福祉の戯言#1 福祉分野で使うクセのある言葉たち

皆さんはじめまして。大学で社会福祉学を修めた経歴を(何故か)持つ浜野実と申します。

最近、テレビやらSNSやらで福祉に関係する話題を多く目にするようになりましたね。
少し前は介護問題(≒高齢者支援)が多く議論されていたと思いますが、ここ数年は困窮者支援や女性支援など、話題にバリエーションが生まれたように思います。それだけ関心が高まっているということなのかもしれませんね。

さて、今回はそれにちなんで、「福祉で使う言葉たち」について解説してみます。

はじめに:社会問題と社会課題

社会福祉は「社会課題の解決」をゴールに置く活動であり思想です。
社会福祉が対象にするものは「人のつながり」。
社会福祉学にとって、社会とは人と人のつながりでできた編み目であり、そこからこぼれた(=孤立した)人を拾い上げ、網の構成員に加えることを使命にしています。
名前も方面も近い社会学とは、社会学が人間社会全体からの時点で社会問題を捉えようとするのに対して、社会福祉学はそうやって「発見」された社会問題を解消するために行動するというスタンスを取るという点で大きく異なりますが、社会学なくして社会福祉学は成立しないと言っていいでしょう。
この「社会課題」というものを具体化するために、ある程度決まった言葉や文法を使って表現します。
用語を定めることで、他の福祉者と情報共有をしやすくしています。プログラムで変数を宣言するようなものです。

それでは、その「社会課題」というやつを構成する諸々を紹介しましょう。この稿が終わる頃にはいい感じに粉々になっているはずです。
それではしばらくお付き合いください。

×「問題」→◯「課題」

早速ですが、先程のブロックで、
「社会課題」と「社会問題」という言葉が両方出てきましたね。
社会福祉学では、必ず「社会課題」と言い換えます。それは何故でしょうか?
それは、

問題」=論ずる個人の価値観によって定義された違和
→別の人から見たら違うかもしれないという可能性を残す=安定しない
課題」=他の人たちから見ても違和感がある
→社会全体(みんな)で解決すべき「課題(テーマ)

という考え方からです。
この、「みんなにとっての課題」という考え方で社会福祉は動いています。福祉の話題で「この考え方何?」と思った時は思い出してみてください。

相互扶助(そうごふじょ)

この言葉の意味は「互いに助け合う」。福祉の話題で本当によく出てきます。
先ほど申し上げた通り、福祉は人を互いに助け合えるように動くという思想です。「相互扶助の関係を築く」と言えば話が早いので便利なのです。
似ているけれど少し違う言葉で「公的扶助」というものがあります。こちらは国や都道府県などの公的機関から経済的支援を受けることをいい、生活保護はこちらに属します。

クライエント

「『クライアント』の書き間違いでは?」と多くの方が思うでしょう。実際語源は同じclientです。
元は心理学の分野でこの書き方をしていたものが福祉分野にも流入、そのまま定着したと言われています。
「クライエント」と書くことで、「顧客」という意味合いを薄れさせ、「相談者」という意味を付加させています。
「気の持ちようでは?」と言われると否定はできません。明確な根拠は残っていないのです。福祉学は良くも悪くもこういうユルさを持った学問です。
それでも、社会福祉学は沢山の他の学問に支えられて成立しているために、福祉や心理の話なのかそうでないのか(特に経営学など)を判別する言葉として非常に便利なのは確かです。

支援者

福祉的支援をクライエントに行う人を指す言葉です。専門資格を持つ人も持たない人も、支援に関われば支援者です。

アウトリーチ(Outreach)

直接読むと「外(out)へ到達(reach)する」になります。
さまざまな学問で使われる言葉ですが、福祉学に於いては
福祉的支援を受けられていない対象(支援網から漏れた個人、あるいは家庭だったり…)へ支援者が出向いて支援につなげる
という意味です。
この時、「外へ出向く」というイメージが先行して

支援者が支援を届ける

と理解されることがよくありますが、実際の動きは

支援者が属する支援網に対象を引き込んで組み込む

です。
もちろん強引にすることはないのですが(さすがにそれはタブーです)、やることはそういうことです。


とりあえず今回はここまで。よく分からなかったり信用ならない箇所は調べてみてください。
そうすれば、何とは言いませんが東京都の事業の件への状況把握の解像度も上がるかと思います。
取り急ぎここまで。また次回お会いしましょう。

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