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iPad+Apple Pencilで勉強する

通勤時間が長くなった。遠くなった。

電車に大体1時間ほど乗っている。

この時間を利用して、勉強している。

今の仕事がにっちもさっちも行かなくなった時のことを考えた資格試験の対策である。

高校生の時まで電気の勉強をするのが好きだったということから、電験三種の勉強をしている。米国に駐在している時から考えていた。でも、真面目に勉強していなかった。2016, 2017, 2019と申し込みをして、2017年だけ受験して、一科目も合格しなかった。

秋の学会大会のシーズンと重なってしまう、というのは、言い訳にしかならない。

昨年(2020年)受験して、四科目(理論・電力・機械・法規)のうち、理論と電力の二科目で合格することができた。合格最低点ではあったが。

この科目合格結果は、向こう2年間引き継がれる。2021年か2022年に、残りの科目に合格すると、晴れて資格が与えられる、という寸法である。

2年という猶予を考えることもなく、今年、必ず残り二科目に合格したい。

その勉強に、通勤の往復のうち電車に揺られる2時間を充てる。

電車の中では手頃な大きさでありながらある程度の硬さを持ったもので勉強したい。

参考書は電子書籍で持っているので、Macで表示させて小さいメモ帳に問題を解いてみた。ネットではクリップボードを使って受験勉強しているという人もあった。

それでやってやれないこともないのだが、iPadだな、という発想がただちにおぼろげながら浮かんできたのでやってみた。

2017年からApple Pencil を持っているのだが、使用回数は、多くなかった。それがここにきて毎日使用することになって嬉しい。

iOSには画面を左右に分けて二つのアプリを1つの画面に表示するモードがある。

左にはKindleを、右にはメモ帳を表示している。この並びは、左右が逆ではいけないのか? 単にわたしが右利きで、右手でApple Pencilを持って使うからこうしている。左利きの方は、逆にすることで容易になるだろう。

この左右配置という発想を使い易いかたちで世に(主に研究者に)エヴァンジェリストしているのは通称かめふじ法である。

かめふじ法がいいのは、利き手とは反対側に原テキストを、利き手側には広大な書記スペースを確保するという、人間の認知と行動に即したアーキテクチャを、「逆順印刷」と「ホチキスとめ」という2ステップで、追加の機材を何も必要とせずに実現できる手軽さだ。

私はこの思想を尊重しながらデジタルに応用したという次第である。

こうして問題演習の時間を設けて、やっていってみると、やはりこの類の勉強は問題演習にしくはない。そして、その繰り返しには栄養がある。

1度目で解けなかった問題も2度目で解けることもある。解けないこともある。解けない場合も、解けない場合の共通点も見えてくる。

実際に手を動かしてみることの価値は計り知れず、それは、紙に黒鉛やインクを落とすのでも、iPadにApple Pencilを滑らせるのでも同様にあると言ってよい。

細かいテクスチャの違いはもちろんあることは私自身よく知っている。私は、トモエリバーの紙に、万年筆で書記する快楽は筆舌に尽くし難いものがあると言って憚らない者である。

しかし、電車の中で万年筆は使いたくない。落として破損したり……これはもちろんApple Pencilでも同様だし、価格もどっこいどっこいだが、万年筆は、他の乗客の物件をインクで汚損するリスクも加わる。

Apple Pencilで問題演習をするときにはなるべくペン先に近いところでグリップするようにしている。そちらの方が、感触が良い。カツカツと画面に当たる不快感が軽減される。これはもちろん好みだろうけれど、そうした持ち方の違いで違和感を軽減する可能性があるということは書いておいて良いだろう。

この問題演習をした時間とページ数は、StudyPlusで記録している。

コメント機能でもっと、わかったことやわからなかったことまで書き込めば、自分の学びについてメタな知識を集積していけるのだろうと思う。それは、『独学大全』でも最後の方で触れられていたメソッドだ。

これまでは、ひたすら問題演習をして、目的地の駅に着いたら、StudyPlusで時間を止めて区切って勉強をバタッと止めるという行動パターンになっていた。だから今後、あえて少し前の駅で手を止めて、振り返りの時間をとりながら、記録する、ということを試してみると、記録の量と質が向上するかもしれない。

電気というのは、高校理科の物理で勉強し、受験科目として得意だという意識もあった。

それはそれは得意だった。例えていうなら、アニメ『OVERLORD』の彼我の戦力差などは近いかもしれない、と思った。『OVERLORD』では、主人公とその部下は、転移させられた世界で無双する。その世界の原住民では歯が立たない。

そんなように、問題を見るや立ち所に答えがわかる……というと誇張なのかもしれないが、とにかく、苦痛を感じたことがほとんどなかった。

今は私は、まったきモブキャラになってしまっている。

この変遷は、たとえば、映画「キングスマン」で無双の強さを見せたコリン・ファースが、続編「キングスマン:ゴールデンサークル」で……というのに近いか。

この違いはもちろん、単に、三相交流の問題が高校物理の範囲ではなかったということではない。また、扱う科目の範囲が広いということでもない。

言うなれば、電気問題を解く認知を失っている。

それだけでなく、二桁以上の掛け算でも、当時であれば大体この数だったよなというところまで、持っていた。それも全て失った。

若い時の能力を全て失った魔法使いが、それでもなお立ち向かうような、そんなイメージを描きながらiPadとApple Pencilを振るっている。

ゴールデンウィークにおうちホームするための推薦図書といった話題があるようなのだが、私はむしろこれを積極的に追うことはせず、進んで無視して、勉強の時間を確保したいと思う。

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