日本人の自殺急増は、98年金融危機と03年竹中不況の時だった


昨日の日銀総裁人事の流れで、過去の歴史を振り返るシリーズですが、日本人の自殺問題について書いてみます。


百年に一度級の経済危機と呼ばれたリーマンショックですが、日本では成長率低下の打撃はあったものの、自殺者数の増加率で言えば概ね横ばい程度で、激増ということにはなっていませんでした。

近年のコロナ禍においても、自殺者数は増えてはいますが、ゼロ年代に比べると増加率は低く済みました。


日本人の自殺者数のデータを見てみましょう。

昭和53(1978)年~平成26(2014)年まで

https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/H26/H26_jisatunojoukyou_03.pdf


近年の数字

https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/8821dd55-e208-4e2b-9a84-0a6f2fed92bf/ca0ce3a9/20230401_councils_kodomonojisatsutaisaku-kaigi_0a6f2fed92bf_10.pdf


数字を見ると、リーマンショック後の2009年32845人から2019年まで、持続的に減少してきていましたが微増に転じ、コロナ禍の21・22年は連続で増加となってしまいました(直近では過剰な対策を強いられた若年世代の自殺増加が問題となっています)。


日本は自殺率が高い社会として知られてますが、中でも97年の拓銀・山一証券破綻などで勃発した「金融危機」が影響し、翌98年にはそれまで約24000人程度だった自殺者数が一気に1.5倍増の33000人弱まで増加したのです。当時の日本社会の風潮は、金融不安と「リストラの嵐」というものでした。

それまで大手銀行などは倒産なんて考えられない(護送船団方式と呼ばれた)、トップクラスの高給取りの牙城だったものが、よもやの倒産(長銀などの債券銀行など)や人員整理ということになって行ったわけです。

その傾向は異業種の大企業群にも波及したし、小売り系のダイエーやマイカル、長崎屋、そごう破綻などでも見られたように、再就職難といったことに繋がっていきました。男性失業率が急増し、特にリストラ対象となった中高年男性の自殺が目立つようになったのです。

それまで懸命に会社に尽くしてきたのに、クビを切られるとなれば一家の大黒柱の責任・重圧がのしかかります。真面目な人ほど深刻に悩み、経済苦を悲観したりして自殺したりしたかもしれません。40~50代男性の自殺者数がうなぎ上りで増えたのです。

株価も、国際優良株と言われた大企業ではリストラすると外国人買いで株価が上がる、ということがあったので、大手企業は我先にとリストラをやることに血道を上げていきました。で、生まれるのは男性失業者の増加と自殺者数の増加でした。


地獄はまだ先に待っていました。
一息つきかけた02年、当時金融庁担当だった竹中平蔵経済財政(諮問会議も)担当大臣の生み出した、いわゆる「竹中不況」と呼ばれる、金融庁検査による不良債権発掘で銀行を破綻に追い込むという新たな危機でした。

株価低迷は勿論、成長率の低迷と、厳しく続くリストラの嵐、そういう社会環境の中で自殺者数は過去最高となる34427人となったのです。これがドラマ『半沢直樹』でも取り上げられた金融庁検査や、貸し渋り・貸し剥がしのモデルです。


資金を絶たれた多くの中小企業が倒れていきました。自殺の増加は、破綻処理制度の未熟な日本での悪弊でもありました(経営者個人の債務保証が付いて回る)。


ある意味、人為的に作り出された経済危機だったようなものです。その後も格差拡大と呼ばれる時期に突入し、自殺者数は中々減ってはいきませんでした。

が、リーマンショックによる危機以降は、経済的な救済策が積極的にとられるように変わっていたこともあり、漸減となっていったものと思われます。ただし児童生徒の自殺者数は、総数が減る中での増加傾向というのが続いています。


コロナ禍では、過去の失敗の反省が活かされたのか、自殺者数の増加率自体は金融危機の時代より低く抑えられたと思います。


7年前にも書きましたが…



日本人は悲しい時代を乗り越えてきてはいるが、思ったよりも愚かなままであり、断固として戦おうとする決意や勇気の無い人が多い気がするのです。このままでは、豚は豚のままであり、植民地支配からは脱却できないでしょう。イジメに自ら立ち向かい、決して怯まず退かない姿勢が必要だと思います。




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