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人と人・街・企業をつなぐハブ役に。地域に根付くラジオ局「文化放送」

浜松町Life Magazine、第4回は、文化放送コミュニケーションデザイン局コミュニケーションデザイン部の村田部長。文化放送が浜松町に移転して16年。地元の人々との関わりを大切にしながら、「浜祭」などイベントを通して街を盛り上げて来た村田部長に、文化放送と浜松町の関係や浜松町の魅力などを伺いました。

カトリックの街から浜松町へ

-文化放送が浜松町に拠点を構えた経緯などについてお伺いできますか?
もともと文化放送って四谷にあったんですよ。そこで1952年に開局しているんですね。局舎が非常に古くなってきたのもあって2006年にこちらに引っ越してきたんです。引っ越して来た頃はこの辺には大きな建物は貿易センタービル以外何もなくて、だだっ広い土地があるだけ、という感じでした。
移転先の候補はいくつかあったのですが、浜松町に決めた理由の一つは、港区で便が良いということ。浜松町は交通の要所でもありますから。その浜松町の駅前に良い土地があったということで、ここに拠点を構えることになったそうです。

-村田部長は、いつ頃から文化放送にいらっしゃるんですか?
私は四谷の当時からずっと文化放送にいます。四谷と文化放送の関係について少しお話させていただくと、文化放送って元々はキリスト教布教のためにつくられたんですよ。神父さんが戦後にカトリックを布教するために始まった放送局なんです。だからカトリックの街である四谷にあった。カトリック教会系の上智大学とかもそうですよね。
四谷の局舎は教会を改築した場所で非常に趣のある所でした。駅からは遠かったのですが、とても雰囲気のある場所だったんです。
それが浜松町に移ったらまさに駅前で、駅から歩かなくていい。地下鉄が直結しているし、ペデストリアンデッキもつながっているし、なんて便利なんだと驚きましたね。先ほども言った通り、16年前の当時は、まだまだ発展中の街という感じだったんですよ。見渡してみても何もない土地が続いていて、貿易センタービルだけがドーンと建っていて。これからどういうふうに進化、発展をしていくのだろうかと思っていましたね。

四谷にあった文化放送の局舎

「街に音楽を」から始まった「浜祭」

-文化放送にはそんな歴史があったんですね。
文化放送さんは地域で「浜祭」などのイベントも開催されていて、地域とのつながり構築にも積極的ですよね。
我々はラジオ局として地域とのつながりも非常に大事にしています。そのため浜松町に引っ越してきてから、地域の皆様とつながっていくためにも自分たちでお祭りを企画したんですね。毎年一回、文化の日に合わせて、地域のお祭りということで「浜祭」というイベントを開催しています。
元々は文化放送の下に小さいサテライトスペースがあって、そこでミュージシャンに演奏していただいたり、貿易センターさんと一緒にイベントをやったりしていたんです。それがどんどん広がっていって、芝商業高校のグラウンドや増上寺さん、芝公園、東京タワーさんなども会場として使わせてもらうようになりました。
イベントに一緒に取り組んでくださる地域の仲間が沢山出来て、来場者も13万人を超えるまでに大きく育ちました。2020年以降はコロナの影響で開催できていないのが寂しいですね。

浜祭の様子

-初めは小さいイベントからスタートしたんですね。
浜松町はオフィス街なので、わかりやすいエンターテイメント性を出すのが難しかったんですよね。それでも引っ越してきた当初は毎日音楽をやって、街に賑わいを生み出すようなことにトライしていました。「街に音楽を」ということで、毎日アーティストをブッキングしていたんです。
「浜祭」も最初、「音楽をテーマにしたフェス」ということで始めたのですが、やり始めてみると、貿易センターさんから「イベントを一緒にやらないか」とお声掛けをいただいたり、増上寺さんから「七夕祭りやるから手伝ってくれないか」とご相談をいただいたりするようになったんです。それで徐々に大きくなっていって。私たちはラジオ局なんですけど、イベントもたくさん企画運営しているので、そんな実績がここでも活きた形ですね。

-「浜祭」を運営するにあたって工夫されている点はありますか?
「浜祭」は、浜松町エリアのさまざまな会場で開催させていただいているので、その会場間を回遊いただき楽しんでもらえるように、会場ごとにカラーを付けるようにしています。
増上寺はラジオステージ、東京タワーはアイドルステージ、芝公園ではキッズエリア…といったようにテーマを分けるんです。
あと、親子で楽しめるようなコンテンツも意識的に取り入れていますね。最近はこのエリアもマンションが増えたので、地域にお住まいの方たちが楽しんでいただけるように。実際自転車で来てくれる地元の方がとても多いんですよ。ポケモンセンターがあった頃は、浜祭に合わせてポケモンウォークラリーをやったりもしました。お子様連れのお客様に楽しんでいただけたんじゃないかなと思います。

ラジオ局としての「つなぐ」仕事

-地域の方たちとのネットワークはどのように拡大されたのでしょうか?
知らない企業にピンポンを押しに行くような形で、本当に一歩ずつ、地道にお話をさせていただきました。
浜祭は、協賛営業をしてスポンサーさんを付けたりしていますけど、実際は正直そんなに儲からないんですよね。持ち出しも多い。ですけど、それがきっかけになって色々なお取引に広がっている側面もあるんです。それは企業さんもそうですし、町内会、港区観光協会、大門振興会といった地域や行政の方々とのつながりにも活きています。おかげでさまざまなご相談をいただけるようになりました。
16年、ちょっとずつ積み上げてきたことがつながって来たということじゃないですかね。

地域との関わり方や、新しいアイディアを楽しくお話しくださった村田さん

-華やかなイメージの文化放送さんですが、地道につながりを広げて来られたのですね。企業や人のつながり、という観点で今後取り組んでみたいアイディアなどはありますか?
今もいくつかやっていまして、例えば最近浜松町には企業が増えているんですが、他の企業のことをあまり知らないですよね。そうした背景を受けて、「浜松町からイノベーションの種を」「企業の方達が交流、触れ合う場面を作ろう」ということでやっているのが「浜松町イノベーションカルチャーカフェ」という番組です。「食とイノベーション」などといったテーマを決めて、専門家など色々なゲストをお招きし、「文化放送メディアプラスホール」という小さいホールで公開収録イベントをしました。「せっかくだから皆さんも観覧しに来ませんか?」と地域の企業の方もお誘いしているんです。番組収録自体を参加型のイベントとしてやっているような形ですね。そうすると集まった方達が交流してもらえる機会になるんですよね。「近くにこんなことをやっている会社があるんだ」という発見や、人との出会いにつながるんです。今後もラジオとかイベントを通じて、こういったことを実現できたらいいなと思っていますね。
お祭りと違う場面でも、緩やかなコミュニティができればいいなぁと思っています。

浜松町イノベーションカルチャーカフェの様子

-ラジオというメディアならではの力を活かした交流機会の創出ですね。
我々は小さい会社ですけど、「地元の企業です」と言うだけで、初めましての相手であっても会っていただけることが多いんですよね。イベントでもお祭りでもそうですけど。小さいけど、ちょっとしたハブ役になれるかもしれないなと思っています。
また地域との取り組みで言うと、文化放送と港区の済生会中央病院などが共同で「みんなとプロジェクト」というものをやっています。地域版のSDGsを考えたプロジェクトで、港区の芝地区で採れた蜂蜜である「しばみつ」を使って、「みなとワークアクティ」という港区立障害保健福祉センターの方々にお菓子を作っていただき、地元の人に召し上がっていただく、というものです。
蜂蜜って、蜂がその地域を巡って作られる、いわば「地域の恵み」なんですよね。その「しばみつ」を、街の人の力で商品にして、その街の人に楽しんでもらおうという、ローカルインクルージョンプロジェクトとして展開しています。
街のさまざまな個性的な人が関わって、本来あった地域の多様なつながりを回復しながら、少しずつでも街の恵みが回っていけばいいなと思っています。

-地域に循環とつながりを生み出す素敵な活動ですね。
地元浜松町にある企業で、しかもラジオ局っていうのはまず、そういうことをやるべきだと思っています。ラジオ局の価値ってもちろん音声を作って届けるということがあるんですが、それを通じて人と人とか、人と街とか、人と企業をつなぐっていうことはできるんじゃないかなと思っています。

「つなぐ仕掛け」としての回覧板

-浜松町の魅力はどんなところに感じていらっしゃいますか?
やっぱり古いものと新しいものがあるということじゃないですかね。あとは、色々な人がいるということ。
それは住人も企業の方も。普通に働いていると、自分のオフィスとその周辺のことくらいしか知らないじゃないですか。だけどここまで話してきたように地域に入り込んで、地域を知っていくと、それこそ色々な人がいて、色々な活動が行われていることがよくわかるんですよ。
例えば「芝百年会」という、百年以上続くお店が加入している団体があって、さまざまな商業振興にまつわる活動をされていたりするんです。そういう活動されている方たちに一人一人お会いすると、新しい発見がたくさんあって。それこそ「人」がコンテンツだということを強く感じるんですよね。
特に我々はラジオという、人を扱う仕事をしているので、色々な方がいるっていうこと自体が、まさに街の魅力じゃないかと思うんです。そういう人たちが、雑多にこの辺に暮らしているというところが。
逆にこう変わったらいいな、と思うことで言うと、こうしたさまざまな「人」が交流して、交わることでお互いにプラスのことが生まれるような環境になるといいと思っています。そうすることで何か新しい、面白いことがどんどん起きていくような気がしています。

-今後やってみたいことはありますか?
僕は回覧板みたいなことをやりたいなと思ってるんです。今だからこそ、アナログな価値に回帰したいというか。もちろんデジタルを使ってもいいんですけど、今の時代だからこその「つなぐ仕掛け」みたいなものをやりたいなと。
当たり前ですけど、人の会社に勝手に入るって出来ないじゃないですか。でも、いざ行ってみると色々な会社があって、発見があるんです。だから僕はよく企業さんにお邪魔するようにしているんです。以前、ロート製薬さんにお伺いした時なんかは、ロートさんの社内でランチを食べさせてもらったんですよね。ちょっとしたことだけど、他の会社さんの食堂とかってやっぱり面白いなと思うんですよ。

-「村田さんの会社訪問記」みないなものがあったら面白そうですね。
コロナになって、今まで以上にアナログなつながりを求めているところはありますよね。
コロナ前はよく、知らない人もウェルカムでこの辺で働いている人同士で飲み会を開催していたんですよ。今はもう無くなってしまいましたけど。やっぱりそういう交流を促すスペースってあった方がいいですよね。今はコロナで難しいですけど、タバコ部屋とかコーヒースペースって、凄く機能性があると思います。回覧版じゃないけど、顏を合わせて話すって大事ですよね。定期的にみんなで集まれる「ハイボールバー」みたいなのがあるといいなと思います。新しい世界貿易センタービルに是非作って下さい(笑)。

ワクワクするお話をたくさん聞かせていただきました

<取材:関根隼人/文:橋爪美千子(世界貿易センタービルディング)・中塚麻子(玉麻屋)/編集:坂本彩(玉麻屋)/撮影:yOU(河﨑夕子)>

文化放送
https://www.joqr.co.jp/
FMラジオ91.6MHz/AMラジオ 1134kHz/radiko.jp
〒105-8002 東京都港区浜松町1-31

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