IT部門はアウトソーシングされるべきなのか(反対編)
今回は、反対意見を述べた後に、反論、反論の反論、反論の反論の反論まで考えてみます。
(反対の意見1)IT部門はただでさえ忙しい上に、自分の業務でなくてもパソコンの使い方がわからないという人にも教えるというイレギュラーな仕事がある。アウトソーシングするとそういう社内の一次窓口がなくなるのではないか
→(反論)なんでも自分たちでやろうと抱えてしまうところに問題がある、むしろパソコンの使い方などは、外部のコールセンターが得意とするとことであるから、そういう仕事こそアウトソーシングするべきである。定常的に忙しいのは優先順位づけができていないだけのように見える
→(反論の反論)外部のコールセンターに移管したいのは山々だが、そういった費用を捻出できないのも現実である、少しは聞いてくる前に自分でGoogleで調べるべきであるが、IT部門からググレカスなどと言おうものなら大変なことになる。優先順位の問題だが、どうしても声が大きい人、偉い人の案件を先にやらざるを得ないため会社としてやるべきことが後回しになってしまい結果的に残業しないと仕事が終わらない
→(反論の反論の反論)コールセンターに窓口を作って1次対応をしてもらうことで、教育やFAQのようなことを対応してもらうことが可能なのではないか。その上で優先順位の高い仕事から片付けていけば効率化が測れるように思える。なお、優先順位が低くて外部にお願いできる仕事こそアウトソースすべきである
(反対の意見2)IT予算は毎年決められて中でやりくりしないといけない、申請されたものすべてを開発テーマにしたり、PCやスマホを好き勝手購入したりすると社内のIT予算は膨れ上がっていく一方である。それらを統制管理するために自社で行う部署が必要でありアウトソースすべきではない
→(反論)ITサービスという切り口で、一括でサブスクリプションのような形で定額でサービス提供できる会社にアウトソーシングできるのではないだろうか。そのようなメニューが今はなくても、自社向けにサービス提供を行ってもらえるようにコンペを行なって、アウトソースを推進すべき
→(反論の反論)サブスクリプションサービスも今の時点では良いが、将来的に働き方がどうなるか予測できない要素が多すぎるので、今の自社のサービスをそのままアウトソーシングすることが良いとは限らない。一例として最近のテレワークへシフトした際の機器の手配、ネットワーク環境は自社のIT部門がいたから環境の変化に対応できた。これからも変化に対応するためにはアウトソースなどすべきではない
→(反論の反論の反論)今は、未来の機器など予測できないのは確かだが、BYOD(自分のPCを仕事で使うこと)を認めてクラウド化してしまえばIT部門の企画、検討も調達も全ていらなくなるのではないか、心配するとしたセキュリティくらいだが、それもクラウドで対策できてしまう
(反対の意見3)システム開発には業務とITの双方の知識が必須である。その間に入って調整を大なうのがIT部門であり、IT知識しか持たない外部の会社にアウトソースしてしまうと、開発の際に業務要件をシステム要件に落とし込むのになおさら工数がかかってしまう
→(反論)業務の方向性、ITの方向性は今後も大きく変わるものではないのでドキュメントを整備してしまえば、いちいち外の会社に何から何まで説明しなくても業務部門と外部ベンダーで開発を行うことができるのではないか、既存システムとの連携が心配だが、その部分こそアウトソーシングしてこなかったからこそ、整備できていなかったように見える
→(反論の反論)業務の狙いもIT技術も日々変化しており、サービスの選定を全て外部ベンダーにアウトソースしてしまうと囲い込まれてコスト増になってしまう恐れがある。定期的に見直しをかける意味でも、全ての案件に関して外部ベンダーに丸投げするのではなく自社のIT部門が関わることで経験を積んでいかないと変化にも対応できない
→(反論の反論の反論)IT部門のメンバーが最新の技術を追いきれていないように見えてしまう。自社でできていないからこそ外部にアウトソーシングして優秀なプロマネに仕切ってもらって開発を進めるのが良いのではないか。どうせその先のコーディングは外部のベンダーが行うので効率化を考えるとフルアウトソーシングの方が合理的に思えてくる
(反対の意見4)社内のシステムは一つの塊として連動して稼働しているものであり、個々に手を入れるにしても全体をわかっている人が社内にいて影響を確認してからでないと変更にリスクが伴う。これができるのは社内の人材だけである
→(反論)社内のシステムを把握しているといっても細かいところとなると結局は外部のベンダーに確認することになるので同じではないのか。運用含めて、最適な形を追求するために、システムの全体構成と運用をまとめた形でアウトソーシングしてしまえば良いのではないか
→(反論の反論)日々の運用でアウトソーシングできる部分はあると思う、それはIT部門が努力して効率化、標準化を進めてきた結果として綺麗な形で外部に渡せるのであって、もっと突発的な案件や、経営層から直接くるような話はアウトソーシングしてしまったら対応できるものではない
→(反論の反論の反論)日々の業務を効率化しているのであれば、それを外部にすぐにでもアウトソーシングすべき、突発的な話でも結果として外部ベンダーの力を借りて解決することもあるので、最初から外部ベンダーを窓口として持っておくのでも良いのではないか
(反対の意見5)IT監査など会社として法令遵守のためにやっていることは、何があってもやりきる社内の人材の確保が必須であり、毎年同じことを繰り返すようでも改善を重ねられることを考えるとアウトソースはすべきではない
→(反論)毎年同じことをやっているのであれば、手順をまとめて究極のところまで効率化するところを目指すべき、その結果として、アウトソースできる範囲も広がって、自社で抱えておく人数は減らせるのではないか
→(反論の反論)毎年、監査する範囲や内容は少しずつ変化するので、その時にならないとわからない、一時的なことであれ人数を減らすと対応できないこともある。これは税務監査でも同じで経理部がアウトソースしているなんて話は聞いたことがない
→(反論の反論の反論)監査の少しの変化にも対応するのに人員が必要なのは、普段からドキュメントを残していない、関係者がITの内容を深く理解できていないことが原因ではないか。ITベンダーであれば、ドキュメントの整備は当然のように行なっているし、ITの理解も深い。そのあたりに強い会社にアウトソースすべきではないか
ここまでが、反対意見に関する議論です。反対意見から考えるとITのアウトソースは不可能ではないと思えてきます。やろうと思えばできそうですし、探せば引き受けてもらえる会社はありそうです。しかし、アウトソースすればうまくいくかというと、それは幻想に過ぎないです。まず必要なのは、お金を払えばなんでもやってもらえるという勘違いをしないことではないでしょうか。「金払ってんだぞ」という気持ちでアウトソーシングを行うとしたら、やってもらえることと、やってもらえないことの境界線がないので、やらなくてもいい仕事に時間を取られて結果としてうまくいかなくなります。この状況は社内IT部門でも同じことが言えます。
次回は、結論編を書きたいと思います。