カッコイイからだ

クライミングをしていると、背中がたくましくなり、前腕がカチカチになり、指はぶっとくゴツゴツになります。

僕はまだまだそこまでの体になっていませんが、クライミングに打ち込んでいる人ほどそうなっていると思います。また、余計な脂肪を落とすから余計に筋肉の目立つ体つきになります。

男性は筋肉がつきやすいですからもちろんのこと、女性も自己研鑽している人ほどいわゆるイカツイ体になります。

そしてごくたまに、ごくたまにですが、そういった筋肉のついた女性に対して、男性が「もう女じゃないなー(笑)」とか「女でそれヤバイな(笑)」的なことを言っているのを見かけます。もちろんそこには恐らくお互いに信頼関係があって、当人たちはなんにも問題ないのだと信じますが、僕はいつも「なんでそんなこと言うんだろう?」と少し疑問に思ってしまいます。

いや、なにもジェンダーがどうとかフェミニズムとかマッチョイズムとかの話ではなくて。

単純にカッコよくないですか?そういう体って。

筋肉のつきにくいはずの女性が、背中バキバキとか、カッコイイですよね。どれだけクライミングに打ち込んだらそんな体になるのかと、その体が出来上がるまでの道程を想像して、よりカッコよく美しく感じるのです。

学生時代、柔道部の女子部員の力こぶも、カッコイイと思っていました。

昔付き合っていた恋人はモダンバレエをしていて、ふくらはぎが軍鶏のように筋肉質でしたが、それもすごくカッコよくて美しいと思っていました。

自己分析してみると、女性だけでなく、何かに打ち込んでいる人の体つきを、僕はカッコイイと思っているようです。レスリングとかやっている人のつぶれた耳(いわゆるギョウザ耳)もカッコイイし、ギター弾く人のガチゴチに硬い指先とか、剣道やっていた人の足裏の信じられないサイズのタコとか。昔ロケで工事現場を取材したときの、鉄筋工と呼ばれる職人さんの山のフドウのような体に、さらに肩のコブなんてカッコよすぎて大興奮しました。

そう考えるようになったのは何故か、ちょっと考えたらすぐに答え見つかりました。

たぶんこれです。このセリフです↓

「働き者の綺麗な手と言うてくれましたわい」

ジブリファンならすぐにピンときますね。青き衣をまといて金色の野に降り立つ人に、ゴルじいさんが言ってもらったという。

子供の時にナウシカを見て、それから大人になっていくにつれて何となく、働き者の綺麗な手というものの解釈を広げていったのかなと思います。

こんな自己分析誰が興味あるんだよって話ですが、ツラツラと文章書いているうちにこうなっちゃいました。

とにかく、何かに真剣に取り組んでいる人の体はカッコよくて美しいなと。

ちなみにクライミングや柔道、ギターについては、僕は全て経験しています。体の方はと言いますと、普通の背筋に人並みの力こぶ、ぷにぷにの指先しか持っていません。それなりに打ち込んでいたつもりでも、努力はちゃんと体つきに現れるものですね。

これではナウシカ的に言うと「怠け者のきたない体」になってしまう。

でも僕の本業は漫才師。喋りが仕事です。喋りが仕事の人は声が掠れていたりして、「働き者のきれいな喉」をしているはずなのです。たとえばさんまさんなんて、鍛え上げられた喉!って感じの声ですよね。


で、僕は声も全く掠れ声とかではない。おかしいな。もう20年漫才やっているんだけどなぁ、と思って何となく昔の台本見返してみたら7~8割くらい相方のセリフでした。ゲスの極み漫才をやっていた頃にいたっては9割相方のセリフ。全然働き者じゃない!


いつか声が掠れたら、やっと僕は漫才師です。


今の生活ペースだとその前にバキバキ背筋の方が手に入りそうですが。



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