自衛隊の本土防衛政策を再考する


現代戦の実験場となっているウクライナ戦線は主に大陸国の戦闘であり、日本と似た条件ではないので一概には言えないことは承知している。

とはいえ、日本の防衛政策において、示唆に富む部分は少なからずあると思うで、個人的メモがてら防衛省に陰ながら提言したいことを書いてみたい。


1)ウクライナ戦線の個人的印象

最も大きく変わった点は、戦闘方法として、以前から言われてきた通りにドローンの役割拡大がある。情報収集・偵察・攻撃と多様な任務をこなすべく、安価・大量・妨害耐性・AI 等の要件を備えた日本の国産ドローンが必須となろう。

日本政府・自衛隊は米国・イスラエルの言いなりで、グローバルホークを高額で買わされてるようだが、運用思想が無いか弱い為に効率的運用ができるようにはならないだろう。

広域用の高額ドローンは、米軍やCIAのような特殊な条件・環境下の運用しているもので、自衛隊がまず実現すべきは狭域用ドローンから初めて実績を構築し、その延長上に大型ドローンを運用した方がよいのではないか。

今の自衛隊だと、普通の道路教習すら走ったことがないのに、いきなりサーキットに出て走ろうとするようなもので、永久に米軍の下請け仕事に専念するなら傭兵部隊的に「部分的お手伝い」の域を超えずともよいなら、それもよかろう。


第二点として、特に西側主力戦車の働きが残念過ぎたことが挙げられる。特に「ゲームチェンジャーだ」と鳴り物入りで投入された「M1A1エイブラムス」がほぼ何らの戦果もなく、破壊標的のお荷物となってしまったことだ。

これは米軍戦車に限らず、ドイツのレオパルド2A4(乃至A6、旧式の1やゲパルトもあるが)や、陸の王者として絶対的自信を持って送り出した英軍の「チャレンジャー2」も華麗な活躍を見せる前に、殆どが葬り去られたということである。


広大な大陸での陸上戦だからとはいえ、新兵器でも何でもない昔からある既存の「地雷」と、現代的ドローン攻撃の組み合わせ、時に誘導対戦車兵器でオシャカにされてしまい、役立たず兵器であることを際立たせた。

一方で、ロシア軍が投入したT-90など比較的新しい兵器であってもドローンの餌食とされてるのも事実で、旧式T-72の大量投入で戦線をどうにか維持している点は、「高度、新型、単体の優秀さ」よりもカラシニコフ的な物量・易操作性・耐久性・練度(戦闘面だけではなく整備、部品共用、代替物の多さ等運用全部を含む)などの優位性が窺われる。

日本本土でのMBTの不要論に直結するとは限らないが、どういう条件下・戦闘局面でどのように使うのか、ということをよく整理しておいた方がよい。


第三点として、砲弾・弾丸の物量(ストック面・製造等供給面)、一発当たりコストの重要性である。戦闘継続に直結するので、備蓄等のコストも含めて考えておく必要がある。
ウクライナ軍が榴弾砲弾が極端な不足に陥り、砲兵戦での苦戦を強いられたという話があったが、日本だと3か月持つのか?
保管コストもかかるので簡単ではないが、無駄な米国産高額兵器を購入するより先に充足すべき部分があるなら、そちらに予算を割くべきだろう。


ウクライナ支援として主に米英などから高額兵器が投入されたが、費用対効果がどの程度あったのか。惨憺たる有様が顕著だったのは、例の「パトリオット」ミサイルでは?
満足に防空能力を見せることなく、破壊目標となっただけなのでは?

キンジャールのような超高速移動のミサイルばかりではなく、やや低速の地対地ミサイルに対してもよく外してたりするらしく(紅海付近でフーシ派が発射したミサイルが直撃したり撃沈された船があったらしいが、欧米海軍の艦船が展開してる海域でも艦対空ミサイルを外してるっぽい?)、1発当たりの価格が「億越え」のムダ弾では目も当てられない。

自軍兵器をドローンやミサイル攻撃からいかに守るかという能力で、大きく差がつくだろう。それは弾数面でも1発当たりコストでも、だ。


22年当初から、ウクライナ戦線に英軍特殊部隊を投入しているという話があったが、そういう戦術を熟知した優秀な指揮官がいても西側NATO方式の陸戦方法ではロシア軍に太刀打ちできていない、と考えるべきだろう。

敗軍の戦闘方法・運用の域を出ない教本しかないNATO方式を真似しても、同じように敗北するだろう、という話である。

つまり、日本・自衛隊が米軍の言いなりで下請けばかりやっていては、効率的な防衛政策は実現できないと思っていた方がいい。


2)自衛隊の将来を考えた防衛政策の提案

前項の論点から

 ア)独自の国産ドローン運用
 イ)本土防衛計画の練り直し
 ウ)低コスト化(戦闘継続期間の伸延、供給(備蓄)量/力)
 エ)防空戦闘能力

について述べてみたい。

ア)について:

以前から指摘したが、自衛隊の新規入隊者は減少傾向では?
これは今後も若年(18歳)人口が減少するので必然的な話であり、対応策としては精強な若年に限らず、特に最大人数が必要な陸自で隊員の年限延長で対応するなどしかないわけでしょう?

ドローン運用などであれば、熟練者の肉体的な精強さが必ずしも要求されない為、戦闘方式を根本から見直す必要がある。ただし、千人超の大規模テログループとの局地戦闘のような、従来型の市街地戦となる可能性が高いだろう。
この場合、戦車や大量の歩兵部隊投入等の掃討戦を実施することになるので、あまりに体力の乏しい老齢隊員(ベテランず)ばかりでは足手まといになりかねず、ある程度のバランスも必要である。


まずは国産ドローンを調達する環境を整備し、継続的に運用・訓練を重ねて熟達してゆき、広域運用へのノウハウを蓄積することだ。国産品とするのは、侵略相手に海上封鎖をされた場合でも「ある程度は供給できる」体制を想定するからである。またジャミングなどへの対策(性能情報の秘匿)的な意味もある。

概ね10km圏内での運用、索敵・情報収集・偵察などと自爆ドローン攻撃といった基礎訓練を重ねる。ドローン情報を入手した分隊長や小隊長の戦闘行動などの指揮能力についても、向上が求められる(地形要因、位置関係や配置からの敵の詰め方)。

100km超の広域は考え方が種々あると思うので国産が良いかどうかは分からないが、いずれは無人化+AI の自動哨戒(運用)が必要だろう。海保との分担・協力も含めて、沿岸防衛・警備を賄う必要がある。


日本が国産にこだわるべきなのは、ドローンの映像処理(分析)・自動操縦・複数機同時運用など、自前ソフト(コード?)を秘匿する為である。たたとえ少々の性能の問題があるとしても、改善を重ねればよいので、自国生産能力確保とか開発能力を維持すべきである。「使えないエイブラムス」より、ジャンクT-72の方が実戦では活躍する事を教訓に、雑魚ドローンでも使い慣れた自前、である。兵器でも道具でも「熟知している」というのは、そういうことだ。
(日本の道路事情では、超高級スーパーカーより軽トラの方が活躍する、みたいなものw)


次に、イ)~エ)について:

今回のウクライナ戦では、いずれ消耗戦となることが知られたわけだ。その場合に、戦闘継続は結局「カネが安い」方が有利という、昔からの結論に至るわけである。特に、日本は基本が専守防衛なので、米国から在庫処分で押し売りされたポンコツ「トマホークミサイル」が全くと言っていいほどにムダなのだ。


1発当たりの単価が安く、日本が海上封鎖を受けて輸入制限が生じた場合でも継戦可能性があり、防空(防衛)戦闘能力も期待できる、という防衛政策が必要だろう。

その適任と考えるのが、以前からお勧めしてきた「レールガン」である。

日本のミサイル防衛能力で、イージスシステムがある、とか自慢してみたって、初撃で100発以上の長距離(弾道)ミサイル攻撃を受けてしまえば、あっという間にミサイルが尽きるだろう。一発当たりコストが高額だから、だ。


防空用の誘導方式の地(艦)対空ミサイルは無意味ではないが、あまりに高価で弾数が乏しい。それでは本土防衛戦で耐えられないだろう。

これがレールガンとなれば、弾体自体は圧倒的に安価であり、発射コストは小さく済む。輸入制限が課されても、電力供給力がある程度維持できれば、発射は可能である(それ故、太陽光や風力発電の意味が出てくるわけだよ)。


まず、大きく分けて考えますね。

・長距離防空用レールガン(概ね100km超、弾体は最重量)
・中距離用(概ね10km超)
・近接防空用(対ドローン、対戦車ヘリ、敵機等)


まずは簡単な近接防空用から。これは従来だと携行対空ミサイルとか防空車両がやってきたが、今後は対ドローン戦という意味合いが濃くなるだろう。ミサイルだと製造も時間がかかるしコストも大きいが、そこで小型レールガンだと昔の対空機銃のように使えれば、安いのではないかと。

電源(発電)車両と射出機搭載車、探知指揮車両の防空システムを組んだ、車両移動式とする。主に低空防衛なので、弾体は小さくても可能かと。連射性をなるべく上げる、複数射出機の同時運用ができれば、巡航ミサイルのような対地ミサイル防衛にも使える。

電源車は電力供給が受けられる場所さえあれば補給可能であり、適宜移動を繰り返して敵の発見や攻撃から逃れるようにする。
レーダーの妨害を受けたとしても射撃できるよう、基本を光学照準として昔の対空機銃に近づけるとハッキングやジャミングに耐性を持たせられる。


中距離用レールガンは編成は同じだが、射出機が大型化するのと電源車の電力量も応じて大きくする必要がある。速射性は低下するだろう。


最後の長距離用が、今回のメインテーマと言ってもよい。日本が防衛戦に耐えることを優先すると、超高速のミサイルや敵機を撃墜できる超高性能の高額ミサイルでは継戦能力が維持できないので、レールガン方式とする方がよいと考える。

以前に船に発電設備を載せてガンシップとする方式を述べたことがあるが、陸上型も想定してみることとした。






それが、「列車砲方式のレールガン」である。大型列車に射出機を搭載し、鉄道移動によって位置を隠蔽する。

レールガンの弱点として電力供給を受け続ける必要があるが、日本が本土防衛戦を戦うなら既存インフラを活用できるのが、列車砲型である。架線が来てるので電力供給を継続的に受けられるし、射出機重量が嵩んだとしても移動速度は道路移動より容易で速い。隠蔽場所も、選べる。


誘導方式の従来型対空ミサイルだと、どうしても速度的に困難があるのと、製造コスト(費用、時間)がかかるので供給があまりできない。

だが、列車砲方式レールガンだと、射出機と車両などのセットをいくつか作ると破壊や故障などでなければ、長く使えるし、弾体もミサイルよりずっと安く早く製造できるだろう。

発射後にジャミングなどの影響も殆ど受けない。


ただ、これらの実現にはいくつもハードルがある。

例えばマッハ10以上といった初速で撃ち出せるのか?
加速時間(射出機の長さ)がどれ程必要なのか?
その為の消費電力は?

弾体重量が軽いと速度は出せるが、飛翔の経路が不安定化するだろう。
(ただ超高速の物体なので、直撃の命中じゃなくても、掠めた衝撃波だけでも故障や経路を変更できるだろう。なので大きい必要性は乏しい)

粒子加速器とかリニアモーターカーの技術に似たイノベーションがないと無理か?

最も大事なのが、敵機/敵ミサイルの探知能力、経路予測(X秒後に通過する可能性の高い空間座標のエリア予測)のデータ処理能力である。自動化して、AI が自動計算して射出までやることになるだろうが、索敵・発見でまず電力チャージ、攻撃決定したらAIが完全自動で撃つ、ということになろうか。

中・近距離だと弾速はそこまで高くなくても運用可能だが、長距離用だと初速マッハ10以上くらいじゃないと命中確率を上げるのは難しいかもしれない(平均速度マッハ5で100km先だと命中まで約1分かかってしまう)。

昔の、高高度迎撃用高射砲っぽいかもしれない。誘導兵器じゃないし。


鉄道で移動する列車砲方式ということで、二重の意味での「レール」ガンだよね。

船は海上なので問題ないが、鉄道架線上を移動するので、民間事業者に対する特別な法整備が必要になるか。が、電力問題と移動を考慮すると、鉄道が一番有利なのだがな。


まずは、海上用大型レールガンを成功させ、タンカーみたいな発電可能な大型船で運用できれば、鉄道用でも可能になるかもしれないし。

陸上用は近接防空用にまずは開発してみるとよいのでは。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?