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流域思考で考える(全文公開)

最近地元の森の環境保全をしているNPOの活動に関わり始めるようになってから環境問題等に対する見方が少し変わってきた。タイトルにもあるように流域から様々な課題を考えるとわかりやすいという話だ。例えば「あなたの住んでいるところはどこですか」と聞かれたら、多くの人は○○県の○○市のような答え方をすると思うが、流域思考で言うと、「○○川の流域」という形になる。ただし、ここでいう「○○川」は川の本流である場合もあるが、たいていの場合は本流ではなく支流である。植物の枝分かれのように、川も様々な支流があって、それが河口で本流に流れ込み、海まで注がれる。流域とは、雨水が山に降り注ぎ海に至るまでに通る大地全体のことであると定義されている。人類の歴史もこの流域に沿って繁栄してきたといわれている。オリエント文明(ナイル川)、メソポタミア文明(チグリス・ユーフラテス川)、インダス文明(インダス川)、黄河(中国文明)といった具合に。

このように流域思考で考えると、防災対策に役に立つ。近年のは豪雨災害による河川の洪水が多発しているが、今自分が住んでいる地域がまずどこの流域に属しているのか、その河川は本流なのか支流なのか、どのくらいの長さがあるのか、等を事前に理解しておくと、氾濫時の規模感や、別の地域で起きている洪水が同じ流域の場合、時間差で被害に巻き込まれる可能性があること、などを予知することができるであろう。

しかし残念ながら、都市部の流域では開発等によって河川が途中で途切れていて、河口まで注いでいないものもある。流域が全体で保全されていることによって、河川付近の生物多様性が一定以上保全される(上流か下流か、地域の気温等によっても生物の種類は分かれるわけだが)わけであるので、ぜひその事実は周知していきたい。生物多様性が保護されるといっても、流域をずっとほっておけばいいわけではない。一定以上の人の管理が必要になってくる。晴れの日がずっと続く日があれば台風の日もあるわけだが、そこに生息する生物が日々一定の水量(多すぎても少なすぎてもいけない)を享受しながら、適宜メンテナンスをしてあげないといけない。それを県や自治体、市民の力を合わせて取り組むことができれば、災害時にも迅速な行動がとれるのではないだろうか。


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