二人は聞いたことがあった[熊に会ったら死んだフリ]をしました。熊はどこかへ行きました。

「けんちゃん。もう大丈夫だよ。熊どっか行ったよ。」

「………。」

「けんちゃん。何やってんの?もう死んだフリいいよ。」

「………。」

「そのうち熊戻ってくるよ。早く逃げようよ。」

「………ぶつぶつ。」

「え?」

「…死んだフリしなきゃいけないから。この後どうすればいいか聞いてないもん。死んだフリしとかないとやばいよ。まだ全然死んだフリできてないから。」

「なんで?純粋すぎるって!もういいんだよ!絶対帰った方がいいって!けんちゃん!」

「………。」

「けんちゃん!」

「………。」

「俺行くよ!知らないよ!」

「………。」

男はけんちゃんを置いて一心不乱に山を下りました。無事に山を下りた男は、大人たちに事情を説明しました。けんちゃんの捜索が開始されました。しかしけんちゃんは見つかりませんでした。けんちゃんは死んだフリをした7年後、戸籍上も死んだフリになりました。

男はずっと後悔をしていました。
けんちゃんの分まで頑張ろう、そう思えば思うほど人生は空回りしました。30歳を目前に全てを失った男は、けんちゃんと同じ死に方で死ぬことに決めました。


(腹減ったな。すごいな、けんちゃん。バカすぎるよ。多分けんちゃんのことだからほんとに死ぬまで死んだフリしてたんだろうな。俺にそこまでできるかな?あー、体痛いし。腹へったなー。)

「……コ…ウジ?……コウジ?」

(…ん?幻聴か?)

「…コウジヤンナ?オイ。コウジヤロ?ナニシテンネン?ダイジョウブカ?」

肩に何かが触れました。

(…あれ?幻聴じゃない?)

男が薄目を開けて目線だけ声がする方に向けると、そこには人間の足のようなものがありました。

(…まさか?)

「…オイ。コウジ。…ケンジロウヤ。」

(けんちゃん!!!)

男は目を開けて起き上がりました。

「けん…………」

そこには動く腐乱死体、いわゆるゾンビがいました。

「けん…ちゃん…?」

「ソヤデ。オー、ヒサシブリヤナ。ソッカ。コレナ。シンダフリ、ウマスギタンカナ?アレカラ、ゾンビニ、ナッテモウテン。デモ、オモカゲワ、アルヤロ?」

「………うん。」

面影は全くありませんでした。ドラゴンクエストに出てくるモンスターのくさったしたいにしか見えませんでした。

「ゾンビデモ、カラダワセイチョウスンネンナ。デモ、コウジモ、デカナッタナー。」

「……うん。え?ていうか、けんちゃん関西弁だったっけ?」

「ア、ソウカ。イヤ、モトモト、アコガレテテン。デモ、キュウニ、ツカイダシタラ、ナンカイワレルヤン。デモ、モウヒトリヤシ。エエカー、オモウテナ。テカ、シャベレテル?」

「うん。喋れてるけど。」

「ヨカッタワ。ヒトリデモ、ブツブツ、シャベットクモンヤナ。デ、ナニシテタン?シンダフリヤッタラ、ヤメトキヤ。ゾンビナッテマウデ。」

「うん。あのさ、…けんちゃん。あの時、置いていってごめんね。」

「ナンデヤネン!ジブンデ、ノコッタンヤナイカ!アレナー、オキテ、カエラナアカンカッテンナ!ハハハ!」

「そうだよ。でも…謝れてよかった。ずっと後悔してたから。」

「キニシテヘンッチューネン!ハハハ!」

「よかった。ははは。」

バキガギバキガギ!ボゴーン!バゴーン!バキボキ!ガサーン!

「…ナンヤ?」

二人が音を鳴った方を見ると、3メートルを越える、体の半分が機械でできた、ロボイエティが木々を薙ぎ倒してやってきました。

「…え?なにあれ?」

「…サイアクヤ。アイツワアカン。オワリヤ。モウニゲレヘンキョリヤナ。イチカバチカ、シンダフリシカナイデ。」

「…わかった。」

二人は横になりました。

「もしあいつがどっかいったら…今度はすぐ逃げようね。」

「…セヤナ。」

その瞬間、二人は恐怖心は無くなり、子供の頃に戻ったような気持ちになりました。笑いながら、目を閉じて死んだフリをしました。

ロボイエティは死んだフリをする二人の前で止まりました。そして下半身をローラー車のように変型させると、二人をぺったんこにしてそのまま飲み込んでしまいました。

「……ゲプッ。フー。」



不確かな情報を鵜呑みにして、さらに間違えて覚えて、山に入るとこういうことになるよ。』



友人が環十二で拾った、東京無線のローラー運転手から聞かされたらしいです。




うん。山を甘く見ないようにしよう。


あとロボイエティって多分不法投棄とか関係あるよな。社会全体で気を付けないと。






ん?ちょっと待てよ。この記事を書いてて気付いたんだけど、環十二なんて無くない?調べたら環八までっぽいぞ。あとローラー運転手て!誰が乗るんだよ!遅いだろ!んでロボイエティって!イエティでロボて!俺が不確かな情報鵜呑みにしちゃってるじゃねえか!


うわ!騙された!くっそ~!

おい!高島の彩ちゃんよ!どうせこのnoteも見てるんだろ!

次会ったら!しっぺでこぴんばばちょっぷ!だかんな!

♪銭がなけりゃ~君~銭がなけりゃ~