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IT部門はアウトソーシングされるべきなのか(賛成編その2)

前回、賛成の意見を書いたので、今回はそれに対する反論、反論の反論、反論の反論の反論を書いていきます。

(賛成の意見1)IT部門は、自社のビジネスを行なっているわけではなく、お金を使う一方なので高い人件費を払ってまで自社で抱えておく必要はない

 →(反論)確かに自社のコアビジネスではないが、人件費は会社が決めている体系に沿って各人に決められているものである。他部署でも専門的なスキルもないのに高い給与をもらっている人は沢山いる。人件費の問題であれば全社的にに見直すべきである

 →(反論の反論)ITのスキルは変化が激しく、最新の技術については若い人の方が習熟度が高い場合もある。社内の技術者の古いスキルだけでは対応できず、古いスキルのまま高い給料をもらっている人が多いのではないか。外部のスキルのある人材にアウトソースすることで、常に最新のスキルを持つ人材を活用する方が良い

 →(反論の反論の反論)短いプロジェクトをその場その場で回していくような案件を連続的にこなすのであれば、外部の人材を短期に雇用するという形で業務を片付けることは可能であるが、長期的な視野に立って失敗、成功の両方の経験を積みながら会社のために働く人材を確保するのであればアウトソースすべきではない

(賛成の意見2)IT部門の人でなくてもできるような簡単な作業を行なっている人は、外の会社に出すべき

 →(反論)どの部署でも誰にでもできる仕事というものを抱えており、そういう仕事を雑用と言わずに忠実に正確にこなす人材が必要である。また新入社員など経験の少ないうちは誰でもできる仕事で経験を積んでいくことが必要なのではないか。他には、再雇用の人材を活用して誰でもできる仕事でも会社にとって必要な仕事であれば社内の人材で回していくことも可能である

 →(反論の反論)そもそも、誰でもできるような仕事を抱えていることが問題であって、IT部門なんだから、ITを使って効率化していくという姿勢が足りないように見える。新入社員ができるような仕事であれば短時間で効率的にできるように追求するなどの姿勢が足りていない。今は、簡単な仕事を細切れで受け入れてくれる会社は探せばあるのでアウトソースすべき

 →(反論の反論の反論)簡単な仕事をアウトソースすべきという問題はIT部門だけの問題ではない。それをやるなら会社全体で社内の人材でないとできない仕事、外部に委託しても問題ない仕事を分けるべきである。ユーザ登録という単純作業でも、個人情報の流出、誤ったデータ消去など、リスクは高い


(賛成の意見3)自社で開発を行うのは、コスト、時間、品質どれをとってもパフォーマンスが悪い、餅は餅屋で開発会社に全て任せるべき

 →(反論)自社で開発を行えば、手戻りの修正の迅速化が可能になる。また運用に入った後も修正箇所を内部の人間が知っていれば復旧の迅速化が期待できる。全てを自社で行わないとしても、要件定義のフェーズは自社でしっかりとレビューしておかないと期待してものと全く違うものが出来上がってしまう結果になってしまう。自社で全て開発することが不可能でも、全てを外部に委託するのはリスクが高い

 →(反論の反論)中途半端に自社で開発を手掛けようとするから、いつも時間がかかり、社内の人材も多数必要になり、納期も妥協を許す形になっているのではないのか。全て外部の人材の開発を行うというプロジェクトをやってみてはどうか、社内のニーズは社内でまとめれば良いが、開発は専門的な会社に任せた方がいいものができるのではないか

 →(反論の反論の反論)外部の専門家に任せるにしても、最終的に出来上がるものの責任や動作確認など仕上がりに関してはどこかの部門が責任を持たないといけない、それがIT部門なのではないか。最終的な品質確認など納品物に対する責任、瑕疵に関する追求などIT部門がやるべき仕事はある

(賛成の意見4)IT部門の人は、業務部門から仕事を頼んでも結局それを外の業者に丸投げしているだけなので自社のIT部門の必要性を感じない

 →(反論)業務部門から見るとそのような印象を受けるかもしれないが、実際は、業務要件をシステム要件に変換する作業が必要になる。業務部門の人が直接、外部の会社に依頼できればそれで良いが、実際はスタートラインにすら立てないのではないか、これまでもそのような試みは何度かあったが、結局はIT部門が入って行かざるを得なくなって結果として手戻りとなった

 →(反論の反論)IT部門が外部の会社に仕事を依頼しているように見えて、実際は業務部門が半分以上説明したり資料作成を行ったりというケースの方がむしろ多いのではないか。接点を持っているだけで実務は業務部門が外部への委託内容の説明等を行っているという印象を受ける。予算を業務部門に渡して、外部の会社に直接仕事を依頼できるようになれば、IT部門はアウトソースできるどころか、なくせるのではないかと考えられる

 →(反論の反論の反論)各部門が自由に外部委託する会社を選べるようになれば個々の案件については、コストの削減、納期など最適化できるかもしれない。しかし、システムは一つの大きな塊として動いているので全体最適を考慮しないと結果的に整合性をもつための連携機能の開発、維持メンテナンスするコストというものが余計にかかってしまうので、全体をIT部門が統制するべきであり、アウトソースすべきではない

(賛成の意見5)IT監査のような、季節的な仕事に関しては、都度都度チームを作って対応すればよく通年で自社でそのような部署を抱えておく必要はない

 →(反論)確かに季節的な仕事ではあるが、会社としては必達の案件である。その時だけ必要な人材が確保できるという保証はないので、通年で人材の確保が必要である。普段はそれ以外の仕事を割り当てて兼任業務とすることで良いのではないか。外部にそんな都合よく人材を提供してくれる会社があれば別であるが、それなりの知識やスキルも求めらる上に自社のことを知っていないと対応できない

 →(反論の反論)こういう案件こそ、監査専門の会社と通年で契約を結んで、監査の期間だけ来てもらうなどの対応ができるのではないか。IT部門は自社の業務をしているわけではないので自社に抱えておく必要はない。外部に全て委託した方が安いなんてこともあるのではないか、監査会社も季節的なものであればその時だけ集中的に人材を投入してコストパフォーマンスの良いサービスが提供できるのではないか

 →(反論の反論の反論)外部の会社に完全に委託する前提で企画する人材だけ残すという考え方も可能性としてはある。しかし、毎年同じような監査業務を行うからこそ社内の熟練した人材が効率的にこなして、会社として必須の監査業務を正確にこなすという方が会社がリスクを負わなくて済むのではないか。業務もITもある程度わかっている人材を社内で抱えておいて法令遵守を確実に行うことが結果的に会社に貢献することになる

以上が、賛成意見に関する議論になります。ここまで書いて、なぜアウトソースするという話が浮かび上がってくるのかということがわかってきました。それは、IT部門の仕事をわかっていない人が、コスト削減(人件費削減)のきっかけとして検討を始めるのかなと思います。しかし、この切り口はとても危険です。IT部門の仕事をわかっていないためです。また、会社としてトータルコストを抑えるために部分的なリストラ(口減らし)としてアウトソースを検討することもあるでしょう。これは実質のクビですが、これは予算枠を守るためには止むを得ず行う手法であり、IT部門で働く人は常に自社の人件費枠とリストラの可能性を認識しながら働く必要があります。

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